インタビュー
» 2014年12月29日 22時15分 UPDATE

MVNOに聞く:音声SIMで攻めるNTTコム――「これからの機能強化は他社が動く前に仕掛ける」

長らくデータSIMのみを提供してきた「OCN モバイル ONE」で、12月に音声通話対応のSIMカードの提供も開始した。なぜこのタイミングになったのか。そしてOCN モバイル ONEならではの強みとは? 

[田中聡,ITmedia]
photo 「OCN モバイル ONE」の音声SIMパッケージ

 MVNOが提供するSIMカードでトップシェアを持つ、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」が、12月1日から音声通話対応のSIMカードを提供した。従来から提供している70MB/日、100MB/日、2GB/月、4GB/月、500kbps(7GB/月)コースの月額料金に700円をプラスすることで、音声SIMが利用できる。

 音声SIMを契約すると、IP電話サービス「050 plus」の月額300円(税別、以下同)が無料になるほか、「OCN光サービス」を契約していると月額料金から200円を割り引く。どの料金プランでも最大4枚の音声SIMカードを追加でき、データ容量をシェアできるのもOCNならでは。2015年1月20日からは通信容量の繰り越しも受け付ける。MNPの即日対応もゲオアキバ店で期間限定で実施し、2015年1月13日から受付場所を拡大する予定とのことで、後発だけに「攻め」の姿勢が随所に見られる。

 NTTコミュニケーションズは、どのような戦略で音声SIMの提供に踏み切ったのか。 ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長 新村道哉氏に詳細を聞いた。

光コラボレーションを見据えて音声SIMを提供

 NTTコミュニケーションズが音声SIMを12月に提供したのは、NTT東西が「フレッツ光」を卸提供する「光コラボレーション(以下、光コラボ)」を導入する前の提供が必要と考えたため。NTTコムはこの光コラボを導入する意向を示しており、光回線とモバイル回線(OCN モバイル ONE)のセット割引を提供していく予定だ。OCN モバイル ONEでは、すでにOCN光サービスとのセット割が提供されており、光コラボに一本化されるかは未定だが、現在の月額料金がさらにお得になることが期待される。

photo NTTコミュニケーションズの新村道哉氏

 「光コラボが始まったからといって、お客さんに見せたいものが変わるわけではありませんが、全部がうちのパッケージになるという分かりやすさはあります。光回線とモバイル回線をセットにする準備をしていく中で、音声通話で“不安”があってはいけない。不安というのは、緊急通報ができないことや、今の電話番号が変わってしまうことなどです。『IP電話は安いじゃないですか』と言っても、消費者からすると、提供側の論理でしかなくて、『ないサービスを無理やりよく見せようとしているだけでしょ』と言われてしまうと、否定のしようがありません。お客様が、自分の番号をそのまま残して使いたいと思えば、そのニーズに応える必要があります」と新村氏は語る。

 「他社さんが音声SIMで契約数を伸ばしていることも認識しています。IIJさんも(音声SIMの)数が出ていると聞いているので、対抗していきたい」と新村氏が話すように、他社への対抗意識もやはり強い。といってもOCNのデータSIMの契約数が伸び悩んでいるわけではなく、データSIMの販売数は、2014年10月は過去最高だったという。「iPhone 6の販売効果もあって、nanoSIMが伸びてきていますね。標準SIMよりは出ています」(新村氏)。それと同時に、音声SIMに対するニーズも増えてきたので、今回の提供に至った。「トリガーとして月額900円(70Mバイト/日)によって安さをしっかりと伝え、通話もしたいという人には、プラス700円で090番号も使えます、と訴求しています」(新村氏)

無料の050 plusをビジネス専用に使うのもアリ

 050 plusはOCNのデータSIM契約者だと月額150円、音声SIM契約者だと月額0円になる。「(音声契約者なら)ただで付いているので、発信はぜひ050でと言いたいです」と新村氏もアピールする。「先日のCM撮影でマツコ(・デラックス)さんと、『050 plusがただになるということは、電話番号が2つ付いてくるイメージで、050と090を持てる。ビジネスとプライベートで使い分けるのもできる』という話をしました。そういうご利用もぜひしていただければと思います」(新村氏)

 一方、090/080/070番号の通話料金は30秒あたり20円で、無料通話などは含まれない。NTTグループならもうひと声欲しいところだが、「そこまでは、まだ検討していません。050plusをうまく活用いただきたいと思っています。ただ、他社さんの動きもあると思うので、ニーズを見ながらその検討は進めていきたいと思っています。音声SIMは後発ですが、これからの機能強化は他社が出す前にうちが動いていきたいと思っています」と、新村氏から心強いコメントが返ってきた。

 どのプランでも最大4枚の音声SIMを追加してデータ容量をシェアできるのも、OCNならではのメリットとして打ち出している。最安の70MB/日プランなら、月額1600円に1150円のSIM追加料金を支払えば、月額2750円で2枚の音声SIMを持てて、1日70Mバイトのデータ容量を分け合える。「KDDIさんの『データギフト』が好評と聞いていて、家族内でのデータシェアされる方が増えてくると思います。通信費は生活に欠かせないので、利用しやすい形をOCNとして出していきたいですね」(新村氏)

ドコモともきちんと対話をしている

 事実上、OCN モバイル ONEはドコモのサブブランドのような位置づけになりつつある。「今回(音声SIMについて)の提供については、ドコモさんとも話はしており、NTTグループ以外のところに低利用層を持っていかれないようにしたいと考えています。ハイスペックなものはドコモさんの端末や、d系のサービスをご利用いただく。OCNはシンプルなインターネットの上に、自分でいろいろ載せていくという発想の方(かた)が多いですが、必要最低限の機能は追加していきたいと思っています」と新村氏は話す。

 つまり、ほかの会社が格安の音声SIMを提供するなら、NTTコムがその役割を担い、NTTグループの利益につなげようというわけだ。そのドコモも、光回線とのセット割「ドコモ光」を2014年2月から提供することを予告しているが、正確な提供時期は決まっていない。

 「ドコモさんが(ドコモ光を)始めるタイミングとして2月と発表しています。それもあり、各社が動く(光コラボの開始は)タイミングは事実上一緒になると思います。ただ、光コラボを始めたからといって、劇的に状況が変わるとは思いません。うちはもとからOCN光とのセット割を提供しているので。他社がセット割を提供していく動きが強まるので、それに対抗するというよりは、お客さんがそういう意識を強く持たれることに対して、OCNの方が安いことをシンプルに伝えていくのが大事だと思います」(新村氏)

ZenFone 5やAscend Mate7の販売、端末の下取りも開始

 音声SIMの販路はデータSIMと同じく、NTTコムストア、Amazon、Yahoo!ショッピング、楽天市場などのオンラインサイト、エディオン、ケーズデンキ、ゲオ、ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラなどの店舗を採用している。また現時点では、ゲオアキバ店では即日の新規契約が可能だ。即日開通は、今後はほかの店舗でも行っていく予定だ。

 端末については、2万9800円の「ZTE Blade Vec 4G」を、3000台限定で6000円にて販売するキャンペーンが目を引く(12月29日時点でも販売中)。多くのMVNOが「主力端末」「おすすめ端末」として扱っているASUSの「ZenFone 5」や、6型のハイスペックスマホ「Ascend Mate7」が話題を集めているHuaweiの端末についても、NTTレゾナント(goo SimSeller)で販売しており、ラインアップも充実させた。

photo goo SimSellerでは、Ascend Mate7やZenFone 5とOCN モバイル ONEとのセット販売も行っている。2015年1月6日9時59分までの期間限定キャンペーンで、端末+OCN モバイル ONEのセット価格を割り引く。例えばAscend Mate7の場合、端末単体の4万9800円より安い4万1482円となっている

 また、2015年1月31日まで、ZenFone 5、LG G2 mini、ZTE Blade Vec 4G、covia FleaPhone CP-F03a、Ascend G6から好きなスマホ10台と、OCN モバイル ONEの音声SIMパッケージ10枚をセットで5人にプレゼントするキャンペーンも実施している(関連リンク)。格安SIM、というよりスマホ全体を見ても前例のなさそうなこのキャンペーンからも、NTTコムが音声SIMにかける意気込みが垣間見える。

photo スマホ10台+SIM10枚という太っ腹なキャンペーンを実施中

 12月19日にはゲオが運営する中古端末下取りサービスの「Smarket」との連携も開始した(関連リンク)。「これにより、auやソフトバンクの利用者からのMNP乗り換えを加速したいですね」と新村氏は話す。

価格競争には参入しないが、プラン強化は検討中

 ライバルのMVNOを見ると、「楽天モバイル」が月額1250円で200kbpsのSIMを提供しており、「業界最安」をうたっている。ここには対抗しないのか。

 「そこをやると“電話屋さん”になってしまい、OCNのスタンスからずれてしまいます。まずは今のラインアップの中で利用いただく。インターネットをご利用いただくという基本スタンスから、電話も1つにしたいというニーズにお応えする流れが正しいと思っています。価格競争に参入する気はありません」(新村氏)

 料金プランも、現時点では増やすことは想定していないが、検討はしているという。「使い放題メニューは他社が出していますが、そういうところは、うちも困らないような建て付けにして、ニーズを満たすものは出さないといけないとは思っています」(新村氏)

 2014年10月に話を聞いたときは、競合他社で気になるのは「BIC SIM」と新村氏は話していたが、音声サービスをそろえた今、特に気になるのは「ワイモバイル」で、「そこに対抗していく販売設計をしている」という。ということは、無料通話や条件付きの通話定額など、通話関連でさらなる改善が期待できそうだ。

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