PCを使っていないときでもTurboNASのメリットはある。「ダウンロードステーション」を使えば、TurboNASがBitTorrentやHTTP/FTP経由で大容量ファイルを落としておいてくれるため、なかなか完了しないダウンロードのためだけにPCを立ち上げておく必要がなくなる。TS-112とTS-119P+の消費電力はオペレーション時で7〜12ワットと、一般的なノートPCの3分の1以下なので、節電の意味でも有用だ。また、ファームウェア3.4からは、BitTorrentでのダウンロードをファイル単位で制御できるようになった。
自宅のTurboNASに保存されているファイルを外出先から利用できるのもメリットの1つだ。「MyCloudNAS」ウィザードを使うことで、音楽や動画、画像といったマルチメディアファイルをインターネット経由で閲覧できるようになる。もちろん、PCからだけでなく、iPhone/Android用アプリの「QMobile」でも利用可能だ。
ほかにも、インターネットからTCPポート3689へのアクセスを許可しておけば、iTunesのプロトコルDAAPに対応したプレーヤーでiTunesサーバを使えるし、SSH、SFTPやrsyncなども設定次第で利用できる。ただ、インターネット経由で利用する場合は、セキュリティに十分留意してほしい。
そのほか、外付けHDDにはない機能として、柔軟なファイル共有制御が挙げられる。
フォルダにはユーザー単位でのアクセス制限をかけられるほか、“存在を知られたくないフォルダ”を秘匿することも可能だ。一人暮らしでは不要に思われがちな機能だが、すべての共有フォルダをゲストアクセスOKにしてオープンな性格をアピールしつつ、秘密のフォルダは存在自体を隠してしまえば、自宅が友人たちのたまり場となっても安心だ。
また、ストレージの利用者が自分しかいない場合は、より高速なiSCSIを利用することができる。iSCSIはHDDなどの高速ストレージを直接PCなどに接続するための規格であるSCSIのプロトコルをTCP/IP上に実装したものだ。複数クライアントからの同時接続には対応していないものの、任意のファイルシステムでのフォーマット、パーティション設定など、ローカルドライブと同様の利用が可能だ。
ビジネス用途で使用されるNASは原則24時間稼働だが、個人利用の場合は必ずしもそうではない。折しも節電が求められている現在は、特にムダな電力使用は避けたいところだ。TS-112/TS-119P+はそもそも省電力設計だが、電源のオフ/オンをスケジューリングし、不在時や就寝時には自動的に電源を切るように設定することもできる。また、こうした機能を使わない場合は、EuPのコンフィギュレーションを有効にすることで待機電力をさらに低減できる。
重要なデータが多く蓄積されてくると不安になってくるのがHDD障害によるデータ消失だ。この対策としては、RAIDによる冗長化が一般的であり、TurboNASシリーズも複数ベイモデルではRAID 1からRAID 10(モデルによる)まで対応している。しかし1ベイモデルであるTS-112/TS-119P+ではRAID構成はできない。
その代わり、TurboNASに外付けのHDDを追加すれば、QNAP独自のRAIDであるQ-RAID 1を利用できる。当初は1台構成で、その後余裕ができたらバックアップを考える、というように段階的な導入も可能だ。また、ディザスタリカバリを考え、物理的に異なる場所にバックアップをとっておきたいという人には、AmazonS3あるいはElephantDriveのオンラインストレージサービスを利用できる。
TurboNASシリーズは、数多くのモデルによってエントリークラスからエンタープライズまで幅広く対応しているだけでなく、モデル間の互換性もしっかり保たれている。あるモデルで使用していたディスクをそのまま別のモデルに接続し、ファームウェアをアップデートすれば、それだけで移行が完了するマイグレーションの容易さも特筆すべき特徴の1つだ。上位機種であれば、増えたベイを活用して、より可用性の高いRAIDを構築したり、向上したCPUパワーを活用して、ボリュームを暗号化するなどの運用も考えられる。
今後、個人が所有するデータは、量・重要性ともに決して低下することはなく、数年ごとに買い換えが生じるPCに付帯したデータとして扱うには、限界が見えつつある。来るべき時代の第一歩としても、TS-112/TS-119P+は最適な選択肢の1つと言えるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.