自分なりに使えそうな絵文字が描けるようになったら、ぜひ、それらを使って図解通訳に挑戦してみてください。もちろん、すべてを絵文字で表現する必要はありません。キーワードを書いたほうがスピーディーという場合もあるでしょう。ただし、関係性を可視化することで、問題発見や新たな発想を誘引することも図解通訳の大きなメリットなので、なるべく言葉にたよらず描く習慣を身につけましょう。
例えば、「自宅からローン会社に電話で申し込むと、お金が入金される」という関係を図解通訳してみましょう(例題1)。
登場人物は「自宅(個人)」と「ローン会社(法人)」です。まずは、絵文字サンプルで紹介した、自宅と企業を表すビルの絵文字を2つ並べてみます。次に、自宅から「電話」という手段によって「申し込み」を行なうと、ローン会社が「お金」という財を入金してくれます。ですから、往路の矢印上に記載されるのは電話アイコン、復路の矢印上にはお金マークを記載します。
例題3のように「横ばい」「上昇」など、勢いの方向を絵文字で表現すると分かりやすい上、とてもリアルに感じることもできます。
また、例題6のように結果を数値だけで表すのではなく、喜怒哀楽を表す顔文字をちょっとつけ加えることによって、その時の気持ちなどを思い出すことができます。
情報やデータだけでは人の感情はなかなか動かされません。こうした絵文字は、そうしたアナログな人間の感情に訴えかける効果があります。
ここでは、ある新商品のキャンペーン活動というテーマで練習してみましょう。
ひと口にキャンペーンといっても、広告、口コミ醸成、PRなどの集客から、問い合わせや資料請求などの見込み顧客(リード)の獲得、そして実際に商品を購入してもらう顧客(カスタマー)への流れをしっかり作る必要があります。その「流れ」に対して、複数の登場人物がどのような役割を担うのかを記録することがポイントです。せっかく、絵文字を学んだのですから、ぜひ使ってみてください。
まずは、元になるキャンペーンの概要情報ですが、個条書きで表現するとこんな感じです。
次に、これをプロモーションのチャネルや活動、担当部署などに分類して、図解通訳してみます。参考までに、完成例を紹介します。担当者のイメージに人物アイコンを、メディアごとにそのイメージのアイコンをつけて、より感覚的に把握できるようにしてみました。
プロモーションのチャンネルごろに分類して、流れを描きます。最後に「ユーザーに対して告知する」という効果を共通で表現し、それがキャンペーンキーワードを検索されることであると、まとめます。
プロモーション活動ごとに担当部署が異なるため、組織図で表現。広報は口コミとプレス発表どちらも担当するので、さらに分岐させました。
マーケティング部は、特設サイトを作り、そこでキーワード検索してきたユーザーに資料請求、あるいは商品購入をしてもらうことが目的です。2つのアクションは、その後の対応が変わるので、やはり分岐して表現します。
いかがですか?
絵文字を使うことで、図解がよりリアルに楽しく感じられたのではないでしょうか? 日本国内でこれだけ携帯メールが普及した1つの要因に絵文字があることは間違いありませんが、これだけ強力なコミュニケーション手段をビジネスシーンでも、もっと取り入れていくと良いのではないでしょうか?
次回は、ビジネスフレームワークを使って、より短時間に、精緻な図解通訳を行うコツをお伝えします。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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