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» 2015年01月31日 13時31分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(1月19日〜30日):「ドコモ光パック」はなぜ複雑に?――各社の“光コラボ+モバイルのセット割”を読み解く (1/2)

1月下旬は、NTT東西の光回線を卸販売する「光コラボレーション」を活用した通信キャリアやMVNOの発表が相次いだ。特に注目を集めているのがドコモの「ドコモ光」と「ドコモ光パック」。今回は各社の光コラボ関連の発表を振り返りたい。

[石野純也,ITmedia]

 NTT東西の光回線を卸販売する「光コラボレーション」。このメニューを活用し、モバイルと組み合わせたサービスが2月から始まる。本連載の対象である1月19日から1月30日にかけては、この光コラボ関連の発表が相次いだ。

 中でも、話題を集めたのがドコモの提供する、「ドコモ光」だ。新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」のパケットパックとセットになった「ドコモ光パック」を提供し、「データMパック」以上の場合は割引を受けられる。ただし、さまざまな事情が絡み合い、料金プランは複雑になってしまった。一見しただけでは、自分がいくら安くなるのかが分かりにくいのが大きなネックだ。

 これに対して、光コラボを活用し、シンプルな固定とモバイルのセット料金を打ち出したのがU-NEXTだ。「U-NEXT光コラボレーション」とU-mobileの複数回線を組み合わせ「スーパーファミリーバリュー」を開始し、固定回線とモバイル3回線(通話プラスLTE使い放題プラン)で、1万円(通常1万2120円)という価格を設定した(集合住宅の場合)。また、ソフトバンクも新たに「ソフトバンク光」を開始、ケータイとのセット割を開始する。

 このほか、ビッグローブやニフティといったISPも、光コラボの提供を開始すると表明している。今回の連載では、この光コラボとモバイルのセット割引に焦点を当て、詳細な内容や各社の思惑を紹介していきたい。料金は特記のないものは税別。

「ドコモ光」とセット割が3月1日からスタート、家族利用を促進

 ドコモは、3月1日からNTT東西の光コラボを活用した「ドコモ光」を開始する。提供形態は、回線単体で契約できる「『ドコモ光』単独型」と、ISPをセットにした「IPS料金一体型」の2つだが、ISP料金一体型は「タイプA」「タイプB」の2つに分かれる。新規で申し込めるほか、現在フレッツ光を利用中のユーザーは、「転用」の申し込みをすることで、回線をそのまま移行できる。

photophoto 決算説明会に合わせ、ドコモ光の発表を行った。会見では、ドコモの加藤社長が、自ら指示棒を持ってプランの詳細を解説。さながら“ドコモ光講座”といった雰囲気だった

 ISP料金一体型の提携ISPを契約していれば、ISPは変更せず、そのまま回線だけをドコモ光にできる。その料金は、以下のとおり。戸建か集合住宅かで料金が異なり、ISP一体型の場合は料金に4000円から5400円までの幅がある。ISP一体型が2タイプに分かれるのは、「ISPごとに利幅が異なる。ISPがどうお考えになるかによっている」(NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏)といい、各社の意向をくんだ格好だ。

photophoto 単独型とISP一体型、それぞれの料金(写真=左)。ISPによって、タイプAとタイプBに分かれる。料金はタイプBの方が高い(写真=右)

 ドコモ光は、新料金プランとの組み合わせて使うことを想定しており、セット割も発表された。セット割は「ドコモ光パック」と呼ばれ、新料金プランのデータパックとドコモ光の料金が一体化したもの。月5Gバイトまで利用できる「データMパック」以上の場合は、それぞれ単体で組み合わせるよりも、合計金額が安くなっている。パデータパックの容量が大きくなればなるほど割引額も上がり、家族向けの「光シェアパック30」だと、月額2万2500円(戸建でISP料金一体型のタイプAの場合)。トータルで3200円安くなる。

photo データパックとドコモ光の料金がセットになったのが「ドコモ光パック」

 「データSパック」には割引がなく、「データMパック」に対しても割引は800円とあまり大盤振る舞いはしていない。ここからも分かるように、ターゲットは家族だ。加藤氏は「キーワードはシェアパック」としながら、「基本的には、家族で長く使っていただくとさらにお得になる構造」と狙いを説明する。

photophoto 家族でシェアパックに入ることを想定したプランとして組み立てられている。1人のユーザーは、割引額が少ないため、ドコモではデータパックを1段階上げても(ドコモ光パックなら)同額と訴求している

 その背景には、ドコモが新料金プランを導入し、大幅な減収に陥ってしまったことがある。新料金プランは音声通話定額とデータパックの組み合わせになるため、音声通話の多かったユーザーが加入すると減収要因になる。ドコモはこれをデータパックで補おうとしていた。ところが、当初の加入者は「データSパック」が多く、音声通話分の減収を補いきれなかった。 データ量の大きなシェアパックは「認知が進んでおらず、分かりにくいと言われることが多かった」(加藤氏)ためだ。徐々に「『データMパック』以上の選択率が増えている」(同)そうで、改善傾向は見えているものの、この状況でデータ量の少ないデータパックに割引を厚くするのは難しかったことが分かる。

photo 新料金プランの影響は底打ちしたというが、安易な値引きはできない状況だ

 さらにNTTグループとして考えると、割引を大胆にしにくい構造もある。転用が多ければ結局はNTT東西からドコモに回線が移り、ユーザー数は変わらない。KDDIの代表取締役社長 田中孝司氏は「セット割をすることで加入者が入ってくる。そこが競争力の源泉。1位の事業者は割引が立ってしまうので、踏み込みづらいのでは」と指摘していように、グループ全体では、単にドコモ側の減収要因になるだけという見方ができる。このような状況では、大胆な割引に打って出るのは難しいだろう。

 とはいえ、これはあくまでNTTグループやドコモの懐事情。ISPやフレッツ光のプランによっては、ドコモ光に転用すると固定回線側が値上げになってしまうケースもあり、単身世帯のユーザーにとっては、メリットが薄い。これを目的にドコモや、ドコモ光に新たに加入するというユーザーは少ないだろう。どちらかといえば、今いるユーザーの流出防止や囲い込みの方に効果があるのかもしれない。

ステークホルダーの思惑が絡み合い、複雑化した料金

 ただし、料金が複雑すぎて一般のユーザーにメリットを伝えるハードルはかなり高いと思われる。auひかりなどの固定回線とモバイルをセットで契約すると、2年間1410円、3年目からは934円の割引を受けられるシンプルな「auスマートバリュー」とは対照的だ。発表されたプランからは、関係する各社の思惑が透けて見え、サービス開始に苦労したことがうかがえる。

 まず、IPS一体型料金が2つに分かれていることが、見え方を複雑化している要因の1つだ。先に引いた加藤氏のコメントからも分かるように、これはISPの要請に従った結果だ。もともと戸建とマンションで料金が異なっているのは光回線の特性上、致し方ない部分もあるが、さらにISPが2つに分岐してしまい、選択肢は単独型も含めると6つになってしまった。

photo ドコモのサイトから引用。ドコモ光だけで、6つのパターンがあり、これが複雑に見えてしまう。ISPによって料金が変わるという概念も、ユーザーには理解しにくい

 ドコモ自身も「ドコモnet」というISPを新たに立ち上げており、ここと回線をセットにしたプランのみに絞れば分かりやすかったが、「責務として(今のISPのまま)乗り換えできるように用意した」(加藤氏)。ドコモnetは、あくまで転用ではなく、「新規のお客様の受け皿」(同)にするという方針だ。あるISP関係者が「ドコモnetへの一本化はさすがに受け入れられない」と言うように、ほかのISPを排除すればNTTグループだけに反発が予想される。それならパッケージ型にこだわらず、単独型のみでISPはそのままという形にしたほうがよかった気もするが、ある業界関係者は「ドコモは意地でも、ワンストップで提供したかったようだ」と指摘する。パッケージでの提供にこだわったために、かえって分かりにくくなってしまったという状況が透けて見える。

photo 「ドコモnet」というISPも開始するが、こちらはあくまで新規ユーザーの受け皿とのこと。転用のユーザーは、これまで使ってきたISPの継続が基本となる

 もう1つは、割引をデータパックのデータ量にひも付けてしまった点。「ドコモ光パック」で料金を一体的に見せてしまっているため、“いくらお得になるのか”が表を見ただけでは直感的に把握できない。データパックの容量に応じて金額が変わるにしても、それぞれについて割引額を提示していれば、もう少しシンプルに見えたはずだ。もっとも、これについては店頭や販促物での見せ方を工夫して案内すれば済むものの、あえてパックにした意図が不明だ。うがった見方をすれば、先行するauスマートバリューよりも割引額で劣る点を、意図的にぼかしているとも取れる。

photo ドコモのプレスリリースより。ドコモ光とデータパックをセットにした見せ方をしているため、割引額が分かりづらい上に、表が膨大になってしまう。単純に、データパックから〇〇〇円割引という形ではダメだったのだろうか……

 一言で言えば、「ISPとの関係や減収を止めたいドコモの台所事情」、そして「NTTグループ内での立ち位置」など、さまざまな“しがらみ”が、複雑な料金プランとして露骨に表れてしまっているのだ。しかも、そんな料金プランが固定通信の大きな商戦である新生活シーズンにいきなり始まるとなれば、販売現場の混乱も予想される。加藤氏は「1つの転換点として、100万契約をできるだけ早く達成させたい」と語っていたが、どれだけ普及させられるかは、この難解な仕組みをいかにかみ砕いて伝えられるかが鍵なりそうだ。

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