ITmedia Mobile 20周年特集

光コラボ、格安SIMの料金競争、ミッドレンジ端末の台頭――2015年のモバイル業界を振り返る石野純也のMobile Eye(2015年総括編)(1/2 ページ)

» 2015年12月31日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 2015年も、間もなく終わろうとしている。ドッグイヤーともいわれるモバイル業界では、今年もさまざまな動きがあった。2014年から続き、格安SIMと呼ばれるMVNOが勢いを増す一方で、そのMVNOに回線を貸すMNOは、固定回線とのセット割を始めたり、ポイントサービスを強化したりと、あの手この手でユーザーの流出を防ごうとしている。

 端末を見ると、キャリアの用意するハイスペック端末は、例年とあまり傾向が変わらなかったが、主にMVNOで利用することを想定して開発されたSIMロックフリー端末の勢いが増している。2014年に発売され、ヒットを記録した「ZenFone 5」に続く端末も、続々と登場した。この流れに乗り、Windows Phoneも日本で約4年ぶりに復活を果たした。

 ミッドレンジ端末が台頭する反面、端末のクオリティに差が大きくなったような印象も受ける。事前の期待に応えられなかった端末が、ネット上で“炎上”するような事態になったのも、2015年を象徴する出来事といえるだろう。理由はさまざまだが、「VAIO Phone」や、「エヴァスマホ」「UPQ Phone」などは、今までとは異なる形で話題を振りまいたスマートフォンといえる。

 こうした動きを踏まえつつ、2015年の通信業界、スマホ業界を振り返っていきたい。

固定とモバイルのセット割引がスタート、ドコモとソフトバンクがauを追随

 既にスマホ側から見て1000万回線に適用されている「auスマートバリュー」だが、2015年は、この動きにドコモやソフトバンクが追随した。ドコモは「ドコモ光」を、ソフトバンクは「SoftBank光」を開始し、どちらのキャリアもモバイルとのセット割引を開始している。ドコモ光は、2015年12月に100万契約を突破するなど、順調に数を増やしていることがうかがえる。ソフトバンクも第2四半期で71万契約(SoftBank Airを含む)と、数を伸ばしている。

photophoto 3月に、ドコモは「ドコモ光」を開始。12月には100万契約を突破した
photo 「SoftBank光」も順調に契約者数を伸ばし、9月には71万件を突破

 ドコモ光やSoftBank光は、NTT東西から回線の借り、提供されている。いわゆる「光コラボレーションモデル」と呼ばれるもので、既存のフレッツ会員は、回線を「転用」するだけで簡単に契約を変更できるのが特徴だ。これによって、もともとはモバイル専業だったドコモも、固定回線を提供できるようになった。

 割引を見ると、キャリアごとに内容が異なっている。ドコモは新料金プランのデータパックの金額ごとに金額が代わる仕組み。これに対して、ソフトバンクのスマート値引きは、auスマートバリューに近くなっている。ソフトバンクは、10GB以上の大容量データパックに対し2000円(税込)の割引をつけ、auがここに対抗する一幕もあった。現状では、auスマートバリューも、新料金プラン「カケホとデジラ」の場合、「データ定額10」以上で2000円の割引を受けられる。

photo 他社に先駆けサービスを投入したauは、514万世帯にauスマートバリューが浸透した。一方で、割引額に関してはソフトバンクを追随する一幕もあった

 一方で、2015年は、あくまで料金の値引きに止まっていたというのが、筆者の印象だ。確かに各キャリアには固定回線で利用した方がいい動画サービスなどはあるものの、固定回線とモバイル回線をセットで使わなければいけない動機づけが弱い。今のままでは、単に条件が複雑になっただけの料金競争というようにも見えてしまう。MNPで他社からユーザーを奪ってきたり、解約を抑止する効果はあったりしても、サービスを使ってみたいと思えるような「何か」がないのだ。

 ドコモ光開始時に同社の代表取締役社長 加藤薫氏は、4Kや8Kの解像度を見すえた動画配信プラットフォームや、テレビとタブレットの連携など、上位レイヤーのサービスについて語っていたが、電話サービスなどでもキャリアの色を出すことはできるはずだ。利用者の規模が拡大しつつある中で、2016年以降は、こうしたセットで持つからこその“新提案”が欲しいと感じている。

photophoto
photo ドコモ光開始時に構想として語られたサービス。こうしたサービスレイヤーでの差別化にも期待したい

進むMVNOの料金競争、MNOの料金はタスクフォースが決着して新たな動きが

 セット割に加えて、部分定額とも呼べる1700円(税別、以下同)の料金プランが始まったのも、料金に関するトピックだ。KDDIは「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」の発売に合わせ、1回5分までの通話が無料になる、「スーパーカケホ」を導入。ドコモやソフトバンクもここに追随したが、スーパーカケホを完全にコピーすることはできず、組み合わせられるデータパックは2社とも5GBからとなった。これに対して、auは3GBのデータパックからスーパーカケホが利用できる。

photo auが他社に先駆け、「スーパカケホ」を導入。ドコモ、ソフトバンクも追随したが、データパックが5GB以上と適用条件が厳しくなっている

 料金については、MVNO側にも大きな動きがあった。4月1日には、MVNO各社が一斉にデータ通信量を改定。900円前後の料金プランで利用できる月あたりのデータ量が、3GBに増量された。音声通話つきのプランでも1600円前後というのが主流になり、MNOとの料金差がさらに明確になった。同じ3GBプランを導入しているauでは、上記のスーパーカケホを利用しても料金は6200円。MVNOでまったく通話をしなかった想定だと、4倍弱の開きがある。

photo 3GBで900円、音声通話つきで1600円というのが、MVNOの相場になっている

 結果として、各社ともMVNOへの流出が続いている状況だ。KDDIの代表取締役社長 田中孝司氏は、「価格志向のユーザーが、MNOからMVNOに流出している」と認めており、結果として、MVNOの少ないドコモ以外のキャリアが打撃を受ける格好になっている。当のドコモにしても、MVNOにユーザーが流出すると、収益減につながってしまうが、料金はMVNOから間接的に接続料という形で支払われる。ドコモにとっては、それだけ他社よりも前向きに取り組む理由があるということだ。

 とはいえ、MVNOの料金競争も、もはや行き着くところまで来た印象を受ける。データ容量が少なかったり、速度が遅かったりと、制約のある料金プランなら、数百円で維持することが可能。筆者が取材で訪れる諸外国と比べても、料金相場の下落が激しい印象を受ける。MVNO側にとっても、ユーザーからあげられる収益が少なくなれば、事業の拡大が困難になる。プラスαの価値をユーザーに提供できなければ、MVNO同士のつぶし合いにもなりかねないだろう。

 MVNOの中には、自社ブランドのショップを拡充したり、オリジナルの端末を投入したり、ネットワークを2重にしてユーザーの選択肢を増やしたりと、さまざまな付加価値を提供する動きもある。料金競争だけで終わらないためには、こうした取り組みが必須といえる。

photophoto 楽天モバイルは、自社ブランドのショップを拡充(写真=左)。トーンモバイルのように、端末まで一貫して手がけるのも、付加価値を提供する動きといえる(写真=右)
photo mineoの戦略は、ネットワークで差を出そうとしているところにある

 2016年早々には、MNO側にも新たな料金の動きがありそうだ。総務省で開催されていたタスクフォースを受け、各社とも、年明けに低容量のライトユーザー向けプランを投入する可能性が高い。現状では、各社とも通話定額とデータパックがバンドルされており、通話定額のないプランでは大容量のデータパックしか選択できない(ドコモは旧料金プランを選択できない)が、ここに手が入るのかも2016年に注目しておきたいポイントだ。

photophoto 総務省のタスクフォースでは、ライトユーザー向けのプランや、キャッシュバックの是正などが議論された

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