dynabook SS RX1/T7Eが採用する半透過型の液晶ディスプレイについては補足が必要だろう。半透過型液晶ディスプレイとは、液晶パネル背面に外光を取り込んで光源とするための反射板を内蔵したうえで、通常の透過型液晶ディスプレイと同様のバックライトも搭載したものだ。
これにより、日中の屋外や窓際など外光が明るい場所ではバックライトを消灯することで、視認性を確保しつつ、バッテリーの動作時間を延長できる。また、バックライトと外光の両方を光源に利用できる構造から、一般的な透過型液晶ディスプレイと比較して、明るい場所でも高い視認性を得ることが可能だ。一昔前の半透過型液晶ディスプレイは発色が物足りないものだったが、dynabook SS RX1/T7Eではかなり改善されている。
以下に、半透過型液晶ディスプレイ搭載のdynabook SS RX1/T7Eと、透過型液晶ディスプレイ搭載のFMV-BIBLO LOOX R70Yを屋内外で並べて見比べた場合の違いを写真とともに示した。写真の左がFMV-BIBLO LOOX R70Y、右がdynabook SS RX1/T7Eだ。
屋内/照明/バックライト点灯:屋内でdynabook SS RX1/T7Eのバックライトを点灯した状態。左に並べた光沢液晶のFMV-BIBLO LOOX R70Yと比較して、表示は若干淡く見えるが、透過型液晶ディスプレイと同じ見え方になる。なお、バックライトを消灯すると、表示はほとんど見えなくなった
屋外/日なた/バックライト消灯:晴天の屋外で直射日光が液晶ディスプレイに反射している状況。dynabook SS RX1/T7のバックライトは消灯したが、外光を光源に使うことで、高い視認性を確保している。FMV-BIBLO LOOX R70Yは最大輝度の設定だが、表示内容がほとんど判別できない
屋外/日陰/バックライト消灯:晴天の屋外だが、日光が液晶ディスプレイに直接反射しない状況。dynabook SS RX1/T7のバックライトを消灯したところ、画面全体のコントラストはかなり低いが表示内容は判別できた。FMV-BIBLO LOOX R70Yは暗部がかなりつぶれて見える
屋外/日陰/バックライト点灯:左の写真と同様、晴天の屋外で日光が液晶ディスプレイに直接反射しない状況。直射日光が画面に当たらないため、dynabook SS RX1/T7のバックライトを点灯することで、視認性はさらに向上した。FMV-BIBLO LOOX R70Yの表示傾向との違いをチェックしてほしいこのように、屋外での視認性では半透過型液晶ディスプレイを備えたdynabook SS RX1/T7が優位に立つ。ちなみに、半透過型液晶ディスプレイにありがちな誤解として、「晴天の屋外ではバックライトをオフにしたほうが必ず視認性が向上する」というものが挙げられるが、よほど強い光が画面に反射しない限り、バックライトを点灯したほうが視認性は高くなる。バックライトのオン/オフはキーボード右上に配置されたボタンからワンタッチで切り替えられるので、屋外ではオンとオフを切り替えて画面の明るさを確認してみるといいだろう。
これら6台の液晶ディスプレイは、RGB各6ビットの約26万色表示がベースとなっており、いずれもディザリングで約1619万色もしくは約1677万色を表現する。画面サイズが小さいこともあり、駆動方式はどれもTNで、広視野角のIPSやVAを採用するものは見られない。また、色域はVAIO type T VGN-TZ72BのみNTSC比で72%以上(つまりsRGBの色域をカバーできる)だが、それ以外は50%程度と思われる(メーカー非公開)。
したがって、モバイルノートPCの液晶ディスプレイを単体販売されている昨今の液晶ディスプレイと比較すると、全体的な画質が見劣りしてしまうのは否めない。とはいえ、フォトレタッチなど正確な色再現性が求められる用途以外では、表示品質に不満を抱くことは少なく、モバイルノートPCの液晶ディスプレイとしてはどれも及第点と言える。
そもそも、モバイルノートPCの液晶ディスプレイでは、薄型軽量や低消費電力といった要素も重視されるため、画質面で単体の液晶ディスプレイと同列に語ることはできないだろう。下表は各モデルが採用するバックライト方式と液晶ディスプレイ部の厚さをまとめたものだが、特にLEDバックライト方式を採用したVAIO type G VGN-G2KAN、VAIO type T VGN-TZ72B、dynabook SS RX1/T7E、FMV-BIBLO LOOX R70Yでは、天板が薄く仕上がっており、本体の薄型化に貢献している。
| 各モデルの液晶ディスプレイ(その2) | ||||
|---|---|---|---|---|
| 製品名 | メーカー | 透過/半透過 | 光源 | 液晶ディスプレイ部の厚さ |
| LaVie J LJ750/LH | NEC | 透過型 | 冷陰極管 | 8〜9.5ミリ |
| VAIO type G VGN-G2KAN | ソニー | 透過型 | LED | 2〜5ミリ |
| VAIO type T VGN-TZ72B | ソニー | 透過型 | LED | 5ミリ |
| dynabook SS RX1/T7E | 東芝 | 半透過型 | LED+外光 | 4〜6ミリ |
| Let'snote LIGHT CF-W7 | パナソニック | 透過型 | 冷陰極管 | 8(凸部11)〜11(凸部17)ミリ |
| FMV-BIBLO LOOX R70Y | 富士通 | 透過型 | LED | 7〜8.5ミリ |
液晶ディスプレイの検証を終えて、6台の中で画質面で完全にリードしていたのはVAIO type T VGN-TZ72Bだった。見比べてみると、明らかに1台だけ色域が広く、視野角や階調性もモバイルノートPCとしては高い。画面のアスペクト比がTVと同じ16:9になっていることと、高解像度でドットピッチが狭いことも加味され、DVD-Videoの表示品質は高く、色鮮やかで精細な映像が味わえる。6台の中では唯一、映像作品を「視聴」ではなく「鑑賞」できるレベルにあるとの感想を持った。ポータブルメディアプレーヤーとして見ても完成度が高い。
一方、屋外での運用が多いならば、dynabook SS RX1/T7Eの半透過型液晶ディスプレイが何より魅力的に映るだろう。屋内での視認性では他機種に譲るが、晴天の屋外でも十分な視認性が確保でき、バックライトの消灯により消費電力をカットできるのはdynabook SS RX1/T7Eだけのアドバンテージだ。それ以外の4台は、光沢と非光沢の液晶で表示傾向に違いはあるものの、表示品質の明確な差は見られなかった。
モバイルノートPCを愛用しているユーザーの中には「モバイルノートPCの液晶ディスプレイは表示内容さえ分かれば問題ない」と考えている人も少なくないと思うが、購入前に一度画面を見比べてみると、意外な表示傾向の違いに気づくはずだ。
今回は、各モデルのキーボード、ポインティングデバイス、ワンタッチボタン回りも検証する予定だったが、液晶ディスプレイの比較がかなり長くなったため、これらを次回にお届けしたい。第5回はこちら。
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