スマートフォン3機種に加え、7インチ台のタブレットも2機種発表されている。NEC製の「MEDIAS TAB UL N-08D」は、6インチ以上のタブレットで世界最軽量となる249グラムという重さが特長だ。手にしたときの印象は、電子ペーパーを搭載した電子ブックリーダーに近く、片手でつまむように持ってもバランスを保てる。プロダクト部、第一商品企画担当の須田将行氏によると、「既存の7インチタブレットより30%程度軽い」とのこと。Googleブランドを冠した7インチタブレット「Nexus 7」が約340グラム、同じ7インチの初代「MEDIAS TAB(N-06D)」が349グラムで、これらより100グラム前後の軽量化が実現している。重量を抑えることができたのは、「軽さを追求する航空機などに使われるカーボンファイバーを通信機器に応用した」(同)おかげだ。具体的には東レのプリプレグという素材で、有名なところではANAがローンチカスタマーとして積極的に国内外の路線に導入している「ボーイング787」の機体にも使用されている。
機能的には初代MEDIAS TABから厳選され、必要なものだけが残されている印象だ。MEDIAS TAB ULはおサイフケータイには非対応。「7インチでシャリーンとやるのかというと、そのニーズには少し疑問なところもある」(須田氏)といい、同様にアドレス帳交換のシーンに登場することも少ないと判断し、赤外線の搭載も見送った。モバキャスも非対応となった。一方で、「震災以降ニーズが高まっているため、ワンセグには対応している」(同)。タッチパネルには、「HDハプティクス」というイマージョン社の技術を採用。「通常のモーターだと震えるとき、徐々にパワーを上げていくことしかできないが、こちらはカタカタと振動でき、一気にピークに持っていける」(同)のが特徴。文字入力のとき、細かな振動を正確に出して物理キーを触っているような感覚を疑似的に再現できるのが特長だ。ゲームなどのアプリにも応用でき、例えば、ボールが壁にぶつかった際の振動をバイブで表現する場合に、球種によって振動を変えることが可能となる。
画面を上下に分割できる「デュアルタブブラウザ」や、「Wi-Fiダイレクト」で撮った写真を即座に共有する「メディアシェア」といったアプリも内蔵している。「デザインアイデンティティをMEDIASシリーズと共通化した」(須田氏)いうように、見た目もスマートフォンのMEDIASシリーズに近い。LTE対応で、チップセットはデュアルコアのMSM8960を採用。ディスプレイも1280×800ピクセルと精細だ。基本性能が高く、その上で持ち運びやすいために、フィーチャーフォンとの2台持ちにも重宝しそうだ。通話も利用できるため、スマートフォンと併用して、電池切れなどの際にドコモminiUIMカードを入れ替えて使うという用途も想定できる。
もう1台のタブレットが、サムスン製の「GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E」。こちらは、7.7インチとMEDIAS TAB ULよりやや大きく、ディスプレイには1280×800ピクセルの「SUPER AMOLED PLUS」が採用されている。スマートフォン、タブレットの分野では世界最大の有機ELになり、ワンセグに加えモバキャス(NOTTV)にも対応した。ベースとなるのはグローバルモデルの「GALAXY Tab 7.7」だが、GALAXY Tab 7.7 Plusは国内機能に加えてLTEに対応。CPUも1.4GHzから1.5GHzに強化されている。その分、グローバル版にはあった通話機能には非対応となる。Eメールやペンメモなどのアプリをメインの画面時に重ねて表示できる「Mini Apps」も利用できる。背面が金属ということもあり、MEDIAS TAB ULより100グラム以上重いが、画面は約0.7インチ大きいうえにNOTTVも搭載しているところがGALAXY Tab 7.7 Plusのメリットだ。用途に応じた7インチタブレットが、充実してきた印象を受ける。
このほか、ドコモでは別途冬モデルも準備しているという。秋モデルはスペックの強化が図られているものの、今年度中にサービスを開始する1.5GHz帯を使い下り最大112.5Mbpsを実現するLTEは利用できない。800MHzのLTEもハードウェアが対応しておらず、通信の高速化は見込めない。冬モデルで800MHzおよび1.5GHzのLTE対応モデルが出る保証はないが、2012年度中のサービスインというスケジュールを考えると、ラインアップにはあっても不思議ではない。すぐに買える秋モデルを選ぶか、LTEの新周波数対応を待つかは悩ましい選択になりそうだ。
国内ではドコモの新機種発表が話題を呼んだが、海外ではドイツ・ベルリンで開催されたIFAで8月29日、SamsungやSony Mobileがクリスマス商戦に向けた新機種を発表している。日本市場とも関わりが深そうなのが、「GALAXY Note SC-05D」の後継機にあたる「GALAXY Note II」と、防水・防塵に対応したLTE対応の「Xperia V」だ。
GALAXY Note IIは、Noteシリーズのアイデンティティでもある「Sペン」を強化。ペンを浮かせたまま、画像やスケジュールの選択を行える「Air View」に対応した。また、特定の文字や記号にアプリを割り当てることが可能となり、Sペンのボタンを押したまま画面上に描くだけでそれらを起動できる。ペンを抜くと関連アプリ一覧が現れるのも、GALAXY Note IIの新機能だ。一方で同社のモバイル事業を統括するJK・シン氏が「画面サイズは大きくなったが、持ちやすさはそのまま」と語るように、ディスプレイは5.3インチから5.5インチにアップしたがアスペクト比が16:9となり、横幅は80.5ミリに抑えられている。
対するSony Mobileは「Xperia T」「Xperia TX」「Xperia V」「Xperia J」の4機種を発表。プレスカンファレンスはソニーとして行われ、その場ではタブレットもXperiaブランドで展開されることが明らかになった。スマートフォンだけではなく、タブレットやPCにも共通の「メディアアプリ」を搭載し、ソニーグループとしての一体感をさらに高めていく方針だ。
すでに「Xperia Tablet S」はWi-Fi版が日本で発売されることがソニーより発表されているが、スマートフォンが登場する可能性も非常に高い。Xperia TやXperia TXは、ドコモの「Xperia GX SO-04D」がベースになっているため、可能性は薄い。価格を抑えたXperia Jも、日本市場の特性を考えると展開が難しいだろう。一方でXperia VはLTEに対応し「BandI(2.1GHz帯)」への対応も表明されている。ディスプレイのサイズはXperia GXより小さい4.3インチだが、高画質化技術には「Mobile BRAVIA Engine 2」を採用。「Clear Audio+」や「HDR撮影」など、従来のXperiaシリーズにはなかった機能もふんだんに盛り込まれている。プレスカンファレンスではXperia Tがフラッグシップとして紹介されていたが、機能的にはXperia Vの方が先端という印象で日本市場にも適した1台だ。2.1GHz帯のLTEは現在サービス提供中のドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクも開始を予定している。投入時期を考えれば「Xperia acro」や「Xperia acro HD」のように、複数キャリアから発売される可能性もあり期待が持てる。
このほか、海外では米国・MotorolaがLTEに対応した「RAZR M」を日本市場に投入すると表明したことが報じられている。現時点での販売キャリアは未定。モトローラの会見は筆者が直接取材できていないため、今後詳細な情報が入手できれば、あらためてこの連載でもお伝えしていきたい。また、Microsoftのプラットフォームである「Windows Phone 8」の動きも具体化してきた。IFAではSamsungが、Microsoftと提携しているNokiaを出し抜く形で「ATIV S」を発表。会場には実機がなかったが、詳細なスペックを公開している。9月5日(現地時間)にはNokiaが「Lumia 820」「Lumia 920」を発表。海外ではWindows Phone 8もついに姿を見せ始めた。日本では富士通モバイル製の「Windows Phone IS12T」以来動きのないWindows Phoneだが、iOSやAndroidに次ぐ第3勢力として期待の声も大きい。日本での今後の展開にも期待したい。さらに、Appleが来週、新製品を発表する。夏商戦が終わりを迎えつつある中、例年以上の早い時期に秋冬商戦に向けた動きが活発化している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.