“誰もがクリエイティブになれる”――「GALAXY Note II」が描く次のストーリー開発陣に聞く「GALAXY Note II」(2/3 ページ)

» 2012年11月08日 11時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

画面のアスペクト比を16:9にした理由

 GALAXY Note IIの外観デザインやUI(ユーザーインタフェース)については、プロダクトデザイナー 責任研究員のジョン・ジェウン(Jeawoong Chung)氏と、UXデザイン 責任研究員のキム・ユラン(Kim Yuran)氏に話を聞いた。

photophoto ジョン・ジェウン氏(写真=左)とキム・ユラン氏(写真=右)
photo 左から初代GALAXY Note(SC-05D)とGALAXY Note II(SC-02E)

 初代GALAXY NoteとGALAXY Note IIを見比べると、最も大きな違いは幅が細くなったことだと分かる。ディスプレイのアスペクト比を16:9にした理由についてジョン氏は「初代Noteは画面サイズが大きかったので、グリップ感を確保してほしいという市場の要望がありました。そこで横幅を狭めて縦を長くしました」と説明する。さらに、グリップ感を向上させるためにラウンド感も高めたという。キム氏は「画面が縦長になったので、それに合うようUIも調整しました」と補足する。


photo GALAXY Note II(SC-02E)にはフリップカバーが同梱される。

 外観のデザインは、GALAXY S IIIから戦略的なデザインアイデンティティを構築しているという。「基本コンセプトは“ミニマムオーガニック”。これをベースに、GALAXY S IIIでは“自然”の要素をデザインに取り込み、Note IIは人間の手に合う形にこだわりました」とジョン氏。初代GALAXY Noteと比べると幅以外の違いが分かりにくが、他に変えた部分はあるのだろうか。「初代Noteは(どちらかと言うと)四角い形状でしたが、Note IIではラウンド形状にしています。また初代Noteよりも質感を高めるために仕上げ加工をしており、プレミアム感を追求しています。初代Noteのメリットを生かしながら、デザインの戦略に合うよう、より洗練された形を目指しました」とジョン氏は説明する。本体色については、「日本では高級感のあるカラーが好まれる」との判断から、GALAXY Note II(SC-02E)では日本オリジナルの「Amber Brown」を採用した。また、初代GALAXY Noteでフリップ型のカバーを同梱したところ、日本での反響は他国よりも良かったことから、SC-02Eにもフリップカバーが同梱される。

 UIについてはSペンを使った操作法を拡張させたことが大きい。「初代Noteでは、大画面の反響が良かったのですが、ペンを使える機能が当初はSメモだけでした。Note IIでは、Air Viewなど、いつでもどこでもペンを使えるような機能を搭載しました。Note IIのSペンでは、ハリーポッターの魔法の杖のようにさまざまなことができます」とキム氏。同氏は「会議で議事録を作成するときや、浮かんでくるアイデアをメモするときにSノートを使っている」という。またデザイナーという仕事柄、絵をスケッチするときにもSノートを使っているそうだ。ロック画面を2回タップすると、Sノートの「クイックメモ」が即座に立ち上がるので、思い立ったメモをすぐに書き込めるのが便利だ。

 実際の使用感にはさほど影響がないかもしれないが、画面の横幅が削られたことに伴い、ディスプレイの解像度は初代GALAXY Noteの1280×800ピクセルから1280×720ピクセルに減少している。これは「初代Noteでは横幅が広くて不便だという声があったので、16:9に変更したかったため」(ジョン氏)。解像度よりも持ちやすさを重視したわけだ。

GALAXY Noteは日本ではあまり売れなかった

 新カテゴリーのデバイスとして話題を集めたGALAXY Noteは、日本ではどのように受け入れられたのだろうか。そしてGALAXY Note IIではどんなところに注力したのか。商品企画の次長 カク・カンレ(Kwak KwangLee)氏とカン・ジヒョン(Kang JiHyun)氏に聞いた。

photophoto カク・カンレ氏は日本ならではのカスタマイズとして、Sノートの中に年賀状のテンプレートを10種類入れたと話す(写真=左)。カン・ジヒョン氏はSペンのAir Viewについて「ギャラリーやメディアプレーヤーの操作で『わぁ!』と思うところがありますが、実用的な面ではEメールの本文をプレビューしたり、カレンダーの予定を簡単に確認したりできるのが便利ですね」と話した(写真=右)

 ドコモが「GALAXY Note SC-05D」を発売してすでに半年以上がたったが、「日本での反響は、想定していたよりも良くなかった」(カク氏)という。初代GALAXY Noteが最も売れたのは韓国だそうで、他に中国や東南アジア、欧州でも売れているという。「新しい製品が登場すると、日本のユーザーは完ぺきな製品でないと受け入れてくれません」と同氏。日本でGALAXY Noteがあまり売れなかった要因は「Sペンの操作性が完ぺきでなかった」ことにあると同氏はみる。「GALAXY Note IIではSペンの機能を改善し、Sペンを使った機能やアプリも多数用意したので、初代Noteよりは(日本で)売れるのではないかと期待しています」(カク氏)

 韓国をはじめとする世界でGALAXY Noteが日本よりも売れたのは、「大きい画面に対する抵抗感があまり少ない」ことが大きいという。また韓国ではLTEサービスが普及しており(日本でもドコモが早くから提供しているが)、高速通信と大画面の相性の良さも効果的に働いたようだ。

 一方、ワンセグ、おサイフケータイ、防水などのいわゆる日本仕様は、GALAXY Note(SC-05D)ではワンセグしか対応していない。GALAXY Note II(SC-02E)ではグローバル版のNFCの代わりにFeliCaを搭載しているが、防水はいまだに対応できていない(これはGALAXY Sシリーズも同様)。「防水については日本市場における1つの課題だと認識しています。防水の対応は技術的には問題ありませんが、デザインが制限され、サイズが増すという問題があります。防水に対応させるかどうかは現在検討しているところです」(カク氏)

 初代GALAXY Noteは2011年9月に海外で発表されてから日本で発売されるまでに半年以上の時間を要したが、GALAXY Note IIは発表から2カ月半ほどで日本での発売となり、発表から発売までのスピードが短縮された。「FeliCaやワンセグなど、グローバルモデルにはない機能を別途搭載しないといけないので、開発はかなり頑張りました」とカク氏は振り返る。「グローバルで見ると、日本市場はそれほど大きくないので、この機能を載せたいと言っても、(上層部を)説得するのが難しいですね。日本の文化を理解しないとローカライズはできません」(カク氏)

日本でも大画面スマホが受け入れられるか?

 5.5インチという画面サイズは、スマートフォンとしてこれ以上大きくなる余地はないほどにも思えるが、さらに画面サイズを大きくするかどうかは「いろいろな意見がありますが、どうするかはまだ決めていません。悩んでいます」とカク氏。画面が大きくなれば本体も大きくなる。となれば、タブレットのように自宅でWi-Fiモデルを使う――といった要望もありそうだが、「我々は日本市場では販売チャネルを持っていません。基本的な考えとして、キャリアさんと組んで販売します」(カク氏)とのことで、Wi-Fi版については未定との考えを示した。

 ディスプレイの解像度が1280×720ピクセル、アスペクト比が16:9――これは発売中のGALAXY S IIIと同じだ。Note IIは5.5インチ、GALAXY S IIIは4.8インチで画面サイズは違うが、スマートフォンとしての性能は近くなった。「GALAXY Note IIとGALAXY S IIIは競合するのでは?」という質問に対し、カク氏は「GALAXY S IIIは、最先端の機能や新しい技術を搭載した、アーリーアダプター向けの製品です。Noteはその上にペン操作や人間の感性を盛り込み、クリエイティブな路線を目指しました」と答える。ターゲットをどのように棲み分けるかは、Samsungのマーケティングにもかかっていると言えそうだ。

 海外では4インチディスプレイを備えたGALAXY S IIIの小型タイプである「GALAXY S III mini」が発表されている。日本では4インチ台前半のスマートフォンも人気だが、4インチ台のGALAXY Note――つまり“GALAXY Note mini”のようなモデルもアリではないかと思えてくる。Note IIの改良されたSペンなら、ある程度小さい画面でも違和感なく使えるはずだ。ただ、そうしたモデルの投入は「考えていません」とカク氏。「まずはGALAXY Noteを(日本で)定着させることが課題と考えています」(同氏)

 5インチ以上の大画面スマホが日本でどこまで受け入れられるかは、現時点では未知数だが、「今は大画面に抵抗があっても変わると思います」とカク氏は楽観視する。「日本はスマートフォンの普及が海外より遅い面がありますが、来年くらいになると、5インチクラスのスマートフォンでも抵抗感がなくなってくるのではないでしょうか」(同氏)

 ディスプレイが大きくなればそれだけ消費電力が増すが、GALAXY Note IIでは3100mAhという大容量バッテリーを備えることで、その弱点をカバーしている。もちろん注力したのは容量だけではない。「バッテリーライフを伸ばす方法は2つあります。1つはハードウェアで、どんなチップを使ってどう設計するかが重要になります。2つ目は、ソフトウェアがどれだけハードウェアと適合するのかです。内部でもこの2点に重きを置いて検証しています。私の体感的に、GALAXY Note IIのバッテリー性能は初代GALAXY Noteよりも良くなっていると思います」とカク氏は話す。GALAXY Note(SC-05D)とGALAXY S III(SC-06D)のバッテリーは同時期に発売された他のLTEスマホの中でもよく持ったという結果もあるが(参考記事)、GALAXY Note IIのバッテリー性能も期待できそうだ。

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