TD-LTE/FDD-LTEデュアルモードの基地局とスマホも開発――ZTEのLTE戦略ZTEキーパーソンに聞く(3)

» 2012年07月10日 18時37分 公開
[田中聡,ITmedia]

 中国の携帯電話メーカーZTEは、携帯電話やスマートフォンなどの端末に加え、基地局やコアネットワークソリューションも開発し、世界の通信事業者へ供給している。日本ではソフトバンクのみまもりケータイやスマートフォン、モバイルWi-Fiルーターなどを投入しているほか、ソフトバンクがWCP(Wireless City Planning)のMVNOとして通信サービスを提供する「AXGP」のインフラも、ZTEが開発している。ZTEは今後どのようなかじ取りでネットワーク事業を展開していくのか。日本の報道陣向けに開催したメディアツアーで、ZTE副総裁 兼 ワイヤレス製品企画部 部長、TDD製品部門 部門長のワン・ショウチェン(王守臣/Wang Shouchen)氏に話を聞いた。

LTEの主流はTD-LTEか、FDD-LTEか?

photo ZTE副総裁のワン・ショウチェン氏。1998年に浙江大学を卒業し、ZTEに入社。ZTEの上海R&Dセンターに勤務。2006年から2011年までは現地法人ZTEラテンアメリカの社長を務めた

 3Gの次世代に位置づけられるLTEサービスが日本、北米、欧州などで開始されており、着々とエリア化が進んでいる。中でも日本、欧州、北米の3つを「重要な市場」とワン氏は話すが、特に重視しているが日本と北米だという。「日本におけるLTE事業の投資は欧州全体を上回る。欧州のスケールはそれほど高くない」(ワン氏)

 ZTEは上りと下りで異なる周波数帯域を使うFDD方式の「FDD-LTE」、上りと下りで同じ帯域を使うTDD方式の「TD-LTE」に対応する基地局を開発しており、「LTE関連の特許を35個保有している」(ワン氏)という。ワン氏は「ZTEのアドバンテージは、業界で初めてSDR(Software Definede Radio)をベースとしたプラットフォームを発表したことだ」と続ける。SDRではソフトウェアをアップデートすることで、ハードウェア(基地局装置)を変えることなくGSM、UMTS、CDMA2000、TD-SCDMA、FDD-LTE、WiMAX、TD-LTEといった複数の通信方式に対応できる。例えばこれまで3Gサービスを提供していた通信事業者は、基地局装置を変えずに3Gと4G(LTE)サービスが提供可能になる。

 ZTEはFDD-LTEとTD-LTE、どちらに重きを置いているのだろうか。現時点で世界におけるLTEの主流はFDD方式であり、ZTEとしてはTD-LTEとFDD-LTEどちらの基地局も開発していく。「FDD-LTE基地局はドイツテレコムやフランステレコム、(スペインの)テレフォニカなどの通信事業者に提供している。実証実験もしており技術的な評価が高い」とワン氏は話す。ただ「TD-LTE基地局の契約数と市場シェアはZTEが世界1位」と同氏が話すように、同社のインフラに対する投資額はTD-LTEの方が大きいという。またワン氏はTD-LTEとFDD-LTEは「1つの方式には統一されない」とし、2方式が今後も共存するとの考えも示した。

photophoto ZTEは3Gと4G(TD-LTEとFDD-LTE)に対応した基地局を供給している

世界初のTD-LTE/FDD-LTE対応基地局を開発

 日本ではTD-LTEと100%互換性のあるソフトバンクのAXGP向け基地局も、ZTEが開発している。「ソフトバンクのAXGPネットワークもZTEにとって重要なビジネスだ。日本のデータサービスの成長スピードは速く、ソフトバンクのネットワークはZTEにとって世界的にも規模が大きい」とワン氏は話す。さらに、ZTEは世界初のTDD/FDDデュアルモードの基地局を、スウェーデンの通信事業者・Hi3Gに供給している(外部リンク参照)。デュアルモードにするメリットは、TD-LTEとFDD-LTE基地局を個別に建てるよりも安いこと。また基地局装置とアンテナをTD-LTEとFDD-LTEで共用できるので、「(TD-LTEとFDD-LTE)2つの基地局を設置するほどのスペースがない場所に設置しやすくなる」とワン氏は話していた。ソフトバンクモバイルは2012年末にFDD-LTEサービスの開始を予定しているが、ここでZTEのデュアルモード対応基地局が採用されるのだろうか。ワン氏は「ソフトバンクモバイルが決めることだが、選ばれるなら喜んで作りたい」と述べるに留めた。

「Grand X LTE(T82)」はTD-LTE/FDD-LTEをサポート

 ネットワークだけでなく、ZTEは端末についてもTD-LTEとFDD-LTE両方をサポートしたものを開発している。同社は2011年にスウェーデンのHi3G向けにTD-LTEとFDD-LTE両対応のモバイルWi-Fiルーターを投入し、スマートフォンでは6月に発表した「Grand X LTE(T82)」がTD-LTEとFDD-LTE通信に対応している。Grand X LTEのTDD/FDD対応はQualcommのチップ「Snapdragon S4」によるところが大きく、「まずはFDD-LTE対応版を開発している」(ワン氏)という。なおLTEの周波数は国によって異なるが、周波数のサポートは「ソフトウェアで対応できる」(ワン氏)とのこと。

 日本では先述のとおり、ソフトバンクモバイルが2012年内にFDD-LTEサービスの提供を予定しているほか、年内にはAXGP対応スマートフォンの投入も明言している。ワン氏は「TD-LTE対応のスマートフォンは日本で発売したい」と述べており、TDDのみ、またはTDD/FDD対応のGrand X LTEがソフトバンクから登場する可能性がある。ワン氏は「一番求められているのはスマートフォンだ。Wi-Fiルーターのみでは通信事業者はあまり収益を上げられない」とも話し、端末事業ではあらためてスマートフォンに注力する姿勢を強調した。

 TD-LTE/FDD-LTE対応のデュアル端末では、ネットワークはどのように切り替えるのか。ワン氏によると、信号の強さや品質など、無線の状況を見ながら自動で切り替わるという。またユーザーにとってTD-LTEとFDD-LTEどちらで通信をしても、速度などの「差分はあまりなく、違いを意識することもあまりない」とした。

 日本では2012年6月には290万契約を突破するなど好調のWiMAXも、世界的な規模はLTEほど大きくはない。「WiMAXについてはどう思うか」と問われると、ワン氏は「全体的にWiMAXへの投資は減っている。WiMAXとTD-LTEは周波数帯が同じなので、ZTEの正規のソリューションとして、WiMAXからTD-LTEに基地局をアップデート(移行)することもできる」と説明。WiMAXとTD-LTEは共存するのか、それともTD-LTEへ統合されるのかは興味深いところだ。


 TD-LTEとFDD-LTEそれぞれに対応する基地局や端末、1台で2方式をカバーするハイブリッド製品を開発することで、事業者の求める通信方式に対して柔軟に対応できる。「顧客(通信事業者)へのカスタマイズ」を重んじるZTEにとって大きな強みといえるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  3. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  6. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  7. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  8. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  9. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
  10. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年