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» 2013年01月31日 18時00分 UPDATE

山根康宏の中国携帯最新事情:第6回 Google要らず、中国スマホで使われる国産Webサービス (1/2)

中国で販売されているAndroidスマートフォンにはGoogle系のサービスが搭載されていない。しかし中国の消費者は不自由なくスマートフォンを日々使いこなしている。では中国ではどのようなサービスが利用されているのだろうか?

[山根康宏,ITmedia]

 Androidスマートフォンが市場を独占するまでになった中国。だが販売されている端末の内部を見ると、大手メーカーの同じモデルでも中国販売品と海外品で異なる点があることに気づく。それはGoogle系サービス搭載の有無だ。Googleが撤退した中国市場では国産のWebサービスが急成長しており、もはやGoogleなしでも不自由を感じさせないほどなのである。


Googleと中国の微妙な関係

 中国では政府によりネット上の検閲が行われており、海外の一部のWebサービスの利用や特定ワードの検索ができない状況になっている。これに対してインターネット上の言論の自由を推進するGoogleは、その撤廃や制度の改善を求めていたものの、中国政府との交渉が合意に至らず、2010年1月22日に中国市場から撤退。またそれとは別に、中国から海外のGoogleサービスへのアクセスがたびたび遮断されることも続いている。

 だが中国のスマートフォン市場はGoogleなしでは成り立たないのが実情だ。中国の調査会社・易観国際によると、2012年第3四半期、中国のスマートフォンOSのシェアは実に90%がAndroidだった。また国産スマートフォンメーカーの製品もほぼAndroid OSを採用しており、Googleの基本OSなしでは製品開発もままならない状況になっている。Webサービスでは政府と微妙な関係が続いているGoogleも、スマートフォンOSに関しては市場をほぼ独占しているのだ。

 とはいえ、AndroidスマートフォンはGoogleアカウントなしではフルに活用することは難しい。またFacebookやTwitterなど海外のSNSサービスのアクセスが遮断されているとなれば、中国国内でスマートフォンを使うメリットが損なわれる。実際、中国に赴任したり旅行に出かける外国人からはこの中国の検閲システム、いわゆる「Great Firewall」をいかに回避するかが、深刻な問題になるほどである。しかしその一方で、多くの中国人たちは日夜スマートフォンの画面に釘付けになっており、その姿は諸外国と変わらない。

 中国の政府系非営利機関の中国インターネット情報センター(CNNIC)が2013年1月上旬に発表した「第31期・中国のインターネット発展状況に関する統計報告」によると、2012年末の中国のインターネット利用者は5億6400万人。またモバイルインターネットの利用者数は4億2000万人に達している。モバイル利用の多くがスマートフォンからの利用であることも考えると、中国人にとってWebサービスはもはや無くてはならない存在になっていると言えるだろう。では中国ではどのようなWebサービスが使われているのだろうか?

photophoto 中国のスマートフォンOSの割合。実に90%がAndroidだ(出典:易観国際)(写真=左)。モバイルインターネット利用者は4億2000万に達する(出典:CNNIC)(写真=右)

Google PlayがなくてもOK、アプリマーケットも複数から選べる

 SamsungやHTCなど海外メーカーの最新スマートフォンは、中国でも人気が高い。だが中国で販売されているそれらの製品は、他国で販売されている同じモデルと大きく仕様が異なる点がある。それはGoogleサービスの非搭載だ。中国で販売されているAndroidスマートフォンにはGoogle検索やGmailといったおなじみのアイコンが見当たらず、アカウント設定にはGoogleの項目がない。GoogleのOSを使いながらGoogleサービスが使えないという不思議な状態で販売されているのである。

 ここで問題になるのがアプリのインストールだ。中国で販売されているAndroid端末は、Googleアカウントが利用できないだけではなく、Google Playも搭載されていない。そのためAndroid向けのアプリを入手する公式な手段が閉ざされてしまっている。ところが中国には独自のアプリマーケットの提供元が複数あり、独自のマーケットアプリを各メーカーの端末にあらかじめ提供しているのだ。また通信事業者もアプリストアを提供しており、事業者販売端末は初期状態のマーケットとしてプリインストールされている。

 その事業者の独自マーケットは、China Mobile(中国移動)が「Mobile Market(MM)」、China Unicom(中国聯通)が「Wo Store(沃商店)」、China Telecom(中国電信)が「eStore(天翼空間)」を展開している。事業者運営だけに違法ファイルやウイルスのチェックが常に行われており、ほかのマーケットより安心して利用できるよう配慮がされているという。一方、サードパーティによるアプリマーケットも多く、有名なところでは「HiAPK(安卓市場)」「AppChina(應用匯)」「91手机助手」などがある。その他にも端末メーカーが独自にアプリマーケットを提供しているところもあるなど、中国ではマーケットアプリというものが多数存在している。なお、海外のアプリが登録されていないこともあるが、中国国内のWebサービスなどは各社のマーケットにほぼ登録されている。

photophoto 中国販売のAndroid端末にはGoogleサービスやアカウントの利用ができない(写真=左)。独自のマーケットアプリから、各種アプリのインストールが可能だ(写真=右)
photophoto China MobileのMobile Market(写真=左)。端末メーカーCoolpadによるアプリマーケット(写真=右)

検索からSNSまで、何でもそろう中国のWebサービス

 では、中国ではどんなサービスが利用されているのだろうか? ここでHitwiseによる「2012年中国Webサービス滞在時間ランキング」を見てみよう。これはPCも含む、中国全体のWebサービスの滞在時間のトップ10を調査したものだ。この調査結果は、中国でどのWebサービスがよく使われているかを図る1つの指針になる。上位10のサービスは以下の通りだ。

2012年中国Webサービス滞在時間ランキング
順位 サービス名 ジャンル
1位 Baidu(百度) 検索
2位 Taobao(淘宝) ショッピング
3位 Weibo(新浪微博) SNS
4位 Youku(優酷網) 動画
5位 Baidu BBS(百度貼巴) BBS
6位 Qzone(QQ空間) ブログ
7位 Tudou(土豆網) 動画
8位 QQ Mail(QQ電郵) Webメール
9位 百度知道 Q&A
10位 Renren(人人網) SNS

photophoto 中国のWebサービス滞在時間ランキング(出典:中国移動)(写真=左)。中国を代表する2大サービス、BaiduとTaobao(写真=右)
photophoto 動画共有の最大手2社は2012年に合併したが、サービスは別ブランドで継続している(写真=左)。SNSやBBSなどのサービスも充実している(写真=右)

 FacebookやTwitterへのアクセスが遮断されているとはいえ、この10位の中には海外でメジャーなサービスは一切含まれていない。だが、ここに挙げたサービスの利用だけでも、中国国内に住んでいる限り恐らく困ることはないだろう。百度で検索した商品を淘宝で購入、その状況を新浪微博で流しつつ優酷網で商品が届くまで使い勝手を動画でチェック。そして分からないことがあれば百度知道でネットユーザーに確認。このように海外ならGoogleのWebサービスを使うところが、中国では国内サービスだけで完結できてしまうのである。

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