auブランドを愛してほしい――未来の携帯電話を創造する「au未来研究所」の狙い神山健治監督のアニメも公開

» 2013年12月12日 18時11分 公開
[田中聡,ITmedia]

 未来と通話ができる携帯電話が、今後登場するかも? KDDIが12月12日に「au未来研究所」にて公開した、神山健治監督のオリジナルアニメーション「もうひとつの未来を。」から、その可能性を感じることができる。

au未来研究所とは?

 au未来研究所は、KDDIが未来の携帯電話開発に向けた活動をするために、Web上(http://aufl.kddi.com/)に開設したオープンラボラトリー。11月6日から展開している。英語名「au unlimited future laboratory」の頭文字から「A.U.F.L」とも呼ばれる。ユーザーはFacebookかTwitterと連携させることで、研究所員になれ、au未来研究所のコンテンツを閲覧できる。

photophotophoto au未来研究所(A.U.F.L.)の概要。12月10日時点で、7600人の“所員”が集まった

 au未来研究所(A.U.F.L.)のコンテンツはPCのデスクトップをイメージしたデザインになっており、所長や研究員から届く「メール」、研究員たちとの会話を見られる「チャット」、未来研究所に置かれている設備の「極秘資料」、先述した「ビジュアル開発」を閲覧できる。「未来ニュース」では、「最後のガラケー、生産終了」「業界最速!auなら下り最大4『ペタ』」など、2019年のニュースをチェックできる。こうしたネタコンテンツも定期的に更新するそうだ。

photophoto au未来研究所のトップページにあるPCのモニターをクリックし、TwitterかFacebookを連携させて研究所員になると、各種コンテンツを閲覧できるようになる
photo 監視モニターはアニメの世界にも登場する
photophotophoto 2019年の“未来ニュース”からも未来を垣間見られる

未来の携帯電話のアイデアを募集中

 現在、au未来研究所で展開しているテーマは「1.自ら育つ携帯電話」「2.未来が見える携帯電話」「3.“未来の携帯電話”アイデア開発」の3つ。1はKDDI研究所が実際に研究を進めているテーマで、実際にその成果も報告している。2は後述するアニメーションのテーマとなる。

 そして3では、未来の携帯電話に関するアイデアを、研究所員となったユーザーから募集している。お題は「2020年に発明される、未来ケータイとは?」。集まったアイデアは実際の携帯電話開発に役立てており、バーチャルとリアルが連動した取り組みとなっている。投稿はau未来研究所の「オープンラボ」→「アイデア投稿」から行える。すでに投稿は約200件に上るという。

 投稿したアイデアをもとに、プロダクションIGのアニメーターがスケッチを描き、研究員のコメントともに公開。「感覚を伝える、伝わるケータイ」では、脳波を読み取って、ユーザーが思っただけで目的の操作をする、落ち込んでいるときに明るい曲を再生してくれる、という内容が紹介されている。スケッチにはKDDI研究所の山岡所長のハンコが押されているなど、芸が細かい。これらのスケッチは、現在14種類が公開されており、「オープンラボ」→「ビジュアル開発」から閲覧できる。

 ユーザーがアイデアを考え、プロダクションIGや(後述する)スティーブンスティーブンがアイデアを膨らまし、KDDI研究所が具現化する――という三位一体の関係によって、au未来研究所は成り立っているわけだ。

photophoto au未来研究所のテーマは3つ(写真=左)。ユーザー、技術開発のプロ、技術のプロたちが三位一体となって活動する(写真=右)
photophoto ユーザーが投稿した未来の携帯電話に関するアイデアを、プロダクションIGがスケッチに落とし込む
photophoto 「オープンラボラトリー」からアイデアの投稿や閲覧ができる

「auブランドを愛してほしい」という思いでスタート

photo KDDIの塚本氏

 そもそもKDDIがau未来研究所を始めた狙いはどこにあるのか。12月10日にメディア向けに開催した説明会で、KDDI 宣伝部 担当部長の塚本陽一氏が語った。このプロジェクトの狙いは、au未来研究所のプラットフォームを通じて、KDDIとユーザーがより近い関係性を築いていくことにあるという。「auというブランドを愛してもらいたい。愛されるブランドにしたいという思いから、このプラットフォームを立ち上げた」と同氏は話す。

 塚本氏は「通信業界は非常に特殊な業界」だと考え、その理由の例に「iPhone」を挙げる。「ビール業界ではキリンが『一番搾り』、アサヒが『アサヒスーパードライ』(という異なるブランド)を持っていて競合しないが、iPhoneはKDDIだけでなく、ソフトバンクやドコモも1つのブランドとして持っている。最後は論理的に考えることを超えて、『auっていいよね』『KDDIが好きなんです』という関係性を、どうやって作っていけるかが重要」と話す。auを愛してもらうためには「広告だけでは足りない」と考え、継続的なユーザー接点を持つことで、auに対して愛着を持ってもらう。それがブランド力向上につながる――というわけだ。

 このau未来研究所は、単なるバーチャルなプラットフォームではなく、KDDI研究所の“付帯組織”として展開しているのが大きな特徴だ。「コーポレートのリリースを出したように、どこまで本気で取り組んでいるかの哲学や思いを形にした。KDDI研究所の取り組みとシンクロさせることで、リアリティーを追求している」と塚本氏は力を込める。Web上のコンテンツにも登場する4人の研究員は、実際にKDDI研究所で勤務しており、未来研究所は兼務という形で参加している。

photophoto KDDIの狙い(写真=左)au未来研究所のメンバーは、実在するKDDI研究所員が兼務している(写真=右)

フィクションとノンフィクションの関係性が崩れたアニメ

 そんなau未来研究所の取り組みを具現化するためにKDDIが協業しているのが、スティーブンスティーブン(STEVE N' STEVEN)だ。同社は、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが、アニメーションの企画・制作ノウハウを用いたコンサルティングを行う会社。古田彰一氏と共同CEOを務めるアニメーション映画監督の神山健治氏が、au未来研究所の研究仮説をもとにしたオリジナルアニメ「もうひとつの未来を。」を手がけ、12月12日に“ドキュメンタリームービー”としてau未来研究所のWebサイト上で発表。アニメは研究所員が「極秘資料」の「記録映像」から視聴できる。主人公が携帯電話で未来の自分と会話するシーンなどが描かれており、未来の世界を垣間見られて面白い。なお、アニメ制作はプロダクションIGが担当している。

photophotophoto au未来研究所やアニメのナビゲーターを務める「フュート」(写真=左)。城戸大助と水絵ゆうの2人が主な登場人物。KDDI研究所のメンバーも登場する(写真=中)。未来と通話をしているシーン(写真=右)
photo アニメ映像には4つのサブウィンドウが表示され、登場人物や研究所施設などの情報をチェックできる

 説明会ではこのアニメを一足早く試聴できたが、5.1chの環境下ということもあり(アニメも5.1chの劇場クオリティで制作しているとのこと)、爆発音などの迫力は、まさに映画のようだった。スティーブンスティーブン CEOの古田氏によると、アニメは全3話で構成され、「2014年2月をめどに2話、そこから間を空けずに3話を配信する予定」とのこと。神山監督といえば、「攻殻機動隊 S.A.C.」「東のエデン」を手がけたことでも知られる。現在放映されている第1話は7分という短い内容だが、ファンは要注目の新作といえる。

 アニメのストーリーはau未来研究所のコンテンツとも連動しているので、ぜひこの目で確かめてほしい。2話の公開に先立って、物語のヒントが得られる仕掛けも用意している。

photophoto 電話をかけて2話のヒント(極秘情報)を入手できる
photo スティーブンスティーブン CEOの古田氏

 古田氏は今回の作品について「アニメの立ち位置が非常に面白い」と話す。「アニメはフィクションだが、今回はA.U.F.L.(au未来研究所)という発信母体がある意味フィクションの要素を兼ねている。本当の研究所の中でA.U.F.L.というバーチャル組織が存在しているかのように、描いている。企業さんが発信する情報や物語はノンフィクションであって、アニメのエンタメはフィクションである――という関係性が今回崩れる。ウソのようで本当、本当のようでウソでもある、アニメとしても新しい立ち位置の作品だと考えている」


photophoto アニメーションについて(写真=左)。アニメの中では、埼玉県にあるKDDI研究所が実際に描かれており、東京にあるKDDI本社のビルも、少しアレンジを加えた形で描かれている(写真=右)

 今後は、12月下旬に未来の携帯電話に関する研究案件を決定し、2014年2月中旬に研究成果を発表する予定。2月以降の活動については、「開発したプロトタイプをどう発展させていくか、今回のタイミングでは断念したアイデアを採用するなど、いろいろな選択肢があるので、生活者(ユーザー)のご意見をいただきながら考えていきたい。2月で終了ではなく、3月以降も継続させたい」(塚本氏)とした。

photo 今後の展開

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