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» 2011年09月16日 08時30分 公開

BUILD:ARM版Windows 8は1年後の世界に期待する (2/3)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

将来の性能向上が前提のARM版Windows 8

 「高速なARM版Windows 8」という基調講演のデモで受けた印象とは異なる展示機材で行うデモの動作だが、この差の原因はどこにあるのか。展示会場にはNVIDIA、Qualcomm、Texas Instruments(TI)の3社が出展しており、それぞれが供給するARMプロセッサを搭載したWindows 8タブレットデバイスのリファレンスモデルを展示している。

 NVIDIAはKal-ElベースのARMプロセッサ(同社ではすでに「Tegra 3」と説明している)、Qualcommは、第3世代のSnapdragon、TIは、OMAP4ということまで判明している。Kal-Elはクァッドコアで、残り2つはデュアルコアだ。NVIDIAとQualcommは、動作クロックやリファレンスモデルが搭載するメモリ容量を明らかにしない(質問しても回答を断られた)が、TIは、動作クロックが1GHzで搭載メモリが1Gバイトであることを明らかにした。

 TIのスタッフは、ARM版Windowsが製品としてリリースされるころには搭載メモリ容量が2Gバイトまで拡張される見込みで、ARMも世代が1つ進んでいる可能性が高いという見通しも語っている。現状のARM版Windowsのリファレンスモデルで搭載するARMは、いま市場に出ている現役のスマートフォン向けSoCとほぼ同等のスペックであること(しかも超ハイエンドではなく、ミドルレンジモデルのスペックという)、そして、MicrosoftとARMベンダー各社が2012年の製品リリースをターゲットにしていて、その時点でARMのスペックが現在よりも向上することを見込んでいるようだ。

 ということは、いま現役のARMの性能では、改良されたWindows 8カーネルやユーザーインタフェースデザインをもってしても、パフォーマンスが不足する可能性がある。リファレンスモデルを含め、デモ用のデバイスが極端に少ないこと、Windows 8 Developer PreviewでARM版のみ配布されていないのも、こうした背景があるのではないか。

 一方で、いまプラットフォームの改良が急速に進んでおり、ハードウェアとソフトウェアがともに進化することでパフォーマンスの問題は解消できると考える関係者もいる。NVIDIAの説明によれば、基調講演でシノフスキー氏が示したように、Windows 8が動作するシステムで最低限必要なメモリの使用量が開発バージョンが進むごとに確実に下がっており、一般的なPCに比べるとスペックの差は歴然であっても、その問題が解決するのも時間の問題だろう、との認識を示している。

 私見になるが、ARM版Windows 8の基本スペックは、クァッドコア以上、動作クロックは1.2〜1.5GHz程度、搭載メモリ容量は2Gバイト程度が最低ラインになるのではないかと考える。現時点でこのスペックを満たすSoCやチップセットを搭載した製品はないが、ARM版Windows 8が登場する1年後にはごく標準的なものとなっているのではないかと思われる。

Windows 8は重量級PCゲームも“WinRT”で走る

 BUILDでは、「新しいUIの“Metroスタイル”でゲームを作ろう」という趣旨のセッションが多い。このMetro対応アプリケーションからDirectXを呼び出したり、タッチ操作や傾きセンサー、あるいは、ゲームパッドなど、さまざまな入力インタフェースを組み合わせてプログラミングする方法などが紹介されている。このことは、ハイエンドなグラフィックスカードを要求するようなPCゲームでも、WinRTという新しいランタイム上でアプリケーションが動作できることを示唆している。

 「WinRTでは、XAMLからInternet ExplorerまですべてのグラフィックスシステムがDirectXをベースにしている。ハードウェアアクセラレーションをうまく活用することでハイパフォーマンスなゲームも構築できる」とMicrosoftは説明しており、ある意味で“レガシー”となったデスクトップ環境とは関係なしに、すべてのゲームがWinRT上で構築可能であるだけでなく、むしろ、それを推奨しているような印象さえ受ける。

 このように、ゲームなどを中心に多くのアプリケーションがWinRTの新しいランタイム環境へと移行すると考えられる点もWindows 8で大きく変化する重要なポイントの1つといえる。Metroではフルスクリーンのほかに縦長や縮小画面など標準となる表示インタフェースが提案されているが、ゲームの中にはこの方式を利用するものもあれば(シミュレーションゲームなどで2画面の縮小表示にして、別の作業をしながら経過を確認するなど)、完全にフルスクリーン表示でフルパフォーマンスでのゲームプレイを期待するものもある。それらすべてを含めて、WinRTがカバーするようになっていくのだろう。

ARM版Windows 8でもGears of Warみたいなゲームが動く?(写真=左)。DirectXは、既存のさまざまなデスクトップアプリでも広く活用されている。例えば、Windows Live Messengerみたいなアプリでも、DirectXが標準的に利用されている(写真=右)

Metroスタイルで記述されたアプリケーションからDirectXを呼び出して、画面に特殊効果を加えていく(写真=左)。DirectXを使ったMetroゲームアプリのサンプル。これはWindows 8のDeveloper Previewに標準で用意されている。このほか、BUILDではより動作の激しい3Dゲームも紹介された(写真=右)

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