苦境のサムスン、刷新した「Galaxy S6/S6 edge」で再浮上なるか石野純也のMobile Eye(3月30日〜4月10日)

» 2015年04月11日 13時25分 公開
[石野純也ITmedia]

 サムスン電子ジャパンは、4月8日に「Galaxy World Tour 2015 TOKYO」を開催。3月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congressに合わせて披露した「Galaxy S6 edge」「Galaxy S6」の2機種を、日本に投入することを発表した。日本ではNTTドコモがGalaxy S6/S6 edgeの2機種を、KDDIがGalaxy S6 edgeのみを取り扱う。現在は予約受付中で、発売は4月23日を予定する。

原点に立ち返ってデザインと機能を強化した2つのGalaxy

 Galaxy S6/S6 edgeは、社内で「ゼロプロジェクトと呼んでいた」(サムスン電子 営業グループ部長 阿部崇氏)スマートフォン。原点に立ち返り、デザインや機能を刷新した端末というのが、サムスンの位置づけだ。背面にガラス素材を、フレームにはアルミニウムを採用。素材も一新して、従来のシリーズとは一線を画す高級感を演出する。ガラスの下に光学フィルムを敷き、光を乱反射させることで見る角度によって異なる色合いを実現するといった、デザイン上の工夫も盛り込まれた。同社のデザイングループ 永田昌一氏によると、ガラスには「ゴリラガラス4」を、フレームには「アルミニウム6013」を使い、見た目だけでなく強度も高めているという。

photophoto ディスプレイの左右がラウンドした「Galaxy S6 edge」と、フラットタイプの「Galaxy S6」
photo Galaxyの魅力を語る阿部氏(右)と永田氏(左)

 Galaxy S6 edgeについては、その名のとおり、左右両側がなだらかに曲がった「デュアルエッジスクリーン」を採用する。ディスプレイの右側だけが曲面になった「エッジスクリーン」は、2014年に発売された「GALAXY Note Edge」にも搭載されていたが、その役割は大きく異なる。GALAXY Note Edgeのエッジスクリーンは“ノートのインデックス”に見立てられており、アプリのランチャーや各種ツールを置くことができたのに対し、Galaxy S6 edgeのそれは主にデザイン上のアクセントとして採用されている。

 ほぼ全面がタッチパネルで正面から見たときの印象が似通いがちなスマートフォンだが、ディスプレイの形状で違いを出した格好だ。「人間工学に基づいた曲線で、誰の手にもフィットする持ちやすさ」(永田氏)という効果も生まれた。実機を触ってみると分かるが、5.1型のディスプレイが採用されたスマートフォンとしては、非常にコンパクトな印象を受ける。エッジスクリーンに手の一部をかけながら操作すれば、通知などが集中する画面上部にも指が届きやすい。これが、デュアルエッジスクリーンのメリットだ。よく連絡する5人を登録しておける「ピープルエッジ」という機能も搭載される。

photo 手に取ったとき、ディスプレイのサイズ以上に小さく感じる
photo よく使う5人を登録しておける「ピープルエッジ」

 デザインと双璧をなす、性能や機能にも大幅に磨きをかけた。心臓部であるCPUには14ナノメートルのプロセスで製造されたサムスン製の「Exynos7420」を搭載。ほかのAndroid端末で一般的なクアルコム製のSnapdragonを見送ったことで、他社に先駆け、14ナノメートルプロセスのCPUを採用できた格好だ。これによって「20%の性能アップと低消費電力を実現した」(阿部氏)という。メモリには「LPDDR4」を採用し、トータルで快適性を追求している。これによってほかの端末では動作が緩慢になりがちな処理性能を要求するアプリも、スムーズに動く。

photophoto 14ナノメートルのプロセスで製造されたオクタコアCPUを搭載。メモリもLPDDR4で高速化している

 カメラにも磨きをかけ、画質を向上させた。センサーはソニー製のもので、F値が1.9の明るいレンズを採用。ホームボタンをダブルクリックするだけで瞬時にカメラが起動するのも、両機種の特徴だ。日本で開催されたWorld TourでもMobile World Congressのときと同様、iPhone 6、iPhone 6 Plusと比較した写真、動画を公開しており、サムスンの自信のほどがうかがえる。

photo 高速起動や暗所での撮影性能に磨きをかけたカメラを搭載
photophoto 発表会ではiPhone 6 Plus(左)と比較し、性能をアピールする場面も。Mobile World Congressでも同じ方法でアピールされていたが、サムスンがライバルの端末を名指しするのは珍しい

 また、両機種とも、LTE-AdvancedのCategory6に対応。ドコモは2015年3月に下り最大225Mbpsの「PREMIUM 4G」を開始しており、Galaxy S6/S6 edgeの2機種が、これに対応した初のスマートフォンとなる。対するKDDIも、LTE-Advancedを下り最大225Mbpsに拡大。もともとは夏モデルでの導入を見込んでいたが、Galaxyに合わせる形で開始を4月に巻き上げた。下り最大225MbpsのLTEは2機種の発売と同時に利用が可能になる見込みで、iPhoneが発売されたときのように、Galaxyを軸にドコモとKDDIのネットワーク競争が激化している様子がうかがえる。Galaxy S6/S6 edgeは、WiMAX 2+のキャリアアグリゲーションにも対応しており、KDDIでは「ダブルCA」をうたい、差別化を図る。

photophoto 会場内には両キャリアが、下り最大225Mbpsのエリアを臨時で構築。ドコモ版(左)、au版(右)とも、60Mbps前後のスループットで速度に大きな差は見受けられなかった

Galaxy S6/S6 edgeの投入で再浮上はあるのか

 サムスンがここまでGalaxyの刷新に力を入れた背景には、フラッグシップモデルの不振が挙げられる。同社の専務 石井圭介氏によると、両機種の開発プロジェクトは「GALAXY S5」の発売直前にスタートしたという。サムスンが抱えていた問題意識が「進化の度合いが過去からの延長線上であることが否めないのではないか」(石井氏)ということ。実際、フラッグシップのGALAXY S5は世界各国で販売不振が伝えられ、サムスンはシェアを急落させてしまった。2015年3月に米調査会社のGartnerが発表したデータによると、2014年第4四半期のスマートフォンの販売台数は7303万台。同四半期7438万台のAppleに抜かれ、2位に転落している。

2014年第4四半期のメーカー別世界スマートフォン販売トップ5(単位:千台)
順位 メーカー名 4Q14販売台数 4Q14市場シェア(%) 4Q13出荷台数 4Q13市場シェア(%)
1 Apple 74,832 20.4 50,224 17.8
2 Samsung 73,032 19.9 83,317 29.5
3 Lenovo* 24,300 6.6 16,465 5.8
4 Huawei 21,038 5.7 16,057 5.7
5 Xiaomi 18,582 5.1 5,598 2.0
その他 155,701.6 42.4 111,204.3 39.3
合計 367,484.5 100.0 282,866.2 100.0
(資料:Gartner、*Lenovoの販売台数には買収したMoborolaの販売台数を含む)

 もちろん、ハイエンドモデルの不振だけが業績を左右するわけではなく、サムスンの不振の裏には、ミッドレンジ以下の分野で中国メーカーの猛追を受けていることもある。逆にいえば、ハイエンドはAppleに、ミッドレンジ以下は中国メーカーにと挟み撃ちにあってしまっているのが現状だ。ハイエンドモデルはミッドレンジ以下のモデルにエッセンスを受け継がせるための“お手本”にもなるため、メーカーにとっては非常に重要なモデルとなる。Galaxy S6/S6 edgeをこれまでと大きく変えてきたのには、このような危機感がある。

 日本市場に目を移しても、状況は似ている。サムスンはドコモに導入した「GALAXY S」「GALAXY S II」「GALAXY S III」「GALAXY S4」と販売数を順調に伸ばしてきており、ミリオンを突破することも多かった。約2年前に販売されたGALAXY S4に関してはドコモの「ツートップ」にも選ばれ、「おそらく100万以上の稼動がある」(石井氏)。Qualcommのチップセットの不足に多くのメーカーが苦戦した中、安定して端末を供給できたGALAXY S IIIは、それ以上の売れ行きを示していたという。

photo ドコモの「ツートップ」として導入された「GALAXY S4」。価格的に攻めていた「Xperia A」には及んでいないが、それでも販売台数は順調に伸びていた

 ところが、GALAXY S5では一転して苦戦を強いられ、販売台数にストップがかかった。販売ランキングの上位に顔を出すこともあり、売れてないわけではないが、かつての勢いを失いつつあったのも事実だ。ドコモがiPhoneを取り扱い始めたことも、逆風になった。結果として、サムスンの日本でのシェアも低下。IDCの調査によると、2014年はスマートフォンの出荷台数で第4位に留まり、シェアも4.7%と1桁台になってしまった。

photo 2014年の夏モデルだった「GALAXY S5」は、他メーカーのハイエンドモデルの中に埋もれてしまい、あえてGALAXYを選ぶ理由が薄くなっていた

 こうした状況を巻き返すために投入されたのが、Galaxy S6/S6 edgeだ。端末自体の売りが明確になった2機種は、先に発売される海外での反響も上々だという。その上で、日本では、販売面まで「改革をしていく」(石井氏)方針だ。石井氏によると、国内でキャリアショップなどの営業を担当するラウンダー(店舗循環員)を数百人規模に増強。「キャリアショップ内にGalaxyコーナーが設けられる」というように、まるでiPhoneのような特別待遇で販売が行われる。

photo 販売体制を大幅に強化したと語る、サムスン電子ジャパン 専務の石井氏

 異例という点では、キャリアの発表会に先がけ、サムスンが独自で端末を披露したこと自体も、かつてなら考えられなかった。発表会ではさながら海外ように、キャリア幹部がビデオメッセージを寄せ、自社のネットワークをアピールしていた。キャリアのラインアップの中の1つであるGalaxyではなく、Galaxyを軸に2社が競争している構図になったというわけだ。プロモーション構成も以前より積極的に展開している。

photophoto ドコモの吉澤副社長、KDDIの田中社長がそれぞれビデオメッセージを寄せ、自社のネットワークをアピールした

 このような施策に打って出られたのも、端末の完成度が高かったからこそ。Galaxyを導入するキャリア関係者からも、高い評価を耳にする。また、2015年はGalaxyにとって追い風が吹く可能性もある。日本市場特有の理由として挙げられるのが、割賦販売の存在だ。ドコモがツートップ戦略に打って出て、GALAXY S4を積極的に販売したのはちょうど2年前のこと。石井氏が述べていたように、GALAXY S IIIの稼働台数もまだまだ多い。機種変更時に積極的にメーカーを変更する率が低いことを考えると、GALAXY S IIIやGALAXY S4のユーザーが“割賦明け”を迎えたとき、Galaxy S6/S6 edgeを選ぶ可能性は高い。

 あえてドコモがフラットタイプのGalaxy S6を導入した理由も、ここにある。ビデオメッセージで登場したドコモの代表取締役副社長 吉澤和弘氏は「S6はS5が正統進化した機種であり、エッジは斬新かつ先進的なデザインの機種。これら2機種でたくさんのお客様にご満足いただけると確信している」と、2機種の位置づけの違いを解説。Galaxy S6が保守的な機種変更需要を満たすのに対し、Galaxy S6 edgeは先進層の取り込みを狙った機種であることを示唆した。

 吉澤氏のコメントからは、KDDIがGalaxy S6 edgeだけを導入する理由も読み解ける。ドコモに遅れてGALAXYを投入したKDDIは、過去の機種からの需要がそこまで高くないということだ。KDDIはGALAXY S4を取り扱っていないため、このタイミングでフラットタイプのGalaxy S6を導入する必然性が高くなかったともいえるだろう。

 いずれにせよ、2015年の夏商戦はGalaxy S6/S6 edgeと共に始まる。他メーカーに先駆けサムスンが端末を発売することで、販売合戦もいつもの夏商戦とは違った様相を呈しそうだ。

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