KDDIが“トライブリッド基地局”を公開、基地局バッテリーの24時間化も進める

» 2013年03月02日 01時49分 公開
[田中聡,ITmedia]

 KDDIが3月1日、同社が運用している「トライブリッド基地局」に関するメディア向け説明会を開催。技術統括本部 技術本部モバイル技術企画部 企画グループリーダー 松石順應氏が詳細を説明した。

トライブリッド基地局や24時間バッテリーで停電対策

photo KDDIの松石氏

 トライブリッド基地局とは、太陽光パネルで発電された電力、深夜電力により蓄電池に充電された電力、商用電力の3つの電力を基地局に供給するもの。3つの技術を組み合わせたものを称する造語「トライブリッド」から付けたものだ。この基地局のメリットは、消費電力を抑えられること。松石氏によると、晴れていて十分な太陽光を取り込めれば、商用電源のみを使う基地局と比べて40%ほど消費電力が低いそうだ。

 トライブリッド基地局は2009年12月から“国内初”の取り組みとして試験的に導入し、2013年3月末までに全国100箇所の基地局に導入する予定。2009年12月の時点では11箇所にしか導入していなかったが、ここまで拡大した背景には、2011年3月の東日本大震災がある。震災時には多くの基地局が停波したが、KDDIの調べによると、その原因の77%が停電だった。トライブリッド基地局では蓄電池と太陽光発電も用いるので、停電で商用電源がストップしてもある程度の電力を確保できるわけだ。

photophotophoto 東日本大震災で基地局が停波した原因(写真=左)。トライブリッド基地局では通常の電力に加え、蓄電池と太陽光発電を使い分ける(写真=中)。トライブリッド基地局は2013年3月末までに100箇所に拡大する予定(写真=右)
photophoto 時間帯や天候に応じて“3つの電力”を使い分ける(写真=左)。トライブリッド基地局が設置されている場所の例(写真=右)
photophoto 地域別のトライブリッド基地局数(写真=左)。外観はこんな感じ(写真=右)
photo 24時間持つバッテリーを備えた基地局の数

 もう1つの停電対策として、停電時に用いる基地局バッテリーを24時間使えるよう増強する。「停電になると商用の電力が途絶えるので、基地局バッテリーが動くが、3時間強で復旧に駆け付けられないと、バッテリーが枯渇して基地局が停波してしまう。今回は基地局バッテリーが24時間持つように容量を増やしている」と松石氏は説明する。24時間で十分かという点については「十分すぎると思っている」と同氏。ただし、離島など1日で行けないような場所にある基地局には、すでに72時間持つよう増強したバッテリーを備えているそうだ。

 24時間バッテリーを備えた局は、2013年3月末で約2000局まで拡大し、今後もさらに拡大していく。KDDIによると、基地局バッテリーの24時間化は、現在4万局で対応可能とのこと。すべての基地局で対応すると当然コストがかさむので、「都道府県庁や駅など、災害時に被災した人が集まってくる場所を選んでいる」(松石氏)

photophotophoto
photophotophoto 基地局バッテリー24時間化までの流れ

 そのほかの取り組みとして、省電力型の基地局導入も進めていく。従来型基地局にある空調設備をなくし、装置を屋外に設置することで、スペースやコストを抑えられる。また、アンプ効率の改善を図るなど、無線機の消費電力を半分ほどにすることで、システム全体でも消費電力を40%ほど低減できるという。

 今後は、より広範囲をカバーできる「大ゾーン基地局」、持ち運びしやすい可搬型リチウムイオン電池、海上からサービスエリアを復旧させる船舶型の無線基地局も展開する。可搬型は「スーツケースに持って行けるリチウムイオン電池を開発しており、さまざまな環境下で現在トライアルをしている」(松石氏)という状況だ。船舶型基地局については、2012年11月に広島県呉市倉橋町海上で、海上保安庁巡視船「くろせ」に開設した実験試験局の電波を沿岸部で受信し、音声通話、データ通信の品質を測定するテストを実施。通話は「かなり明瞭で使える」と松石氏は手応えを話す。

photophoto 空調設備のない基地局や省エネ対策を施した無線機も導入する(写真=左)。可搬型リチウムイオン電池も試験運用中だ(写真=右)
photophoto 船舶型無線基地局への取り組みも進める

埼玉で77局目のトライブリッド基地局が運用開始

 その後、説明会を開催した埼玉県のKDDI春日部安全・技術訓練センターにて、トライブリッド基地局の運用開始セレモニーを実施。松石氏が商用電源のブレーカーをオンにし、無事に運用開始された。ここは77局目のトライブリッド基地局となる。トライブリッド基地局の電力をリアルタイムで表示するモニターから、商用電源、蓄電池、太陽電池からの電力値が確認できた。ここで供給された電力が無線機に送られる。

 この日は曇りだったので太陽光からの電力値は50〜70ワットと低かったが、「晴れている日は、ここの基地局は400ワットほどになり、40%〜80%ほどの電力を太陽光からまかなえる」(KDDI説明員)のは心強い。ここの基地局にはソーラーパネルが2枚あるが、4枚の局もある。パネルが増えれば電力も増え、4枚あれば800ワット流せることになる。「基地局の消費電力はだいたい1000ワットくらいなので、800ワットあれば8割をまかなえる」(同)

photophoto 松石氏がトライブリッド基地局の電源をオンに(写真=左)。左が無線装置、中央が蓄電池やトライブリッド制御装置などが保管されているボックス、右が商用電力用の装置(写真=右)
photophoto KDDI春日部安全・技術訓練センターには2枚のソーラーパネルが設置されている(写真=左)。下半分にある黒い箱のようなものが蓄電池(写真=右)
photo 商用電源、蓄電池、太陽光発電から無線機に電力が供給される流れ。リアルタイムで電力値が表示される。太陽光からは、12時(正午)前後の3時間がピークの値で発電されるという

基地局の訓練所や無線エントランスも紹介

 KDDI春日部安全・技術訓練センターは、基地局ベンダーが運用前にテストを行う施設であり、今回はセンター内を見学することができた。基地局装置の設置工事や修理についての訓練ができる1階の研修ゾーンは撮影が禁止されていたが、さまざまな装置やアンテナを見られた。アンテナは新800MHz帯用と新800MHz/2.1GHz帯用で見た目はほとんど変わらないが、後者の方がアンテナに接続されるケーブルが多い。

 2階には、無線・衛星エントランスの試験を行える部屋がある。基地局と交換機は伝送路(光ファイバーなど)で結ばれているが、山間部などに伝送路を引けない場所には、ケーブルの代わりに無線で基地局から交換機へ電波を送る「無線エントランス」が設置されている。また、震災時などに伝送路が切断されてしまった場合も無線エントランスを活用する。電波を飛ばせる距離は間に入る障害物にもよるが、数キロほどカバーできるという。ほかに、衛星とつないで基地局を復旧させる「衛星エントランス」も紹介された。

photophoto 無線エントランス(写真=左)と衛星エントランス(写真=右)
photophoto KDDI春日部安全・技術訓練センターの屋上では無線エントランスを試験運用している。鉄塔のアンテナ(基地局)(写真=左)から送られた電波を無線エントランス(写真=右)がキャッチする

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