ソニーは、現在ドイツのベルリンで開催されているIFA 2012においてメディアイベントを8月29日(現地時間)に実施し、同社のモバイル戦略ならびに新製品群を発表した。これまでソニー本体で開発してきたタブレット製品に、子会社のソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」という名称をつけてブランド統合を行ったほか、Xperiaスマートフォンにおいても4機種のアップデートを行っている。
プレスカンファレンスの壇上に立ったソニー社長兼CEOの平井一夫氏は、「One Sony」を標語に製品のリブランディングや再構築を行っていることを説明し、今年は特に「感動(Kando)」をキーワードに、人々の感情に訴えて笑顔を引き出すような製品展開をすることを示唆した。同社は10年近くにわたって提携を続けてきたスウェーデンのEricssonとの関係を見直し、2社のジョイントベンチャーであったソニー・エリクソンを完全子会社化、「ソニーモバイルコミュニケーションズ」として2012年に再出発している。これまでスマートフォンはソニー・エリクソン、それ以外はソニー本体とばらばらの戦略をとっていたものが、今後は統一ソニーの下で製品展開していくことになる。
これを象徴する製品の1つが今回発表された「Xperia Tablet S」で、これまでソニー・エリクソンのスマートフォン製品ブランドだった「Xperia」を、ソニー本体で開発され続けてきたタブレット製品に付与し、統一ブランドとして展開する。機能的な特徴としては、Androidをベースとしながらさらに製品のブラッシュアップを図っており、薄型軽量化など可搬性に優れた製品となっている。オプション品が豊富なのも特徴で、通常のキャリングケースやドック以外にも、スタンドとしても機能するキーボード付きカバーなど、さまざまな使い方を提案する。
スマートフォンでは「Xperia T」「Xperia V」「Xperia J」の3機種が発表されている(このほか、Xperia Tの派生品である「Xperia TX」もプレスリリースベースで発表されている)。機能的にはXperia T/Vの2機種がフラッグシップに相当し、両者の主な差はスクリーンサイズやLTE対応の有無、投入先マーケットの違いにある。Xperia TXはTの派生モデルで、日本で発売されている「Xperia GX」と同一のもの。Tがグローバルモデルの扱いで、TXやGXは派生品となる。GXとTXは外見と基本スペックは同じだが、LTE対応の有無が異なる(TXはLTE非対応)。
Xperia Vの大きな特徴は防水加工が施されていること。そしてXperia T/VではNFC(Near Field Communications)対応をフィーチャーしている。NFCとはFeliCaなどを含む近距離通信技術の標準規格だが、デバイスの通信アンテナ同士を接近させることで認証を行ったり、短いデータを瞬時に交換できるメリットがある。ソニーではこれを「One Touch」と呼んでおり、これを利用して対応端末同士で情報交換したり、スピーカー/ヘッドフォンなどのBluetooth/Wi-Fi対応デバイスでストリーミング送信を行うための認証(ピアリング)に利用したりと、手軽さを前面に押し出している。筆者の把握している範囲で、こうしたNFCの応用技術を最も積極的に製品展開しているのはソニーであり、非常に興味深い。
プレスカンファレンスの後にはハンズオンコーナーがあり、実際に触れて試すことが可能だったが、今回はスケジュールの関係で数分ほどしか手持ち時間がなく、ファーストインプレッションでの紹介となっていることをご了承いただきたい。前述のように日本市場に投入される端末は限定されているため、今回発表された新機種を直接比較する機会はないと思うが、端末の特徴が非常に似通っていて区別しにくい印象を受けた。Xperia Vについてはホールド感もよく、動きもスムーズな印象を受けた。デモコーナーでは音楽プレーヤーとしての機能をフィーチャーしたデモのほか、海外では比較的珍しい防水機能を専用展示を使ってアピールしている様子がうかがえた。このあたりは後日あらためて詳細をリポートしたい。
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