連載
» 2016年12月29日 06時00分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(2016年総括編):“実質0円”禁止、MVNOとSIMフリースマホの飛躍――2016年のモバイル業界を振り返る (1/3)

2016年で大きな話題を集めたのが大手キャリアの「実質0円の禁止」。その反動でSIMフリースマホの販売が伸び、MVNOも飛躍した。MVNOではLINEモバイルが注目を集め、特定サービスの通信料を無料にする「カウントフリー」の提供も増えた。

[石野純也,ITmedia]

 モバイル業界にとっても大きな動きのあった2016年。1年を通じて話題になったのが、総務省の「実質0円禁止」。4月にガイドラインが施行され、10月にはそのフォローアップ会合が開かれ、2017年早々にも端末価格に対する新基準が示される見通しだ。これに伴い、大手3キャリアは端末の価格見直しを余儀なくされている。MNPでの競争が沈静化した結果として、大手3キャリアは既存ユーザーの優遇に、大きく方針を転換し始めている。

 その反動として、SIMロックフリースマートフォンの販売には加速がかかった。MVNOが一般化するにつれてユーザーの幅も広がり、3万円以下のミッドレンジ中心だった売れ筋にも、変化の兆しが見え始めている。この機に乗じて、Huaweiがシェアを伸ばすなど、SIMロックフリースマートフォンメーカー同士の戦いも、激化している。Huaweiの「P9」「honor 8」「Mate 9」、ASUSの「ZenFone 3 Deluxe」、FREETELの「KIWAMI 2」など、ハイエンド端末の投入も相次いだ。

 MVNOの新規参入という点では、LINEが立ち上げた「LINEモバイル」が注目を集めた。と同時に、主にMVNOがサービスとして提供している「カウントフリー」機能に対する是非の議論が高まった1年でもあった。MVNOでは、FREETELやビッグローブ、DTIなどが、特定のアプリとの通信が無料になるサービスを提供している。7月に登場し、大ブームとなった「Pokemon GO」を無料通信の対象にするMVNOも表れ、よし悪しとは別に、カウントフリーが一部MVNOのマーケティング手法として定着し始めている印象も受ける。

 これらの流れを踏まえたうえで、2016年の業界動向を、当時のニュースとともに振り返っていきたい。

大手キャリアのスマホ販売にブレーキ、料金は既存顧客優遇に

 大手キャリアにとって、2016年は“価格”に悩まされた1年だった。きっかけは、2015年に開かれた総務省のタスクフォース。ここで、“実質0円”販売を禁止する方針が固まり、4月に施行されたガイドラインで明文化された。ただし、ガイドラインには「いくらまでならOK」という規定がない。価格統制につながる恐れもあるため、政府が具体的な価格を明示できないからだ。そのため、価格の下限はいくらなのかの暗中模索が続いた1年になった。

石野純也のMobile Eye 総務大臣の高市早苗氏
石野純也のMobile Eye 4月に導入されたガイドラインによって、端末価格は事実上の値上げとなった

 例えば、本連載でも取り上げた通り、ガイドラインが効果を発揮する4月1日以前から、各キャリアのキャンペーンが続々と変更、中止になり、ドコモについては発売前にiPhone SEの実質価格を一度改定している。これも、総務省から「待った」がかかったためだという。ドコモのiPhone SEは、3Gケータイからの乗り換え時に実質0円になっていたが、これが実質648円(税込)に改められた。

石野純也のMobile Eye 各社のキャンペーンが続々と3月いっぱいで終了
石野純也のMobile Eye ドコモのiPhone SEは、発売前に価格を改定するという“まさかの事態”に

 いつの間にかこの648円が暗黙のルールのようになり、冬モデルとして発売されたドコモオリジナルブランドの「MONO」まで、端末購入サポートを適用した際の一括価格が648円になっている。ただし、これはあくまで総務省とキャリアの駆け引きのもとで決定された価格。10月に開催されたフォローアップ会合では、有識者から「なぜか648円なら許されることになっている」と指摘もされている。このフォローアップ会合を受け、改正ガイドラインでは、2年前の同水準の端末の下取り価格を基準とする案が明記された。

石野純也のMobile Eye 冬モデルの「MONO」は、一括価格で648円に

 ガイドライン施行からフォローアップ会合までの間には、クーポンを巡って各社が行政指導を受けるなど、厳しい対応が続いた。結果として、店頭からは実質0円の端末が姿を消し、スマートフォンの販売にはブレーキがかかっている。

 ガイドラインは、ユーザーごとに偏りが生じやすい端末購入の補助を減らす代わりに、それを原資として既存ユーザーに還元すべきというのが、本来の目的だ。そのため、端末の実質価格が上昇する一方で、2016年は既存ユーザーへの還元施策も相次いで発表された。各キャリアがまず着手したのが、データ通信をあまり使わないユーザー向けの料金プラン。KDDIとソフトバンクが1GBのデータプランを、ドコモが5GBのシェアパックを導入している。逆に、通信を大量に使うユーザーに向け、ソフトバンクは「ギガモンスター」を導入。これにKDDIやドコモが対抗し、20GB、30GBの大容量プランが3キャリアに広がった。

石野純也のMobile Eye 「シェアパック5」の狙いを語るドコモの加藤社長(現・相談役)

 長期ユーザー向けの還元施策も手厚くなり、ドコモは「ずっとドコモ割」を改定。2年契約後に選べる、縛りのない「フリーコース」との選択制を導入した。また、KDDIは「au STAR」を8月から開始しており、データプランの利用料に応じたau WALLETへのキャッシュバックを軸に、ユーザー向けの還元を強化している。ソフトバンクも、Tポイントと連動した長期ユーザー向けの特典を用意した。

石野純也のMobile Eye ドコモは「ずっとドコモ割」を拡充。他社も長期ユーザーへの還元を行っている
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう