秋モデルをタイムリーにそろえたドコモ/日本投入も期待の「Xperia V」「GALAXY Note II」石野純也のMobile Eye(8月27日〜9月7日)(1/2 ページ)

» 2012年09月08日 10時37分 公開
[石野純也,ITmedia]

 8月27日から9月7日の2週間は、国内外で新機種の発表が相次いだ。海外ではドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2012」などがあり、クリスマス商戦も近いこともあってこの時期は新製品ラッシュとなるのが通例だが、日本ではここ数年、10月前後に冬から春モデルまでを含めて発表されるのが一般的だった。8月28日に秋モデルを発表したNTTドコモは「OS、デバイスのサイクルが早く、夏冬1回ずつの発表会ではタイミングが合わない」と理由を説明しているが、背景にはスマートフォンがケータイの主流となり、国内外での動きが同期し始めている状況がある。今回の連載では、数多くの新製品が明らかになった8月27日から9月7日の2週間を振り返っていきたい。


クアッドコア搭載の「Optimus G」や初参入のHuawei製「Ascend」も投入――秋モデル5機種を発表したドコモ

 ドコモは8月28日、Android搭載のスマートフォン、タブレット5機種を発表した。この時期の新製品公開は異例だが、上記のように、特にスマートフォンにおいてはメーカーの開発スケジュールとキャリアの考える商戦期のスケジュールが合わなくなっている。また、Googleをはじめとするプラットフォーム事業者も、OSを頻繁にアップデートする。従来のようなタイムスパンでは、発表から発売までの間に端末が陳腐化してしまう恐れもあるだろう。事実、過去にも秋に公開された春モデルより、タイムリーに発売された春モデルの方が、スペック的にもOSのバージョン的にも上回っているということがあった。ラインアップを取りそろえてから一気にユーザーに提示するスタイルには、数多くの製品を比較、検討したうえで選べるメリットがあることは否定しないが、メーカー主導のグローバルモデルが増える中では現実に即していない面があったわけだ。ドコモがこうした実情を踏まえ、「ご用意できたものをすぐに発表することが必要ではないか」と考えるのは自然な流れともいえるだろう。

 今回、ドコモの発表会には残念ながらIFAを取材していたため参加できなかったが、あらためて秋モデルについてうかがう機会を得た。そこで、担当者のコメントも交えながら、ドコモが発表した5機種の位置づけや特徴を紹介していきたい。

 5機種の端末の中で機能的に最も注目を集めそうなモデルが、韓国・LG製の「Optimus G L-01E」だ。1つ目の特徴が「クアッドコアCPUで2Gバイトのメモリを搭載していること」(プロダクト部 第四商品企画担当 曽輪翔一氏)。夏モデルでは「ARROWS X F-10D」がクアッドコアのチップセット(NVIDIAのTegra 3)を、「GALAXY S III SC-06D」が2GバイトのRAMを搭載したスマートフォンとして人気だが、Opitmus Gは両方を兼ね備えた、ドコモの中で最もスペックの高い機種になるというわけだ。

photophoto クアッドコアCPUと2GバイトのRAMを搭載した「Optimus G L-01E」
photo プロセッサーにはクアルコム製の「APQ8064」が搭載されている。省エネ設定も用意

 ARROWS Xと同じクアッドコアといっても、Optimus Gにはクアルコム製の「APQ8064」が採用されている。これは「Snapdragon S4 Pro」シリーズに位置づけられるチップセットで、もともとはタブレットなどの高いパフォーマンスが必要とされる端末をターゲットにしていたものだ。コアを非同期で制御するという特徴はそのままで、省電力にも期待できる。曽輪氏は「連続待受時間とは別に実利用がどの程度になるのかを内部で計測しているが、ほかと比べて短くなるところがない」といい、クアッドコアだからといってバッテリーの持ちが悪くなるという見方を否定する。バッテリーパックは2210mAhで、同様に大容量だったGALAXY S IIIより110mAhほど多い。コンパクトなボディに収められているのは、「高密度のものをご用意いただき、電池パックを小さくできたため」(同)。こうした部分にも、パーツをグローバル規模で調達できるLGの強みが生きていることがうかがえる。

photophoto RAMは2Gバイトと十分。試作機で確認した限りでは、1.3Gバイト以上の余裕があった(写真=左)。2210mAhのバッテリーパックは、スマートフォンの中では最大級だ(写真=右)

 Optimus Gはグローバルモデルのドコモ版という位置づけだが、「差分は非常に多い」(曽輪氏)。このあたりも、グローバルメーカーながら、いち早く日本機能の取り込みに挑戦してきたLGならではといえるだろう。日本仕様の基本となるおサイフケータイ、赤外線、ワンセグはすべて搭載。その上で、「Optimus Vu L-06D」で対応したモバキャス(NOTTV)や、「Optimus it L-05D」で実現したキャップレス防水といった特長も引き継いでいる。また、Optimus Vuにあった画面をキャプチャーしてその上に文字などを書くことができる「クイックメモ」は、音量ボタンの上下同時押しで起動する。

photophoto キャップレスでの防水を実現。底面のMicro USB端子にも、キャップは付かない(写真=左)。音量キーの上下を同時に長押しすると、画面キャプチャーを撮れ、その上にメモを書ける(写真=右)

 カメラは高速撮影対応で1300万画素。ディスプレイは広視野角の4.7インチ「IPS液晶」となる。LGの独自UIも搭載し、アイコン変更などの機能も継承している。LGは早くからAndroidスマートフォンに取り組み、日本市場へのローカライズにも積極的なメーカーだが、当初はエントリーからミッドレンジまでに属するモデルが多く、ハイエンドが売れ筋になる日本市場では十分な結果を残せていなかった。ただ、先に挙げたOptimus itや「Optimus LTE L-01D」を投入してきたことで、風向きは変わりつつある。本命ともいえる超ハイエンドモデルのOptimus Gは、販売ランキングの上位に食い込めるのか。発売となる10〜11月が、今から楽しみだ。

photophoto 通知エリアのボタンをカスタマイズできるなど、好評のUIは継承(写真=左)。ホーム画面に置いたアイコンは、カスタマイズすることが可能(写真=右)

 「Ascend HW-01E」は、Android 4.0に対応した中国・Huawei製のスマートフォンだ。同社はこれまで、Wi-Fiルーターやキッズケータイなどでドコモとの関係はあったが、Android搭載スマートフォンに取り組むのはこれが初となる。AscendはHuaweiのスマートフォンブランドで、2月のMobile World Congressで披露されたものだ。海外ではエントリーモデルからハイエンドモデルまで、Ascendブランドの下で幅広いラインアップを展開している。

photophoto Huawei初のドコモスマートフォンとなる「Ascend HW-01E」
photo 高速起動は、設定でオン/オフを切り替えられる

 この機種の特長となるのは「高速起動」。これは、グローバルで発売されているHuaweiの「Ascend P1」などに搭載される機能で、電源オンから5秒で起動する。飛行機から降りたときや、映画を見終わったあとなどに、すぐスマートフォンを使いたい。高速起動は、このようなニーズに応える機能といえるだろう。また、残念ながらAscendに限らず、スマートフォンは使い続けるうちに動作が緩慢になることがあるが、再起動が5秒で済めばあまり苦にならないはずだ。

 スペックはMobile World CongressでHuaweiが発表した「Ascend D LTE」に近いが、細かな部分での違いも多い。両者の共通点として挙げられるのが画面サイズや解像度、チップセットで、どちらも4.5インチ、1280×720ピクセルのディスプレイとなり、Qualcomm製の「MSM8960」を搭載する。一方でカメラの画素数はAscend D LTEが1200万画素なのに対し、ドコモ版のAscendは1310万画素となっている。バッテリーは前者が2000mAh、後者が1800mAhだ。さらに、ドコモ版Ascendは日本市場向けの機能にも対応した。ワンセグ、おサイフケータイに加え、モバキャス(NOTTV)も搭載しているところからも、同社の日本市場に賭ける本気が伝わってくる。Huaweiは以前からおサイフケータイなどの日本仕様に対応することを明言していたが、その成果がついに実を結んだ格好だ。一方で、韓国・Samsung電子のGALAXYやスウェーデン・Sony MobileのXperiaに比べると、一般層にまでAscendブランドが浸透しているとは言いがたい。この点が、販売にどのような影響を与えるのか気になるところだ。

※初出時に「英国・Sony Mobile」と記述していましたが、Sony Mobileの現在の本社はスウェーデンにあるため、「スウェーデン・Sony Mobile」としました。お詫びして訂正いたします(9/12 10:27)。

photophoto カメラは1300万画素で、シーン機能なども充実している(写真=左)。中国メーカーながら、日本(ドコモ)の独自サービスであるNOTTVに対応(写真=右)

 Optimus GやAscendなどの大画面モデルに比べ、ディスプレイが小さく、全体としてもコンパクトにまとめられているのがシャープの「AQUOS PHONE si SH-01E」だ。ドコモのプロダクト部、第二商品企画担当、新里典子氏が「サイズ感が一番の売り」というように、片手で持っても指が画面の端まで届き、操作時の安定感は抜群だ。液晶は4.1インチの「高透過CGSilicon」で、数値だけを見るとそれほど小さいようには見えないが、パネルが狭額縁化されているため、横幅は59ミリに抑えられている。フィーチャーフォンの多くが50ミリ前後の横幅だったことを考えると、59ミリではスリムといえないかもしれないが、60ミリを超える大型の端末が増えている中では持ちやすい部類に入る。

photophoto コンパクトで片手持ちも容易な「AQUOS PHONE si SH-01E」

 一方で、「小さいとスペック的に劣るものが多かったが、この機種はデュアルコアでメモリも多い」(新里氏)と、性能にもこだわった。チップセットはハイエンドモデルと同じデュアルコア、1.5GHz駆動のMSM8960で、Xiに対応。カメラは1210万画素で、裏面照射型CMOSセンサーや「ProPixエンジン」を搭載し、高画質を実現した。シャープ独自のタッチパネルへの追従度を上げる「ダイレクトトラッキング技術」や、アプリ、ホーム、ショートカットの3ラインで操作できる「Feel UX」、省電力技術の「エコ技」なども搭載する。もちろん、おサイフケータイや赤外線には対応。外付けアンテナの装着は必要だが、ワンセグも視聴できる。

 コンパクトなハイエンドモデルという点では同じドコモから発売されたソニーモバイル製の「Xperia SX SO-05D」が人気だが、こうした流れをくむ1台といえる。ちなみに、AQUOS PHONE siには英国ブランド・Vivienne Westwoodとのコラボモデルも用意されており、3万台限定で販売される。個性の強い同ブランドの世界観を生かし、背面に配した大胆なカモフラージュ柄が目を引く。ブランドコラボというと女性向けと思いがちだが、メンズラインもあるVivienne Westwoodでデザインも中性的なだけに、男女問わずに使える1台に仕上がっている。

photophoto 1210万画素の裏面照射CMOSセンサーを備えるカメラは、ハイエンドモデルと比べてもそん色ない(写真=左)。3ラインの「Feel UX」も搭載する。「Palette UI」とは切り替えて使える(写真=右)
photophoto シャープ独自の省エネ技術である「エコ技」にも対応(写真=左)。Vivienne Westwoodとのコラボモデルも用意される(写真=右)
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