au夏モデルの独自性/au WALLET提供の狙い/ソフトバンクが発表会を行わない理由:石野純也のMobile Eye(4月28日〜5月9日)(2/3 ページ)

» 2014年05月10日 10時19分 公開
[石野純也,ITmedia]

リアルな決済市場をターゲットにした「au WALLET」

 田中氏が「本日一番のWOW」と語っていたように、端末の発表以上に力が入っていたのが、3月にコンセプトを先行して披露していた「au WALLET」だ。以前の連載(→「au WALLET」の新しさ/ソフトバンク決算会見で見えたもの/アプリや新規事業に賭けるDeNA )でも解説したように、このサービスはauユーザー向けにプリペイド型の電子マネーを発行するもの。MasterCardと提携したことで、同ブランドのクレジットカードが読み取れるリーダー/ライターであれば、au WALLETも読み取れる仕様になっている。そのため、開始当初から世界中の3810万加盟店で利用できる。

photophoto au IDにひもづいたプリペイド型電子マネーの「au WALLET」。auユーザーが申し込めるサービスで、プラスチックカードが発行される。写真右のように、MasterCardに対応した通常のクレジットカードの読み取り機で決済できる

 KDDIが子会社化したWebMoneyの技術も入れ、スマートフォンで残高を確認したり、auのキャリア決済を使ってチャージしたりといったことも可能だ。田中氏が「バリューチェーンを拡大したい」と述べているのは、こうした仕組みがあることに加えて、リアルな店舗での決済にもポイントが付くため。

photophoto auかんたん決済に対応しており、簡単にチャージができる(写真=左)。リアルな店舗での買い物にもポイントが付くのが、ユーザーにとってのメリットだ(写真=右)

 通信料の支払いや、オンラインでのショッピングに加えて、生活に密着した毎日の買い物もauのポイントプログラムに組み込んでいるのがこのサービスの特徴だ。仕組み的にはクレジットカードに近いため、決済とポイント加算も同時に行える。電子マネーとポイントカードのいいとこ取りをしたサービスともいえるだろう。

 田中氏が「ユーザーへの還元だと思っている」と話すように、キャンペーンも充実させた。チャージについては、初回チャージに10%のボーナスを付けたほか、KDDIグループのじぶん銀行からのチャージでも5%が増額される。auショップには「au WALLET ウェルカムガチャ」を設置。抽選で最大3000ポイントが当たるようになっている。また、申し込み時にあらかじめ1000円分がチャージされているなど、現金の大盤振る舞いで普及を促進する。

photo 開始にあたって、各種キャンペーンが行われる

 ポイントについても、セブンイレブンやマツモトキヨシ、ビッグエコーなどで還元率を上げており、お得感を演出する。auのポイントプログラムとも連動するため、通信料1000円ごとに10ポイントがつく。

photo 通常よりもポイントの還元率が高い店舗もあり、大手チェーンが参画している

 ただし、おサイフケータイやNFCといった、スマートフォンに搭載される非接触IC技術は活用されていない。あえてプラスチックカードを発行したのは、「カードの方が分かりやすい」(田中氏)ためだ。

 おサイフケータイの活用率は高くても対応端末の2〜3割という調査結果もある。この数字を高いと見るか、低いと見るかは判断が難しいが、電子マネーやポイントカードを個別にインストールしなければならないなど、リテラシーの低いユーザーにとってのハードルは決して低くない。機種変更時の手続きが煩雑で、積極的に活用しているユーザーにとってもハードルはある。また、iPhoneが非対応なのも、おサイフケータイの弱点といえるだろう。

 プラスチックカードなら使い方はクレジットカードと同じ。誰でも簡単に利用でき、端末に依存しないで済む。表向きはこのカードに決済をまとめたいという理由で付けられた「グッバイ、おサイフ」というau WALLETのキャッチコピーだが、背景にはおサイフケータイに縛られたくないという思いもありそうだ。

 2月に開催されたMobile World Congressでは、KDDI会長の小野寺正氏が「(ケータイに搭載する)FeliCaチップは我々の負担、最終的にはエンドユーザーの負担で載せたが、我々には何のメリットもない。私はあのビジネスはおかしいと思っている」としながら、au WALLETについても「ああいう形でやらざるをえない」と語っている。

 一方で、世界的に規格の共通化が進むNFCの決済については「あると思う」(小野寺氏)と肯定的だった。au WALLETのカードにはNFCも搭載されており、現時点では上記のガチャを回すトリガーにしかならないが、今後、活用例が増える可能性もある。まず自社で進められるプラスチックカードを発行し、それが普及したのちにNFCの決済に移行していく――KDDIは、こうした長期的なシナリオを考えているのかもしれない。

photo カードはNFCを内蔵しており、auショップに設置されるガチャを回すためのトリガーとして使われる

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