パネルディスカッションでは、SIMロック解除についても触れられた。北氏は「端末と回線が分離された場合、販売チャネルはおのずと変わっていくと思うが、どうなっていくかを聞きたい」と口火を切った。
松谷氏は「携帯電話にさまざまな機能を載せることで通信料が発生する。そのため、端末と回線をセットで販売してロックをかけることで、端末の機能を向上させてきた」と話す。一方で、データ通信端末やモバイルWi-Fiルータは、PCや接続可能な機器を自由に選ぶことができ、接続した機器の機能に依存していないため、ある意味で端末と回線が分離されたものだという見解を示した。「端末の機能に依存しなくても通信は発生し、通信料が入ってくることが分かった」。
ドコモショップで実施したPCとデータ端末のセット販売については、「当初はショップでも困惑があったが、量販店とは違う層のお客様に購入いただいている」と振り返った。また、SIMロックフリー端末を販売する可能性は「今の段階では実際どうなるかは分からない」と明言を避けた。
auはドコモやソフトバンクとは通信方式が違うため、現時点でSIMロックを解除するメリットはほとんどない。宮倉氏は将来的な展望として「現在やっているauマイプレミアショップなどの会員制度でお客様とコミュニケーションを取っていく。今からほかの商品を販売することで、花開くときが来ると思う」と語り、今後さまざまな商品を扱うことで、「用途やデバイスに応じたサービスパッケージや料金との組み合わせにしっかり取り組んでいく」と話した。
端末と回線を分離することで、1回線で複数の端末を利用するか、現在のように1回線で1端末を利用するかといった選択肢が生まれる。松谷氏は「純増数を考えると回線契約が多い方がいいのかもしれないが、あまり固執はしていない」、宮倉氏は「マルチデバイスが増えることで、お客様にとってはシームレスにつながることが自然であり、今後広がっていくサービスをどう差別化していくかが重要」と話した。
今後マルチデバイス化が進むことでショップの負荷も増大するのでは、という北氏の問いに対し、松谷氏は「ショップさんの負荷は今に始まったことではない。負荷軽減については常に考えていかなければならない」と話す。ドコモではショップ向けのサポートセンターの充実を図り、その中で「スマートフォンケア」という特殊なセンターを設けた。「Xperia販売当初は応答率がかなり低かったので、この反省を今後に生かしたい」。
宮倉氏は「お客様に負荷を与えることがショップスタッフの負荷になるという意見もある。待っている間に我々の商品で楽しんでいただくなどの解決策に取り組むことが必要。やるべきことはたくさんあるので、真剣に取り組んでいきたい」と答えた。
続いて、北氏は「専門分野のスタッフ育成や専門分野に特化したショップを作るなどの取り組みはあるのか」と質問。松谷氏は「すでにそうした試みを取り入れている店舗はある。この“専門店”を具現化したドコモの「スマートフォンラウンジ」は「アップルストアを参考に、我々もそうした取り組みにチャレンジすることを目指した」(松谷氏)という。宮倉氏は「専門分野に長けたスタッフの育成やカウンターを作っていくことを全ショップで行うのは現実的ではないので、auショップに行けば何か解決してくれるという場所にすることが大切だ」と述べた。
携帯電話のビジネスモデルが垂直統合型から水平分離型になるにつれ、ショップでの対応にも影響が出る。例えば、ドコモのSIMフリー端末にソフトバンクのSIMカードが入ったケータイを持ってユーザーが来店するようなケースも考えられる。松谷氏は「預かって修理するなどの対応はするが、ドコモのSIMが入ってないとお客様の情報が我々には分からない。ただ、家電製品は名前と住所を聞いてから預かるので、そういった対応になるのかなと思う」と少し困惑しながら答えた。
宮倉氏は「そこはドコモさんとソフトバンクさんで話し合っていただくのが一番」と会場の笑いを誘った。水平分離型で携帯電話の販売を行っていくには、これまでのようにキャリアとメーカーの連携に加え、キャリア間の連携も重要になってくることがうかがえた。
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