“iモード対応”に意義がある、Androidにも負けない――「N-08B」で狙う2台目市場開発陣に聞く「N-08B」(1/3 ページ)

» 2010年11月02日 23時08分 公開
[田中聡,ITmedia]

 NECカシオモバイルコミュニケーションズ製の「N-08B」は、NTTドコモの2010年夏モデルでは唯一PROシリーズに属するモデル。約4.6インチのフルワイドVGA液晶にQWERTYキーボードを搭載し、さらにiモードも利用できるという、ドコモの中では異色のケータイといえる。

 QWERTYキーボードにはキーピッチ12.7ミリの大型キーや、独立した数字キー、キーが垂直にストロークする「パンタグラフ構造」を採用するなど、ノートPCに迫る使い勝手にこだわった。最大3つのアカウントを登録できるPCメール機能や、テキスト形式(.txt)のファイルを作成できる独自のエディタも用意し、ビジネスパーソンに訴求する。

photophoto 「N-08B」

 N-08Bはどんな狙いで開発されたのか。NECカシオモバイルコミュニケーションズのNTTドコモ事業部 商品企画グループ マネージャー 中川修二氏、NTTドコモ事業部 商品企画グループ 青木規至氏、第一商品開発本部 マネージャー 渕澤敬氏、第一商品開発本部 主任 藤野庄三氏に話を聞いた。

photo 左から渕澤氏、青木氏、藤野氏

なぜiモード端末として出したのか?

photophoto NECカシオモバイルコミュニケーションズ NTTドコモ事業部 商品企画グループ 青木規至氏(写真=左)と同社 NTTドコモ事業部 商品企画グループ マネージャー 中川修二氏(写真=右)

―― N-08Bのターゲットを教えてください。やはり2台目として使ってもらうことを狙ったのでしょうか。

青木氏 はい、ビジネスマン向けに2台目を狙ったモデルです。例えば、出張したビジネスマンが、PCを開かずにメールで業務の報告をするといった利用シーンを考えています。

中川氏 「なぜiモード端末としてN-08Bを出したのか?」といったことは、よく質問されます。ただ、最も重要なことは、ケータイを持ち歩く人たちが実際にどんな機能を使うのかということです。ケータイではメールとブラウジングができれば十分という人が多いので、(Androidなどの)オープンOSなどである必要があるとは限りません。ケータイで培った技術を活用して(スマートフォンと)同じことができないかを考えました。

 まず訴求ポイントに考えたのが、ケータイを外で使うビジネスマンが、バッテリーの寿命を1日気にせずに持ち歩けることです。従来のケータイ向けプラットフォームを使う方が消費電力を抑えられるので、スマートフォンよりもバッテリーの寿命が長くなります。

―― 確かに、連続待受時間の約1000時間と連続通話時間の約380分は長いですね。なぜスマートフォンよりもバッテリーが持ちやすくなるのでしょうか。

渕澤氏 例えばAndroidでは、それぞれのアプリがバックグラウンドで起動して通信をすることが多いので、ケータイよりも通信頻度が高くなります。弊社がこれまで開発してきたWindowsCE端末やPCと比べても、ケータイの方が4分の1から5分の1くらいの消費電力で済みます。

photo 卓上に置いて快適にワンセグを視聴できる

中川氏 そもそもケータイとそのOSは、長時間使用することを想定して開発されています。N-08Bでも、弊社が培ってきた技術を生かしているので、よほど酷使しなければ、1日や2日は軽く持ちますし、連続で使っても10〜16時間ぐらいは持つでしょう。メールやブラウザをよく使う人でも満足いただけると思います。ワンセグの連続視聴時間も5時間を実現しています。

―― なるほど。ケータイではディスプレイが消費電力の多くを占めると思いますが、そのあたりも工夫しているのでしょうか。

中川氏 N-08Bのディスプレイは4.6インチと大きいですが、(待機中の)アイドル電流を落とし、大容量のバッテリーを採用するなどして持ちやすくしています。電源回路はトライアンドエラーの連続なので、地味な作業の繰り返しですね。ケータイと同じような通信環境をPCで実現しようとすると、ものすごい電力を消費することになるでしょう。

青木氏 Wi-Fi機能はN-04Bと同等で、N-08Bをアクセスポイントモードとして使うこともできます。ただしN-08Bの方がバッテリーが長く持ちます。通常は、アクセスポイントモードで使っているFOMA端末のバッテリーが先に切れることが多いでしょうが、N-08Bはアクセスポイントモードでも5〜6時間は持つので、バッテリー切れを心配する必要はないでしょう。

iアプリもAndroidやiPhoneアプリに負けない

―― N-08Bをあえてiモードに対応させた理由を教えてください。

中川氏 スマートフォンの普及でアプリマーケットも増えていますが、そもそもドコモはiモードとJavaを使って、10年近く前から似たようなことができる環境にいました。ドコモではiモードユーザーが大半ですし、コンテンツも拡充しています。プッシュ型のメールはPCではできなかったことですし、iモードに対応することのメリットも高いです。iアプリの中にも、AndroidやiPhoneアプリに負けないコンテンツはあります。Javaアプリの普及と啓蒙の一助になればと思います。

―― 最近はAndroid端末も増えつつあります。

青野氏 「Androidで何をするのか」を考えたときに、アプリのダウンロードが挙げられますが、ドコモも昔からiアプリを提供しています。公式サイトの開発者でないとiアプリを作れないことが弊害でしたが、ドコモさんが今年の冬から始めるとされている、iアプリ向けのマーケットでは、個人の方でもiアプリを開発できる環境が実現すると聞いています。主要なアプリはiアプリでもカバーできるでしょうし、iアプリマーケットがこの先盛り返してくると期待しています。

 Android マーケットには膨大なアプリが配信されている一方で、アプリが多くて探しにくいというデメリットもあります。ユーザーにとって、選択肢が増えることが必ずしもいいとは限りません。やりたいこと(アプリ)が明確に提示される方が親切でしょう。

photo Twitterアプリ「jigtwi」も横向きのフル画面で利用できるほか、ダイヤルキーを使ったショートカットにも対応している

―― N-08Bは横画面での操作が基本ですが、既存のiアプリやiモードサイトは横画面表示に対応しているのでしょうか。

中川氏 なるべく大画面で表示するようにしていますが、コンテンツのサイズが限られたものについては、(スペースの空いた)縦画面表示となります。レイアウト設計には力を入れていますが、iモードサイトを無理やり横長で表示すると、違和感が生じる場合もあります。この点はCP(コンテンツプロバイダー)さんと個別に話していますが、横画面対応いただけるところは増えています。(Twitterクライアントの)「jigtwi」も横画面に対応しています。

渕澤氏 ハードウェアはもちろんですが、横画面に対応したUI(ユーザーインタフェース)をどのように作るかが一番苦労しました。横表示について、今回はテキストエディタやPCメールなどを優先しました。ただ(全画面の)横表示でないところも、空いた部分にガイドを入れるなどの工夫はしています。

―― モーションセンサーを利用し、端末を傾けて縦画面にするといったことはできるのでしょうか。いわゆる“ブックスタイル”でもメールやブラウザが見られると面白そうです。

渕澤氏 モーションセンサーは備えておらず、表示は横画面のみに固定されます。

photophoto メニュー画面は第2階層までは横表示に対応しているが、第3階層では右半分にメニュー、左半分にガイドが表示される
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