端末での差がつきにくくなる中、各社の競争軸が高速通信ネットワークに移りつつある。それに加えて、サービスやコンテンツといった1つ上のレイヤーにも、力点が置かれるようになった。冬モデルの発表でも、こうした傾向が見て取れる。従来から“総合力”を掲げてきたドコモに対し、ソフトバンクの孫氏も「総合力で他社に勝つ」と述べ真っ向から対抗する。KDDIの田中氏も就任以来「3M戦略」を掲げ、「auスマートパス」や「ビデオパス」などのサービスを送り出してきた。
ソフトバンクモバイルは、エイベックスとタッグを組み「UULA」という動画配信サービスを立ち上げる。ミュージックビデオ、アニメ、ドラマといった映像を約5万そろえ、月額490円でこれらが見放題になる。目標数は非公開ながら、孫氏が「相当力を入れて、多くのユーザーに届けていくことは間違いない」とコメントしていることからも、ソフトバンクモバイルとしてもこの分野に注力していく意思が感じ取れる。数を強調するソフトバンクモバイルに対してKDDIの田中氏は、「我々のビデオパスは数ではない。興味がある新作をDVDレンタルと同時に出していく。それも無料(1本が定額の範囲内)。質を重視、ここを訴求したい」と反論。ビデオパスには、250万契約を突破したauスマートパスや、チャンネルごとに音楽が聴き放題になる「うたパス」、新たに開始する「ブックパス」とセットで780円となる3月末までのキャンペーン料金も用意した。
動画配信サービスではドコモの「VIDEOストア」が、依然として好調だ。会員数は200万を突破。アニメに特化した「アニメストア」も、9万会員を超えているという。また、クラウドサービスに力を注ぐドコモは、冬モデルで「しゃべってコンシェル」の機能を拡張。有料でのキャラクター変更が可能な「しゃべってキャラ」も追加し、収益化にも余念がない。しゃべってコンシェルをスマートフォンでも提供中の「iコンシェル」と結びつけてきた点も、注目したいところだ。一方で、評判の芳しくなかった「spモードメール」を、「ドコモメール」として2013年にリニューアルする。クラウドに対応し、マルチデバイス化しただけではなく、アプリも一新。メールを閲覧するまでの手順を減らしたり、本文のプレビューを表示したりと、使い勝手が悪かった部分を大幅に見直している。
また、「dマーケット」にソーシャルゲームが中心の「dゲーム」や、各種子会社の物販と連携する「dショッピング」を追加するのも、新しい動きだ。このように、以前より各社の上位レイヤーに対する取り組みが本格化している。ただ、スマートフォンでは、キャリアとはまったく関係のない事業者も、フィーチャーフォンより容易にサービスやコンテンツを提供できる。ヒットしているauスマートパスやVIDEOストアのように、キャリアならではの付加価値が今まで以上に求められるようになりそうだ。その意味では、KDDIの田中氏が強調していた「質」こそが、重要になるのかもしれない。
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