さて当日の朝、作戦としては朝一でBest Buy店舗の様子をチェックし、それからゆっくりと取り置き予約をしてある店舗に並ぶつもりだった。ところがBest Buy店舗に行く前にちょっとApple Storeのチェックをしようと午前7時ごろに顔を出してみると、なんとすでに大行列がそこにはあった。ざっと目視で60〜70人程度。行列は予約組と、それ以外の予約なし組の2列に分かれており、予約組の列だけで50人くらいはすでにいた。Best Buy店舗に行って帰ってくると軽く1時間はかかるため、行列は倍以上になっている可能性があり、入手時間もかなりかかりそうだ。なので予定を急きょ変更し、すぐに並ぶことにした。
とはいえ、2時間程度の待ち行列であればiPhoneの12時間行列を経験した身からすればたいした苦ではない。行列はあっという間に伸びて交差点に差し掛かり、並んでから15分後にはすでに最後尾は見えなくなっていた。このころになると、例によって各社の宣伝マンが出現して、チラシやグッズを配り始める。
以前のiPhoneのときと違うのは、宣伝の多くがiPadにリンクしていたことだ。例えば、セグウェイで宣伝ビデオを流していたUSA Todayは、iPad用の専用リーダーアプリの配布を行っている。宣伝マンによれば、こうしたキャンペーンはサンフランシスコのほか、ニューヨークとシカゴでも行っていたという(筆者が行列に並んだ時点で、時差の関係ですでに両都市ではiPadの販売が開始されている)。恒例のApple Storeスタッフによる食糧配給も始まり、朝食抜きで行列に混じった筆者の空腹も満たされた。こうした和気あいあいとした雰囲気は米国ならではだ。
午前9時のオープン1時間前になると、報道陣や野次馬が増えてきた。周囲ではあちこちでカメラマンの撮影やコメント取得風景が見受けられる。筆者も知り合いの記者と挨拶して、「報道関係者がすごく多いね」などと話したりしていた。このように現場に報道陣が多すぎると、たまに知らずに同業者に対してコメントをとってしまうこともある。以前のiPhone発売のときは、知らずに近付いてきたロイター通信やCNNに筆者もコメントをとられたことがある。
こうした取材風景自体は見慣れた光景だが、以前と異なる点がいくつかある。1つはいわゆる大手メディアの取材だけではなく、ブロガーを名乗る人物らが行列に対してビデオカメラをまわし、独自取材を行っていたことだ。もう1点は取材機材で、いわゆる本格的なデジタル一眼カメラや業務用ビデオカメラではなく、Webアップロードが容易な小型カメラやiPhoneで写真や動画を撮影している関係者や野次馬が多数いたことだ。そもそも発売前で、iPhoneが存在していなかった以前の行列では見られない光景で、時代の変化を感じさせる。
今回は行列が作られていた時間も短く、Apple Store側も統率がきちんととれているため、定期的な交通整理のような指導は特になかった。午前9時になると急に行列の前方が騒がしくなり、無事に店舗がオープンした様子が伝わってくる。店舗まで30〜40メートル以上離れた位置にいるため、残念ながら何が起こっているのか詳細までは分からないのだが、最大ズームでカメラを上方から構えて様子を観察することにした。人や報道陣のカメラの構え方から、かろうじて最初の購入者が出てきたことだけは分かった感じだ。近付くことに大歓声が聞こえてくるようになり、スタッフが総出で購入者に拍手喝采している様子が伝わってくる。
さすがに大行列のさばき方にも慣れていたようで、ものの10分しないうちに筆者も店舗内に入ることができた。事前にリスト化していたようで、入り口のスタッフがiPhoneを使って筆者の名前を検索すると、予約機種や台数等が一覧になって表示されていた。購入者1人に対して1人のスタッフが充てられ、予約機種のピックアップからアクセサリの購入アドバイス、実際の決済、セットアップまで、全部面倒を見てくれる。
以前はレジ前に行列ができてなかなか人が減らなかったのだが、いまではスタッフ全員がクレジットカードリーダー付きの専用iPhone端末を持っておりすぐに決済できるため、スムーズに人が流れているようだ。このあたりも時代の変化を感じさせる。なお、ここで依頼するとアクティベーションから最低限のセットアップまで店舗スタッフが行ってくれる。その場で利用可能になるので親切だ。実際、セットアップ完了後に店舗内にとどまってiPadをずっと操作している人もいる(Apple Store内には無料無線LANが完備されている)。
なお、これは後で分かったことなのだが、当日の在庫は潤沢にあったようで、サンフランシスコ店では午後3時を過ぎても“行列に並ばず”にiPadを購入できたようだ。オープン時にあったもう1つの予約なしの列はすでに消滅しており、後から来た人も続々と商品を購入して店舗から出てくる。前述のBest Buyや予約状況のタイトさに比べて、驚くほどあっけなく購入できることに驚きだ。供給不足が指摘されていたiPadだが、4月末の日本での発売も思った以上に入手が容易かもしれない。
以上、ざっと3月の予約開始から当日発売までの購入風景を紹介した。パッケージの開封からセットアップ、実際の使用感については、追ってリポートしていく。
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