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» 2010年11月17日 11時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:2011年は「大変化の年」!? 携帯3キャリアのスマートフォン戦略を読み解く(前編) (1/2)

1999年にドコモのiモードが登場してから11年。通信業界の“次の10年”を担うと目される、各キャリアの2010年冬、2011年春商戦向けスマートフォンのラインアップが発表された。新ラインアップから読み取れる各キャリアの狙いを読み解く。

[神尾寿,ITmedia]

 携帯キャリア主要3社の冬商戦・春商戦モデルが出そろった(NTTドコモKDDIソフトバンクモバイル)。周知のとおり、冬商戦から春商戦にかけては、携帯電話市場がもっとも活性化する時期。ここに向けての端末・サービスのラインアップには、各キャリアの戦略が色濃く反映される。

 そして、今回の冬春商戦はもう1つ大きなテーマを持っている。それは“新たな10年にどう臨むか”である。

 1999年2月にスタートしたiモードはすでに10年を超える歳月を経ており、日本が誇ったフィーチャーフォン(従来型の高機能ケータイ)のエコシステムは成熟期に達している。一方で、Appleの「iPhone」が皮切りとなった“コンシューマー向けスマートフォン”と“新たなモバイルインターネット”の世界観は、フォロワーであるGoogleのAndroid搭載のスマートフォンが急速に進化・普及拡大していることもあり、グローバル市場で爆発的に広がっている。それが津波となって日本市場にも押し寄せ、大きな影響を与えていることは目下の販売ランキングを見れば分かるとおりである。

 この難しい局面において、各キャリアはどのような舵取りをするのか。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルのスマートフォン戦略を分析しながら、国内モバイル市場の2011年を考えてみたい。

当面は「2正面作戦」を余儀なくされるドコモ

 「スマートフォンもiモードも、“ネクストステージ”に

Photo 新製品ラインアップを発表するNTTドコモの山田隆持社長

 11月8日に発表されたドコモの冬春商戦戦略を、一言で表せばこのキャッチフレーズどおりになる。ドコモはこの日、2010年冬〜2011年春商戦向けのラインアップとして、従来型のiモード携帯電話18機種、スマートフォン4機種を発表。また新サービスとして「iコンシェル」の新機能や、iモード向け「ドコモマーケット」なども発表した。

 実際のプレゼンテーションにおいても、他社がスマートフォン分野の発表に大半の時間をあてたのに対して、ドコモはスマートフォンとiモード端末を均等に発表。“スマートフォンもiモードも”と、ドコモが当面は2正面作戦で新時代に臨む姿勢が現れていた。

 質疑応答でNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏は、「スマートフォンがフィーチャーフォンを逆転するには3〜4年かかる」と説明。

 「iモード(フィーチャーフォン)のユーザーは5000万人いる。新規販売においてスマートフォンがフィーチャーフォンを逆転するのは2013年頃になるのではないか。それに合わせて端末ラインアップの(スマートフォンとフィーチャーフォンの)比率は変えていく。

 また、今のところドコモの新サービスはiモード中心に投入しているが、それも(2013年の販売比率逆転に合わせて)変えていく。2011年から2012年にかけて仕込みをしていき、スマートフォン向けの新サービスに注力していく」(山田氏)

 iモードとスマートフォンのどちらにも投資するというドコモの戦略は、同社の置かれているポジションを鑑みれば、至極まっとうである。先述のとおり、ドコモは約5000万のiモードユーザーを抱えており、このプラットフォームが同社の高いARPU(1人あたりの月間平均収入)と、多様なiモード関連ビジネスによる収益を生み出している。iモードのエコシステムはいまだにドコモにとって“金の卵を産むニワトリ”であり、少し老いたからといって、スマートフォンという新たなニワトリに乗り換えるわけにはいかない。

 しかも、この新たなニワトリは、若さが取り柄で今後の成長が見込めそうだが、今のところiモードほど効率よく金の卵(キャリアの収益拡大)を産むかは不分明だ。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を性急に行い、そこで失敗した場合のドコモのリスクは、KDDIやソフトバンクモバイルよりもはるかに大きいのだ。ドコモがスマートフォン時代への急速な移行に慎重になり、時間をかけたソフトランディングを望むのは当然と言えば当然だろう。

「全方位戦略」を敷くドコモのスマートフォン

 それでは具体的な端末ラインアップを見ていこう。ドコモは今回、シャープ製の「LYNX 3D SH-03C」、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製の「REGZA Phone T-01C」、LGエレクトロニクス製の「Optimus chat L-04C」、Research in Motion Japan製の「BlackBerry Curve 9300」の4機種を発表。ここにすでに発表済みのSamsung電子製スマートフォン「GALAXY S」とタブレット端末「GALAXY Tab」、さらに今回未発表のタブレット型スマートフォンを加えた7モデルを冬春商戦に投入する。

Photo スマートフォンは「LYNX 3D SH-03C」「REGZA Phone T-01C」「BlackBerry Curve 9300」「Optimus chat L-04C」の4機種を新たに発表

 これらの端末の中で、注目なのがLYNX 3D SH-03CとREGZA Phone T-01Cだろう。両機はおサイフケータイや赤外線通信など日本固有のニーズにも対応したスマートフォンだ。最新のAndroid OS 2.2を搭載し、グローバル市場でのニーズに対応したモデルとしてドコモはGALAXY Sを投入済みだが、LYNX 3DとREGZA Phoneはこれと対となってドコモのスマートフォンラインアップを支えるものだ。

 では、LYNX 3DとREGZA Phoneのどちらがよいのか。これはユーザーの嗜好によって評価が分かれそうだが、筆者はLYNX 3Dの方が全体のバランスがよくて好感が持てた。REGZA Phoneも4インチのフルワイドVGAディスプレイを搭載し、防水機能の実現やATOK搭載など高性能・多機能という点で魅力的ではあるが、持ったときの質感やバランスのよさという点では、LYNX 3Dの方が万人向きと感じたのだ。搭載された日本語フォントも見やすく、日本向けスマートフォンへのシャープのこだわりを感じる。ただ惜しむらくは、デザインとUI、カラーバリエーションが、同じシャープ製のソフトバンクモバイル向けスマートフォン「GALAPAGOS 003SH」よりも大きく見劣りしたこと。とりわけ女性層への訴求で考えると、デザインとUIはもう少し頑張ってほしかった。

 一方、取り組みのユニークさで注目したのがOptimus chat L-04Cである。同端末はドコモのスマートフォンラインアップの中でエントリーモデルに位置づけられており、端末の性能・機能という点では、GALAXY SやLYNX 3Dなどの上位モデルより見劣りする。しかし、同機にはドコモオリジナルの「ドコモメニュー」が搭載されており、フィーチャーフォンの感覚でスマートフォンが利用できる。キャリア独自のUIへの取り組みとしてはauのIS seriesが有名だが、ドコモメニューはそれよりもさらにケータイのように使える工夫が随所にあり、実際に触っても使いやすかった。ケータイユーザーの乗り換えが今後増えることをかんがみれば、過渡期においてこういったケータイ風のUIは必要だ。ドコモはぜひ、このドコモメニューのデザインをさらに洗練させて、他のスマートフォンにも搭載してほしい。

 ドコモのスマートフォンラインアップ全体を見据えると、その布陣は「全方位戦略」の典型ともいえる。iPhone 4に負けないくらい高性能で最新のAndroid 2.2搭載機がほしい人はGALAXY S、日本のニーズにあった国内メーカー製スマートフォンがほしい人はLYNX 3DやREGZA Phoneといった具合に、ユーザーに幅広い選択肢を用意している。ソフトバンクモバイルのiPhone 4ほどの目玉端末はなく、auのIS seriesのようにキャリアのこだわりを強く感じる部分も少なかったが、バリエーションの豊富さという面では十分な競争力を持っていると言えるだろう。

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