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» 2015年09月13日 12時15分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(8月31日〜9月11日):「Xperia Z5」シリーズの狙い/iPhoneに全面対抗のHuawei/中国勢の躍進――IFAで見えたスマホトレンド (1/3)

ドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2015」では、多数のスマートフォンが発表された。今回はIFAで発表された新モデルを振り返るとともに、IFAから見えてきたスマートフォン市場全体の傾向を読み解いていく。

[石野純也,ITmedia]

 9月4日(現地時間)〜9日の6日間に渡って、ドイツ・ベルリンで世界最大の家電見本市「IFA 2015」が開催された。その前日、前々日の9月2日と3日はプレスデーとなり、スマートフォンも数多く発表された。もともとは白物家電、PC、その他調理器具を中心とした製品が展示の中心だったIFAだが、ここ数年は、世界最大の商戦期であるクリスマス商戦に向けたスマートフォンを発表する場にもなりつつある。

 2015年は8月に発表が巻き上がってしまったが、Samsung Electronicsは年1回、フラッグシップモデルの双璧をなす「Galaxy Note」シリーズをIFAで発表していたし、ソニーモバイルがXperiaシリーズのフラッグシップをお披露目するのも、やはりIFAだ。2015年は、Huawei、ZTE、Lenovoといった中国メーカー勢も、IFAに焦点を合わせてきた。

 今回の連載では、IFAで発表された各メーカーの新機種を振り返るとともに、IFAから見えてきたスマートフォン市場全体の傾向を読み解いていきたい。

photo 9月4日から9日までの6日間に渡って、ドイツ・ベルリンで開催されたIFA

フラッグシップモデルを3サイズ展開し、多様化する需要に応えるソニー

 例年、IFAでXperiaシリーズのフラッグシップモデルを発表してきたソニーモバイル。2014年のIFAでは「Xperia Z3」「Xperia Z3 Compact」を、2013年は「Xperia Z1」を披露している。名前の番号こそ半年ごとに1つずつ上がっているが、Xperia Zシリーズは奇数番号の方がよりフルモデルチェンジ感が強く、ソニーがIFAを重視していることがうかがえる。

 そんなソニーモバイルが、2015年の目玉として発表したのが「Xperia Z5」シリーズだ。Xperia Z5シリーズは「Xperia Z5」のほかに、上位モデルとして4Kディスプレイを搭載した「Xperia Z5 Premium」と、4.6型のディスプレイを採用したコンパクトモデルの「Xperia Z5 Compact」が存在する。

photo カメラを一新し、指紋センサーを搭載した「Xperia Z5」
photo 片手で持てるコンパクトさが魅力の「Xperia Z5 Compact」
photo 4Kディスプレイを搭載した「Xperia Z5 Premium」

 3機種に共通しているのが、カメラ機能。Xperia Z1から採用されてきたCMOSセンサー「Exmor RS for mobile」自体を一新し、カメラモジュールも新たなものを搭載している。これによって、画素数が上がり、オートフォーカスも位相差AFとコントラストAFを組み合わせる仕組みになり、速度が0.03秒と大幅に向上している。画素数が上がったことで、最大5倍の超解像ズームも可能になった

photo 画素数が上がり、オートフォーカスも0.03秒と超高速になった
photophoto 5倍まで、劣化の少ないズームに対応する

 また、Xperiaシリーズとしては初の指紋センサーを搭載しており、センサーは側面のキーに組み込まれている。Androidでも生体認証に対応したモデルは徐々に増えているが、その多くが背面に指紋センサーを配置しており、ロックを解除するためにわざわざ指を置かなければならない。電源キーに組み込んだことで、こうしたわずらわしさは解消されている。Galaxy S6シリーズやiPhoneなどと同様、指紋の読み取りは指を置いたままでよく、IFA会場にあった実機で試した限りでは精度も高い印象だ。

photophoto 側面の電源キーに指紋センサーが組み込まれた

 こうしたXperia Z5シリーズとしての中核をなす機能は共通しているが、ディスプレイのサイズ、解像度はサイズごとに変えている。Xperia Z5 Premiumが5.5型の4K、Xperia Z5が5.2型のフルHD、Xperia Z5 Compactが4.6型のHDというように、大きいものほど解像度が高くなっている。画面サイズに伴い、本体のサイズも変わってくる。また、サイズ、解像度が高くなれば、その分、バッテリーも必要になる。そのため、ディスプレイに付随するスペックも、機種によって異なっている。

 では、なぜソニーモバイルは異例ともいえるフラッグシップの3モデル展開を行ったのか。ソニーはモバイル事業を再建中で、全体的なモデル数を削減しているところだ。そのような状況の中、Xperia Z5シリーズを3モデルも発表するのは、一見すると矛盾した戦略のようにも思えてくる。

 ソニーのCEO、平井一夫氏はプレスカンファレンスで挙がった質問に対し、ユーザーニーズの多様化を挙げていた。フラッグシップモデルでも、小さいモデルが好きな人もいれば、大画面や高い解像度を好む人もいるというわけだ。

 ソニーモバイルでXperiaシリーズの開発を統括するプロダクトビジネスグループ UXクリエイティブデザイン&プランニングの伊藤博史氏によると、地域ごとの差も大きくなりつつあるという。「大画面はアジアに行くほどウケがいい半面、欧州ではフットプリントが小さいCompactシリーズが好評を博している」(同)といい、1モデルでは幅広いユーザーのニーズを満たせなくなりつつある。日本でも、同様にコンパクトモデルが好まれる傾向がある。

photophoto ソニーの技術を注ぎ込んだ機種としてXperiaを紹介する平井CEO(写真=左)。3モデル展開の狙いを説明する伊藤氏(写真=右)

 実際、他社もフラッグシップモデルは複数サイズで展開し始めている。AppleのiPhone 6sとiPhone 6s Plusはもちろん、Samsung ElectronicsもGalaxyはSシリーズとNoteシリーズの2つがメイン。ディスプレイサイズは選べるのが当たり前なのだ。ソニーはXperiaの商品ラインアップを絞り込んでいるとはいえ、目的は平均単価を上げ、収益性を改善すること。フラッグシップモデルを増やすことは、理にかなった戦略ともいえる。

 また、ソニーモバイルとしても、「今後スタンダードになる技術を展開する場所がほしかった」(伊藤氏)といい、Xperia Z5 PremiumをXperia Z5の上に置くことで、4Kディスプレイなどを積極的に試すことができた。Premiumのラインは、新技術に挑戦するための受け皿ともいえるだろう。

 個人的には、5.5型のディスプレイに対して、4Kの解像度はやや“オーバースペック”だと感じている。このサイズだと、映像の精細さの違いが分からないだけでなく、ディスプレイの明るさやバッテリー消費量の面では、フルHDよりも不利になるからだ。とい言え、「写真や動画の艶や奥行きまで評価する方もいる」(伊藤氏)。今後、より画面の大きい、ファブレット的な端末を開発する上でも、ここで得られた知見は役に立ちそうだ。

photo 5.5型の4Kディスプレイは、ピクセル密度が801ppiにもなる。接写してもドットが見えないほどだ

 新たな展開を見せたXperia Z5だが、伊藤氏によると、このモデルは「次のXperiaへの架け橋」でもあるという。「Xperia Z5は究極の集大成」(同)と言うだけに、Xperia Zから6代に渡って採用されてきたデザインやコンセプトも、いよいよこれで最後になるのかもしれない。

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