一方、GPUでは第2四半期中に次期ハイエンドGPUを投入することを明らかにするとともに、このGPUでは広帯域メモリ技術のHBM(High Bandwidth Memory)を競合に先駆けて採用するとした。HBMは、DRAMダイを積層し、GPUと同じ半導体パッケージ上に搭載する。GPUコアとDRAMダイをパッケージ上で接続することで、グラフィックスカードでは実現できなかった広帯域をサポートする。ペーパーマスター氏によれば、HBM技術の採用により、消費電力あたりのパフォーマンスは、現在グラフィックスカードで主流のGDDR5に比べて3倍に、消費電力は半分以下に抑えることができると、その優位性をアピールする。
スー氏は、このHBMを採用する新GPUを第2四半期中の業界イベントで発表、同社のグラフィックスカード製造パートナーから採用製品を投入する予定であること説明する。さらに、2015年後半にはデスクトップPC向けGPUのラインアップを一新し、フルレンジで新製品に移行する計画も明らかにした。なお、AMDはこれに先駆け、投資家向け会議当日に、新しいモバイルGPU「AMD Radeon M300」シリーズと、OEM向けデスクトップGPUの「AMD Radeon 300」の出荷を開始したことも発表している。
AMDはさらに、ARMコアベースの次期CPUとAPUに関するアップデートも行なった。まず、“Seattle”(シアトル)の開発コード名で、2014年にサンプル出荷を開始している64ビット版 ARM CPUは、「Opteron A1100シリーズ」の名称で、2015年後半より順次市場展開を開始する。このCPUは、CPUコアにRM Cortex-A57を採用し、IoTのゲートウェイやストレージシステム、Webフロントエンドサーバなどをターゲットにする。
その一方で、AMDは2015年に市場投入を予定していた「Sky Bridge計画」(x86 APUとソケットを共用して共通のプラットフォームを使えるようにする)をキャンセルし、20ナノメートルプロセスルールで製造する予定だった64ビット版 ARM APUのSky Bridgeについても、開発を中止した。これにより、AMDにおけるARMベースのCPUとAPUは、2017年に投入を計画している同社独自のARMアーキテクチャコアとなる“K12”ベースに開発リソースなどを集中することになる。
また、AMDはCPUやGPU、APUなどのSoC開発を加速させるべく、半導体設計のモジュラー化を実現。Zen以降の製品では、CPUコアやGPUコア、アクセラレータなどを、さまざまな構成で組み合わせられるよう、内部インタフェースの共通化や最適化などを図る。これにより、x86系 CPUコアとARMコアで、イチから別々に半導体設計する必要がなくなり、開発期間も短縮できる。
AMDとしては、このモジュラー構造の採用により、最新のCPUやGPUアーキテクチャへの進化を進め、各市場におけるパフォーマンスと省電力において、近い将来にリーダーシップを確立できる体制を整えたい考えだ。AMDはその1つのターゲットとして、2020年には、現行のAMD Aシリーズ(Kaveri)と比べて、25倍の電力効率を実現する「20×25」計画も明らかにしている。
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