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» 2011年06月14日 18時30分 UPDATE

WWDC 2011基調講演リポート(4):デジタルライフの中心は「クラウド」へ――アップルが目指すデジタルハブ戦略の第2章 (1/4)

WWDC 2011の基調講演で発表された内容のうち、これまで紹介した「OS X Lion」「iOS 5」に続いて、最も注目される「iCloud」について見ていく。プレゼンはジョブズCEO自身が行った。

[林信行,ITmedia]
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 世界中から5200人以上の開発者が集まった「Worldwide Developers Conference 2011」(WWDC 2011)の開幕から1週間ほどが経過した。

 今回の発表内容は、すでにWWDC 2011が開催される1週間前から予告されていたものだが、それでも世界中の開発者を驚かせるに十分なものだった。これまで見てきた「OS X Lion」「iOS 5」に続く3つ目のトピックであり、今回の発表の肝でもある「iCloud」について、WWDCから1週間目の筆者なりの印象や考察を交えながら紹介していこう。

クラウド=デジタルハブ

og_wwdc04_002.jpg 新サービスの「iCloud」はジョブズCEO自らが紹介した

 WWDC 2011の基調講演で3つ目のテーマとなったのは「iCloud」だった。OS X Lionを紹介したワールドワイドマーケティング担当VPのフィル・シラー氏、iOS 5を紹介したiOSソフトのVP、スコット・フォースタール氏に続き、最後のiCloudを紹介したのはスティーブ・ジョブズCEO自身だ。

 再び壇上に姿を現したジョブズ氏がOS X LionとiOS 5について触れ、「ここまでの内容は気に入ったかい?」と聞くと会場からは歓喜の声が上がり、「最後で台無しにしないようにがんばるよ」と言うと場内からは笑い声が溢れた。

 「クラウド」――こう聞くとあなたは何を思い浮かべるだろうか。TCO削減? メンテナンスフリー? 社員のコラボレーションを促すワークスタイル? ジョブズ氏によるiCloudの紹介は、もっと別のアングルから始まった。

 「十年ほど前、我々は最も深い洞察を示した。それは『パソコンがデジタルライフにおけるデジタルハブ(中枢)になる』というものだ。どういうことかというと、(PCこそが)デジタルカメラの写真の保管場所になるということ。デジタルビデオカメラの映像を取り込む場所にもなり、音楽も保管することになる。音楽をPCで入手し、それを(iPodなどのような)デバイスに同期する。この洞察は、この十年の大部分を通してかなりうまく行っているように見えた。しかし、ここ数年で事情は変わってしまった。一体なぜか。我々が使うデバイスが変わってしまったからだ」。

 ジョブズ氏がこういうと、スクリーンにはMacとともに、iPhone、iPad、iPod touchの3製品が映し出される。

 「今日、これらの機器はすべて音楽を保管している。すべてが写真を、そしてビデオを保管している。人々は音楽をiPhone上で直接購入するようになった。同じ曲をほかの機器でも聞きたいけれど、iPadにはその曲が入っていない。曲をiPadに転送するには、iPhoneをMacと同期し、その後、Macをほかの機器と同期する必要がある。ここで同期をすると、ほかの機器に入っている写真がMacに同期されるが、今度それをiPhoneでも見られるようにするには、iPhoneをまたつなぎなおさなければならない。すべての機器を同期させようと大忙しで、どうにかなってしまいそうだ」――会場からは同意の拍手が沸き起こる。

 「ここでこの問題についての素晴らしい解決策を提示したい。この解決策こそが、次なる大きな洞察になると思っている。我々はMac(PC)を、iPhoneやiPad、iPod touchと同様の、ただのデバイスに格下げしようと思う。そして、デジタルライフの中心、つまり、デジタルハブ(中枢)の位置には、クラウドを据えよう。なぜなら、ここで横並びになっている機器はすべてコミュニケーション機能を内蔵していて、いつでもクラウドに接続可能だからだ。こうすれば、例えばiPhoneで写真を撮っても、それがまずはクラウドに転送され、そこから自動的にほかのすべての機器にもプッシュ(転送)されるようになるのだ。こうすることで、すべての機器は、私がまったく何も考えなくても勝手に同期されるようになる」――ジョブズ氏はここで声のトーンを変え、さらに別の視点からクラウドを語り始める。

 「みなさんの中にはクラウドというのは、ただの“お空”のどこかにあるHDDだと考えている人もいるかもしれない。ファイルを取り出してDropBoxだかiDiskだかに入れると、それが転送される。それをほかの機器から取り出して使う。これがクラウドだと思っているかもしれない。我々はクラウドには、もっとほかに、かなり多くのできることがあると考えている。それを実現したのがiCloudだ」――ここでバックスクリーンに「iCloud」の定義が大写しにされ、ジョブズ氏がゆっくりとそれを読み上げる。

 「iCloudはあなたのコンテンツを保管し、それをあなたが持っているすべての機器にワイヤレスでプッシュ(転送)を行う。……それに加えて、iCloudはあなたのアプリケーションと完全に統合しており、すべてが自動で行われる」。

 ジョブズは一拍おいて、こう付け加える。「つまり、何も新しいことを学ばなくていいってことだ」「とにかく、ちゃんと動く」。――ここで場内からは喝采が溢れるが、ジョブズ氏自身が水を差す。

 「あなたがたの中には、コイツの言うことなんか信じられるかよ。コイツは、あのMobileMeを作っていた奴らだぜ、という人がいるかもしれない」(場内は大爆笑)「あれは我々が望んだ通りのものではなかった。だが、我々はそこから多くを学んだんだ」。

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