11月17日、アップルは日本の旗艦店において「Apple SIM」の取り扱いを開始した。また日本国内ではKDDIがネットワークを担当。これより、iPad Pro、iPad Air2、iPad mini3、iPad mini4ユーザーは、Apple SIMを挿入しておけば、国内ではKDDIのネットワークを1GB1500円で、海外では現地のキャリアやグローバルで通信サービスを提供するGigskyのネットワークを使えるようになる。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年11月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
Gigskyは、現地のプリペイドSIMカードと比べるとかなり割高だが、アメリカでは1GB10ドルでT-Mobile USのネットワークが使えるなど、リーズナブルに接続が可能だ。
今回の日本展開にあたり、KDDIがネットワーク対応の名乗りを上げたことに少し驚いてしまった。
いままでであれば、ローミングインサービスはUMTSをベースとしているNTTドコモかソフトバンクしか選択肢がなかった。CDMAベースのKDDIネットワークでは対応端末も海外では普及しておらず、やろうとしてもできるものではなかった。
しかし、KDDIは4G LTEへの一本化に邁進し、完ぺきではないものの全国規模でのネットワーク構築を実現した。
それに加えて、iPadは、幅広い周波数帯に対応できる。iPadという限られた端末だったからこそ、KDDIはローミングインとして端末を受け入られたのだろう。また、従来から、人気はなかったが、プリペイドのLTEプランを用意していたのも幸いしたといえそうだ。
一方で、ソフトバンクはなぜ対応しなかったのか疑問が残る。
iPadの取り扱い年数も長く、ローミング対応も受け入れられる環境も揃っている。過去には恐ろしく不人気だったが、プリペイドプランも提供していた。かつての勢いのあるソフトバンクならば、我先にと手をあげそうなものだが、結局はKDDIにその座を奪われてしまった。
アップルからすれば、KDDIは技術的にノウハウを持っているという判断があるようで、ネットワーク関連での協力が多いように思える。一方のソフトバンクは、営業面が強いということもあり、ここ最近はApple WatchやApple TVといった製品の販売も手掛けるようになっている。
アップルとしては販路を拡大できるというメリットがあるし、ソフトバンクとしても「国内キャリア独占」としてショップで売れる利点があるのだろう。
ただ、Apple Watchはショップの床面積を占有してしまい、ほかのものが売れなくなるというデメリットがありそうだが、それでもソフトバンクとしてはアップルとの関係を優先させているようだ。
NTTドコモとは、5Gに向けた取り組みにおいて、意見交換をしていてもおかしくない。5GにおいてNTTドコモは世界をリードする立場にいる。一方のアップルも、iPhoneで他社に遅れることなく5Gに対応したいはずだ。
今年、NTTドコモは新型iPhoneの登場に合わせる形で262.5Mbpsのキャリアアグリゲーションを始めた。これまではAndroidスマホが最初だったにも関わらず、iPhoneを優先してきたことが意外であった。
2020年までiPhone人気が継続するかは未知数だが、その時までiPhoneの販売競争が継続していたら、将来的には5Gを始める最初の端末がiPhoneということもあり得るかもしれない。
アップルとしては、3キャリアの個性や能力をわかったうえで、巧みに付き合い方を変えているのは間違いなさそうだ。
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