ITmedia Mobile 20周年特集

AndroidはiPhoneに対抗するべきではないスマートフォンオブザイヤー2010特別対談(1/3 ページ)

» 2010年12月31日 12時30分 公開
[房野麻子ITmedia]

 2007年に米Appleが発表した「iPhone」が、モバイル業界に衝撃とともに受け入れられてから3年――。2010年は「iPhone 3G」「iPhone 3GS」「iPhone 4」と世代を重ねるごとに進化するiPhoneに追いつけ、追い越せと言わんばかりに、Android搭載端末を中心に多数のスマートフォンが登場した。まさに「日本でのスマートフォン元年」といっても過言ではないだろう。

 そんな2010年を振り返り、「スマートフォンオブザイヤー2010」を選定すべく、アスキー総合研究所 所長の遠藤諭氏、慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏、通信ITSジャーナリストの神尾寿氏に集まっていただき、スマートフォン談義に花を咲かせていただいた。さまざまな視点からモバイル業界に関わる3人が見た、2010年のスマートフォン事情とは――。

iPhone 4の優位性が目立った2010年

ITmedia 2010年、とくに秋以降は、Androidを搭載したスマートフォンが多数発売され、販売ランキングを賑わすなど、日本でもいよいよスマートフォンが大きな波になってきました。2010年を振り返って、スマートフォンの台頭について、どうご覧になりましたか?

夏野剛氏(以下敬称略) やっぱりiPhoneですよね。しかも、2010年に盛り上がったんじゃない。去年、一昨年からですよね。

Photo アスキー総合研究所 所長の遠藤諭氏

遠藤諭氏(以下敬称略) 僕のイメージでは、Appleアップルはシード(種)の会社なんです。一見、いかにもスティーブ・ジョブズが夢の絵を描いて、みんなが頑張ってプロダクトを作ったように見えるんだけど、ちゃんとシードがあってプロダクトが出てくる。Windowsと違ってデバイスからOSまで自分たちでコントロールできるので、興味がないものはなくして、興味のあるものはさっさと採用できるわけです。iPhoneに関しては、どういうシードがあったかというと、省電力のチップです。省電力のチップが出てきたときに、Windows勢はPCの「ウルトラモバイル」化を打ち出したんですけど、Appleはスマートフォンというものを考えた。だから、富士通の「LOOX U」なんかとiPhoneって、実は表裏一体なんですよ。

夏野 2010年を振り返ると、遠藤さんがおっしゃったように「Appleがやり始めたスマートフォンというものが広がりをもって、Android端末がたくさん出てきた。しかしながらAppleの先行優位は揺るがなかった」という感じですね。

遠藤 それで終わっちゃう(笑)

ITmedia 結論が出てしまいましたね

Photo スマートフォンオブザイヤー2010は「iPhone 4」

Photo 慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏

夏野 やっぱり2010年は「iPhone 4」がベスト、という感じ。Androidは、もちろん今後期待できるんだけど、今のところはまだApple。なんでかというと、今遠藤さんがおっしゃった「取捨選択して、載せられるものを先行して載せる」ということが他社にはできていないから。

 あと、OSのバージョンアップという概念がiPhoneによって当たり前になりましたね。AndroidもOSのバージョンアップをする、しないがずいぶん話題になりました。

遠藤 アプリもそうですね。

夏野 そうですね。アプリと、OSをバージョンアップすることでユーザーインタフェース(UI)も進化していますよね。

遠藤 それについては、僕は若干異論があります。なぜかというと、かつてiPhoneは電話として発表されたわけです。5年先の電話だよ、と。アプリという概念もなかったし、ハードと、その中のアプリもAppleがコントロールしているから、めちゃめちゃ統一感のある世界だったんですよ。しかも、検索もなければ並べ替えもない。要するに、実物の紙のように表示するから、メーラーは人の順番とか日付の順番とかで並べ替えなくてもいいってことだった。普通の手紙が届いたらそれを見るのと同じみたいな感じ。要は、頭をデジタルにしないという強烈なメッセージがあったと思うんですよ。なんだけど……

夏野 普通になってきた。

遠藤 そう。iOSになって、フォルダができたりとか。ちょっとよくない。だから以前、僕、iPhone OSが3.0になったときに「堕落だ!」って言ったんですよ。検索機能だって、搭載した理由を聞くと「アプリでいっぱいファイルができちゃったから、探さなくちゃいけなくなっちゃった」という話をしている。でも、本当はそうじゃなかったんじゃないですか、といいたい。まあ、アプリの作成をサードパーティに開放したところが、第一の間違いかもしれない。みんながハッピーになっていることを否定するような話なんですが、きれいさからすると、僕はちょっと、ね。「進化かなあ?」っていう感じがするんですよね。

夏野 Androidに対抗という要素もあって、そういう機能を付けているんでしょうね。つまり、必ず「検索がやりにくい」とかいうヤツがいるんですよ、特に専門誌なんかに(笑)。専門誌は機能で比較しますから。フォルダなんかは完全にその予防措置みたいな感じがする。だって、普通の一般ユーザーだとフォルダの作り方って分からないじゃないですか。

遠藤 というか、いらないですよね。

夏野 いらない。どうやったらいいか、直感的に分からないなんて、Appleらしくないですよね、つまり、やる気がないんじゃないかと。

遠藤 そうかもしれません(笑)

夏野 僕も、ドコモにいたとき、実はそういう製品の作り方はしていました。どうせ使わないけれど、スペックで比較されると絶対負けるから、一応載せておくけれど表には出さない、みたいな。例えばBluetoothがそうでした。接続機器が全然ないので、スペック比較対策で入れておけばいい。でも、オンにしておくとバッテリーの消耗が激しすぎるので、デフォルトはオフ。iPhoneのフォルダもそういう対抗措置的な感じがしますね。人の評判を意識しながらやらなきゃいけないので、結構大変なんですよ。

ITmedia やりたいことだけをやるわけにはいかないということですね。

夏野 1機種目はいけるんですけど、対抗が出てくると難しい。

遠藤 1990年代末の米国のコンピュータや家電のショウでは、PCメーカーやOSメーカーはみんな「未来にはネットワークが家の中にも完全にできあがって、その中でコンテンツは自由にやりとりできるようにする」ということを言っていた。でも、Microsoftはゲームとかクラウドの方にいっちゃって、ソニーの場合は経営陣も変わっちゃった。その当時からずっと同じことをやっているのはAppleだけなんですね。だから、Appleがやっていることは、ものすごくとんがった発想でもなくて、みんなが言っていたこと、そのままなんですよ。それを、宿題をちゃんとやる良い子みたいな感じでずっとやってきて、その間に使えるシードが出てきたら、ちょいちょいとつかんでいくと。iPodのクルクル(クリックホイール)だって、あのクルクルに使うチップが出てきたからできた。ストーリーがあって、それにシードをはめていく。そこがすごくきれいなので、端末もきれいなんです。そういう意味で、僕はiPhone 4は、ちょっと完成から一歩踏み出しちゃった、みたいな気がします。

夏野 僕は、物理的な大きさとかに関する感覚の鋭さを感じますね。ディスプレイのサイズはiPhoneは小さい方ですけど、手のひらの収まりとか縦横比の美しさとかがいい。直感的に美しいんですよね。

Photo 通信ITSジャーナリストの神尾寿氏

神尾寿氏(以下敬称略) 横幅を大きくしなかったことを私は評価しています。他のスマートフォンは大きいんですよね。iPhone 4の58.6ミリという横幅は、スマートフォンとしてはかなり絶妙なサイズです。縦横比もいいし、スクリーンサイズの設定も美しさと使いやすさのバランスをきちんと理解している。

遠藤 インダストリアルデザイン全体からいえば、iPhoneがものすごく秀でているわけではないんだけど、このジャンルのほかの製品がダメすぎてiPhoneが優等生になっているという印象です。

夏野 そういう言い方もあるかもしれないけど、現時点ではやっぱりiPhoneがすごいなと思います。ほかの端末は追いかけてるじゃないですか。だから「これiPhone 3GSにそっくりじゃん」みたいなことがよく起きる。

 ところで、Appleって次の世代の製品を出すときに、結構平気でいろいろな部分を変えてくるんですよね。僕はiPhone 4がこんなにカクカクな形で出るとは予想しなかった。僕もケータイを作る側にいたので分かるんですが、成功しているパターンを変えるのって大変なんですよ。成功すればするほど大変。それなのに、しれっとやってきちゃうからすごい。

神尾 そのあたりの「切り捨ての美学」をAppleは持っていますね。不必要な要素・機能だけでなく、時としては従来からのユーザーも切り捨てる。しかし、それは将来に向けては正しいことなのです。

 ただ、変えるところは一気に変えますけれど、変えないところは変えないというポリシーも持っていますね。「ホームボタン」や「マナースイッチ」「ドックコネクター」とか、アイデンティティになるところは変えません。そのあたりのセンスやスタンスは、BMWやベンツのデザイン手法に近いところかもしれません。

遠藤 歴代のiPodもツルツル(ポリカーボネートや金属のバフ仕上げによる透明感・光沢感のあるボディ)とアルミの押し出し成形のボディをコロコロ変えていましたね。平気で元に戻しちゃうんですよ、Appleって。そして、そこからしばらくは出ないですよね。そこに安心感、統一感がある。ただ、iPhone 4の場合はそうじゃなかったので、ちょっとびっくりしました。

夏野 びっくりしましたね。しかも裏面にまでガラスを使ったじゃないですか。これはコストの面からいっても、なかなかできないんですよ。強化ガラスを裏面まで使うということで、これはまた1つ、新しいものを加えましたね。だから、次にiPodでこういうのが出てくるかと思ったら、裏切られた。

遠藤 パンチメタルとか、素材系で迫ってくるところがありますね。

夏野 それが質感の高さになっているんですよね。なんだかiPhone礼賛になっちゃいますね。

遠藤 アルミのプレスといえば、日本は得意なはずなんですよね。

夏野 そうなんですよ、日本なんですよ。もったいないですよ。こういうのは絶対、最初に日本が作るべきだったんですよ。

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