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Microsoftがクラウドで目指す「AIの先にある世界」鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)

» 2016年10月04日 06時00分 公開
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MicrosoftのAI技術は企業にどのようなメリットをもたらすか

 Build 2016ではMicrosoft Cortana Intelligence Suiteの一部として発表された「Bot Framework」や「コグニティブサービス」だが、ナデラ氏の講演では機械学習やそれに伴うAIによってコンピュータの認識精度が高まり、よりインテリジェントなサービスが提供できるというサイクルが紹介された。

 顕著ですぐに活用できる例としては、「カスタマーサポート」の分野が挙げられる。B2C向けの応答サービスをBotで自動化することで、より応答性に優れたサービスの提供が可能になる。サポートでの応答事例の多くはこの自動化されたBotによりさばくことが可能だが、どうしても対応が難しい場合には専門のオペレーターへと対応が昇格し、適切な受け答えで問題解決にあたる。

 こうしたBotは人件費の削減が中心だと思われがちだが、実際には「応答性を高める」ことが最大の狙いであり、「待ち時間」を嫌うユーザーのニーズに応えることが主眼だ。ほかにも即適応できる応用分野があり、実際の各分野での顧客企業一覧が紹介された。

Ignite_10 カスタマーサポートをBotによる自動応答にするとレスポンスが向上する
Ignite_11 Botでの対応が難しい場合は、適時オペレーターの対応に切り替わる
Ignite_12 オペレーター側のインタフェース。対応に必要な資料が適時参照できる
Ignite_13 各分野でのAIやBotによる活用事例や顧客を紹介

 この自動応答BotはBuildでも紹介されたように、もちろんエンターテインメント分野でも有効だ。会場には元NFLのプロフットボール選手のディオン・サンダース氏が登場し、NFLとの提携で提供されているNFL Fantasy Football Botの事例が紹介された。

 これはSkypeのインタフェースを通じてFantasy Footballのゲームサービスが利用できる仕組みだ。選手のステータス確認やおすすめ情報、チームの変更を対話型インタフェースで行える。専用アプリを使わない点が特徴であり、例えば車を運転中に音声対話を使ってハンズフリーでゲームを楽しむといったことも気軽にできるだろう。

Ignite_14 元NFLのプロフットボール選手のディオン・サンダース氏を招いてのデモ
Ignite_15 Skypeのインタフェースを通じてNFL Fantasy Football Botとの対話によりゲームを進める

 Microsoftの機械学習というと、このようなBotやCortanaの応答、あるいはコグニティブサービスでの精度向上を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし実際には処理エラーの発生しやすいタッチパネルでのキーボード入力や、地図サービスでの最適なルート発見アルゴリズムなど、さまざまな分野で応用されている。

 ナデラ氏によれば、1450年にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷技術を確立するまでは背閉じの本は世界で3万冊程度しかなかったが、そのすぐ後には数百万程度にまで冊数が爆発的に拡大しており、これと同じ現象がコンピュータの世界にも起こりつつあるという。つまり、大量の情報を効率的に処理する手法として、こうした機械学習の仕組みが重要になるというのだ。

 これまでの機械学習というとCPUとGPUの組み合わせが一般的だが、より効率的な処理のためにFPGAを組み合わせた世界初のAIスーパーコンピュータをAzure上に構築したと同氏は説明する。既に5大陸15カ国にその仕組みが展開されており、こうしたAI的な処理がほぼリアルタイムで可能になるという。

Ignite_16 Azure上のシステムに従来のCPU+GPUに加え、カスタム処理を施したFPGAを導入することで、機械学習の処理速度をさらに向上させる
Ignite_17 「Azureは世界最初のAIスーパーコンピュータになった」とナデラ氏は宣言する
Ignite_18 Microsoft Research(MSR)でコンピュータアーキテクチャ部門のダグ・バーガー氏が手に持つのはFPGAのモジュール。これがAzureデータセンター内のサーバに導入され、機械学習処理の速度を大幅に向上させる

 壇上では従来型のサーバとFPGAを絡めたソリューションにおける「戦争と平和」のテキストをMicrosoft Translatorで翻訳した場合の処理速度を比較するデモが披露され、10倍程度の速度差があることが確認できた。

Ignite_19 FPGAを用いて行った「戦争と平和」の翻訳処理の時間比較。FPGAを使った場合は10倍の処理速度を実現している

 こうした仕組みがさらに一般化すれば、正確なリアルタイム翻訳が実現され、言語の壁を越え、世界中で会話が活発になる日も意外に近いのかもしれない。


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