第8回 ライバルは「GALAXY Note」――5インチ超えスマホが急増する中国山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)

» 2013年03月29日 00時00分 公開
[山根康宏,ITmedia]
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China Unicomの「4521」戦略

 各メーカーが大画面スマートフォンに注力する中、通信事業者側にも動きが出てきた。中国で携帯電話シェア2位のChina Unicom(中国聯通)は、2013年2月21日にCoolpad、ZTEとともに新しいスマートフォンを発表。21Mbpsの高速通信に対応し、ディスプレイは5インチ、そしてクアッドコアCPUを搭載しながらも価格は1000元台に抑えられた製品である。China Unicomは今後このスペックの製品を、1000元スマートフォンの主力として複数投入していく予定だ。

 China Unicomは、2011年末に4インチの1000元スマートフォンを複数発売し、3日間で11万台を売り上げるヒット商品となった。当時は4インチが「新世代の大画面モデル」と呼ばれたが、それから1年ちょっと経った今回の新製品はディスプレイサイズだけではなくCPUや通信速度も強化されている。China Unicomではクアッド(4)コアCPU、5インチ、そしてHSPA 21Mbps対応の今回の新製品を頭の数字を取り「4521戦略」製品と呼ぶ。ライバルのChina Mobile(中国移動)、China Telecom(中国電信)も販売に力を入れる1000元スマートフォンであるが、China Unicomがスペックを大きく引き上げた「4521戦略」製品を投入するのは、3事業者による3G加入者の争奪戦がより厳しさを増している背景がある。

photophoto 3月にChina Unicomが発表したCoolpadの「MAX7295」(写真=左)。事業者の1000元スマートフォンは実質無料販売が多い(写真=右)

 中国の3G契約者数は2013年2月末時点でChina Mobileが9498万、China Unicomが8013万、China Telecom(中国電信)が7206万と、各社拮抗した状態となっている。だがChina Mobileは今後6億を超える2G契約者が3Gへ大量に移転し、3G契約者を一気に増やし、リードを広げるとみられている。China Unicomはそこに目をつけ、新規契約だけではなくChina Mobileの2Gユーザーの自社への移転も、3G契約を増やすカギと考えているのだ。だが中国では、まだ番号ポータビリティー(MNP)はごく1部の都市でしか行われていない。そのため電話番号を変えてまでも顧客を移転させるためには魅力あるスマートフォン、すなわち「4521戦略スマートフォン」のラインアップ拡充は必須なのである。

 また、China Unicomには国策も大きな悩みの種になっている。それはLTEの開始時期が定まっていないことだ。シェア1位のChina Mobileが4G免許を正式に交付されていないにも関わらず、国策により商用テストとしてTD-LTEのサービスエリアを年内には100都市に広げる予定となっている。TD-LTEスマートフォンも今年春から複数機種が投入され、テストという名目ながら、商用レベルのサービスが全国の主要都市で利用できるようになるのである。

 これに対し、China UnicomはFDD方式のLTEの導入が事実上決まりとみられているものの、国策のTD-LTEとは異なり、FDD-LTEはテストサービスですら開始時期の見通しは立っていない。おそらく中国政府はChina MobileのTD-LTEの商用化のめどが立ってから、China Mobileに4G免許を与えるものの、China Unicomへの免許は同時ではなく遅れて発行することも予想される。

 つまりこのままではChina Mobileの2G客が、China Mobileの3GではなくTD-LTEへと一気に移転する動きが加速するかもしれない。China Unicomはこれまで発売してきたスマートフォンの多くがHSDPAの7.2Mpbsまたは14.4Mpbs対応だったが、「4521戦略スマートフォン」の投入で21Mbpsの高速通信対応をアピールし、China MobileのTD-LTE開始に対抗しようと考えているのである。

2013年は5インチの普及の年になる

 China Unicomの1000元スマートフォンの大画面化、ハイスペック化の動きはおそらくChina MobileとChina Telecomにも火をつけるだろう。だが端末メーカー側もすでに5インチモデルは大手から中小までほぼ全社が発売または発売予定であり、2013年の中国市場では、グローバル市場と同様に、5インチスマートフォンがどこでも見かける一般的な製品となりそうだ。コストの問題からディスプレイ解像度はHDかそれ以下のものが主力となるだろうが、噂される「Thl W8」のように、フルHDディスプレイのモデルも数を増やしていくだろう。

 中国の携帯電話情報サイトでざっと見たところ、2013年3月時点で中国国内で発売されている中国メーカー製の5インチ以上のスマートフォンの数は約70機種にも上る。Lenovo、Coolpad、Huawei、ZTEなどの有名メーカーだけではなく、中小の携帯電話メーカーや家電メーカーなどから多数のモデルが販売されているのである。また新規メーカーの参入も相次いでおり、それらのメーカーからも大画面モデルが次々に登場している。

 例えば、3月11日からスマートフォンの販売を開始した深センのNenken、その初の製品である「航母N3」は、5.7インチHDディスプレイにクアッドコア1.2GHzのCPUを搭載する。聞いたこともない新しいメーカーが、いきなりファブレットから市場に参入するのも驚きだが、価格も1499元と十分安く価格競争力も高い。品質やアフターケアなどは未知数なものの、この製品が市場に出てくれば、メーカー間の力関係に大きな影響を与えることは必須だろう。

 また、2011年からスマートフォンに参入したKoobeeは、3月21日に北京で大々的な新製品発表会を行った。発表会には国内で同社のCMにも出演する台湾のトップアーティスト、蔡依林も登場。新製品のKoobee「Max M7」は5インチフルHDディスプレイ、クアッドコア1.5GHz CPU、カメラは13メガピクセル・F2.2、高音質な音楽再生などフルスペックながら価格は2499元。これから中国市場に5インチハイエンドスマートフォンを投入予定の海外大手メーカーにとっても、手強い相手になるかもしれない。

photophoto まったくの無名メーカー、Nenkenから5.7インチスマートフォンが低価格で登場(写真=左)。KooBeeはフラッグシップモデルの新製品発表会をオンラインでも生中継した(写真=右)

 このように各メーカー、そして各事業者がスマートフォンの機能アップと低価格化を進めることで、中国国内で販売されるスマートフォンは、いずれ世界で最もコストパフォーマンスの高いものになっていくだろう。このまま進めば競争はより激しくなり、海外メーカーにとって中国は参入困難な市場になっていくかもしれない。果たして1年後の1000元スマートフォンはどこまで進化しているのだろう? 各メーカーの新製品動向からは今後も目が話せない状況が続きそうだ。

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