スマホの増加、SIMロックフリーで携帯ショップはどうなる?──販売店ビジネスフォーラム(1/2 ページ)

» 2010年09月29日 10時20分 公開
[2106bpm(K-MAX),ITmedia]
photo パネルディスカッションの様子。左から野村総合研究所の北俊一氏、NTTドコモの松谷正輝氏、KDDIの宮倉康彰氏

 スマートフォンを初めとするマルチデバイス化やLTEの導入などにより、携帯ショップを取り巻く環境は大きく変わろうとしている。販売店は端末の契約に直結する場所であるだけに、通信事業者にとって重要なポジションに位置付けられる。通信事業者は、どのような姿勢でショップを運営しているのか。7月14日に開催された、ワイヤレスジャパン2010の販売店向けのビジネスフォーラムの内容をもとに見ていこう。

 同フォーラムの「モバイルキャリアのチャネル担当者パネルディスカッション」では、NTTドコモ 販売部 代理店営業室 室長の松谷正輝氏とKDDI コンシューマ営業企画本部 コンシューマ営業企画部 部長の宮倉康彰氏をパネラーに迎え、野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部 上席コンサルタント 北俊一氏の質問に答える形で、各キャリアの現在の販売チャネルや、今後の携帯電話販売のあり方を語った。

 北氏は冒頭で「今回のパネルディスカッションでは、あくまで個人的意見として話をうかがいたい」と前置きし、すでに実施している施策以外の部分は「各キャリアを代表した発表や意見ではない」旨を強調した。なお、当初はソフトバンクモバイルの担当者も参加する予定だったが「長期的な将来を見据えたビジョンを策定中であり、現時点においても流動的な要素が多く、例えパネラー個人の意見としても社外へ発表する段階ではないため参加を差し控える」という理由で辞退した。

“電話機”以外も訴求する――ドコモ

 ドコモはドコモショップ、量販店、一般店を中心とした対面チャネルと、ドコモオンラインショップやWebチャネル、コールセンターを中心とした非対面のチャネルを紹介。今後は対面・非対面の各チャネルをうまく連携させていくことが必要であるとともに、対面販売を重要視している点を強調した。

 2010年の3月末時点で全国に2390店舗あるドコモショップは、販売や利用促進、囲い込みを担う質の高いアフターサービスを提供し、ドコモのブランド向上にもつながる重要な役割を担う。量販店や一般店では、集客力を生かした他キャリアからのポートインや、データ通信端末やフォトパネルなどの訴求、そうした商品に興味のある層への訴求も重要なポイントになる。

photophoto 現時点での非対面チャネルは「ドコモオンラインショップ」やドコモeサイト、メール、FAQの掲載や案内による「Webチャネル」「コールセンター」など。将来的には対面チャネルとの連携を強化をする(写真=左)。全国に2390店舗(2010年3月末現在)を展開するドコモショップは、ドコモブランドを向上させる重要チャネルとして位置付けられる。販売比率は全国では68%、関東甲信越では53%がドコモショップが占め、地域によっては80%以上のところもある(写真=右)
photophoto 量販店と一般販売店については、他社からのポートインを促進する役割のほか、データ通信端末やフォトパネルなど電話機以外の商品の拡販も担う(写真=左)。以前は量販店や一般販売店が販売を行い、アフターサービスはドコモショップでという考え方もあった。だが、新販売モデルの導入後、本体の価格に極端な差がなくなったため、ドコモショップでもしっかり販売し、質の高いアフターサービスやアフターフォローを行うことが重要であることが分かってきたという。その結果、解約率の低下にも貢献している(写真=右)

“総合通信ショップ”を目指す――KDDI

 KDDIはauショップを中心に現状の販売チャネルを解説。MNP以降の販売台数は減っているものの、来客数の増加によるauショップの重要性、それに伴う来店者の要望に応えられるよう、店舗のリロケーションや販売員の資格制度、店舗独自の施策も行えるauマイプレミアショップといった取り組みを実施している。今後はユーザーの要望に応えていくだけではなく、生活をより便利に楽しくする提案をする“総合通信ショップ”を目指す。

photophotophoto auショップの店舗数の推移。MNPが開始された2006年に一気に店舗数を拡充し、全国で2500店舗を超えた。その後は店舗数に大幅な変化はないものの、改装や移転を経て数を維持している(写真=左)。MNP以降は端末の販売数は減っているが、auショップへの来客数は増えており、環境変化に伴ってauショップの重要性が増してきている(写真=中)。接客などのクオリティを高める取り組みとして、「集客力、快適性の向上」「コンサルティングの強化」「auショップの魅力化」に注力している(写真=右)
photophotophoto KDDIが独自に実施しているスタッフ向けの資格制度では、3つの制度を導入している。「プロスタッフ」は商品知識、「ハートフルスタッフ」は対応力、さらに高いスキルを認定する制度が「リーディングスタッフ」となる(写真=左)。auマイプレミアショップは開始して約1年で会員数が1000万人を突破。会員にはauショップからメールが届くほか、店舗によっては地元企業や店舗と連携してクーポンの配信などを行っている(写真=中)。今後はauサービスに加え、固定回線のサービス、WiMAXやじぶん銀行なども連携させた総合通信ショップを目指していく(写真=右)

 ドコモとKDDIどちらもショップの位置付けを重視していることは言うまでもない。ただ、ドコモは既存の顧客確保、KDDIは新規の顧客獲得に注力している印象があり、市場シェア1位のドコモと2位のKDDIのスタンスは異なると感じた。

地域に根付いたショップ運営も必要

 現状の販売チャネルについて、「ES(従業員満足度)→CS(顧客満足度)→利益」につなげるにはどうすべきか、という質問が北氏から両者に投げかけられた。

 ドコモの松谷氏は「通信キャリアにとっては、お客様が解約しないことが利益につながる」とした上で、「利益だけなら短期間で数を多く売れば得られるが、解約をしない売り方をするためには、時間をかけて販売しなければならない。そうした意味でもCSと利益はセットであり、我々通信キャリアとしては、個々の代理店さんがそうした経営ができるよう支援していくことが重要」と述べた。

 KDDIの宮倉氏は「ESを基点にするからには、スタッフ目線で考えることが重要」とし、「まずは“お店を楽しくしよう”という分かりやすいところから始めていく。次に“人を集めよう”といったモチベーションがわいてくるのではないかと思う」と述べた。

 両社とも過去から現在に至るまで、それぞれの専売ショップについては試行錯誤をしながら発展的スパイラルを繰り返している。例えばキャリア自体の全国統一化に伴い、ショップも外観や運営方針などが統一された。松谷氏は「これまで地元に根付いた運営方法や施策がなくなってしまったのは反省すべき点。ある程度はショップ独自の運営を行い、個々のショップのカラーも必要だと気付いた」と振り返る。

 キャリアは資格制度などを整備することで、基礎となる部分は一定の統一化と均一化を図り、その先は店舗独自の工夫や運営をしていくことが必要、という見解は両者とも同じだった。また、「資格を持っている先輩スタッフを目指して頑張っている人もいる」(宮倉氏)という。

LTEやマルチデバイス化がビジネスチャンスを生む

photo 携帯電話市場のロードマップ

 続いてショップの将来について、北氏が「今後の携帯電話販売のチャネルに影響を与えるものは何か」と質問すると、松谷氏は「LTE導入」、宮倉氏は「iPad登場によるマルチデバイス化」を挙げた。

 ドコモが2010年12月に導入予定のLTEについて、松谷氏は「さらに大容量の通信ができることで、何が可能になるかがカギになる」とみている。宮倉氏は「マルチデバイス化をモバイル市場の第2の成長ととらえると、KDDIが固定網、WiMAX、Wi-Fiなどシームレスな接続環境を構築することで、ビジネスチャンスが生まれるのでは」と話した。

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