手元に届けられた第4世代MacBook Airだが、予想通り、大きさや重さは初代機とほぼ同じ。筆者の手元にある初代は実測値1398グラムだったが、第4世代機の実測値は1315グラムでその差は80グラム強だ。軽くなっているとはいえ、明確に軽くなったと体感できるほどの差ではない。カタログスペック上は、第4世代機のほうが若干薄いのだが、こちらも誤差の範囲と言えるだろう。むしろ、側面を斜めにそぎ取ったようなデザインになっている初代のほうが、見た目としては薄く感じる。
この側面のデザイン処理、ポートをドアで覆った仕様など、やはり初代機のほうがコストがかかっている部分が多数見受けられる。というより、初代機はコストを度外視してもデザインを優先した印象だ。それに比べてこの第4世代機は、ポート類も剥き出しになるなど、コストダウンのために合理的に作られている。高解像度化されたディスプレイも、横から見ると色温度が若干下がって(赤っぽく)見える傾向がうかがえる。
ほかにも第4世代機では、キーボードのバックライト、Appleリモートの受光部、スリープ状態を示すLEDなどが省略されているし、独立した電源ボタンもキーボードのキーと同じ扱いになってしまった。Back to the Macで紹介された本機の内部写真でも、内部が合理的に作られている様子がうかがえた。初代機が数を売ることを想定していないラグジャリーモデルだったとすると、この第4世代機は実用モデルとしてたくさん売りたい、という狙いを感じる。
しかしながら、合理的であることが悪いと言っているわけではない。初代機は側面が斜めになっていたため、Mag Safe電源アダプタのプラグを斜めに取り付ける形となっていた。例えばコネクタ部が大きいMacBook用の65ワットMag Safe電源アダプタをMacBookとMacBook Airで共用したくても、コネクタ部がじゃまでうまくいかない、という問題も生じていた。第4世代機は真横に電源ジャックがあるため、このような問題は生じない。
また、ドアの奥にあるUSBポートは、大型のUSBメモリが取り付けられないこともあったが、剥き出しになった第4世代機であれば、どんなUSBメモリも利用できる。もちろん、USBポートが左右に各1つ、計2ポートになった利便性のほうが大きいとは思うが。13インチモデルでは右側面のUSBポートの手前にSDカードスロットも備えており、ポート不足は大きく緩和された。個人的には有線LANポート(RJ-45)が欲しいが、Airを名乗る以上、絶対にサポートされることはないだろうと諦めている。

新型MacBook Airはポートが剥き出しになり、幅広いUSBデバイスを利用できる。右側面にはUSB 2.0ポートをはさんで、奥にMini DisplayPort、手前にSDメモリーカードスロットがある(写真=左)。ドア式で奥まった位置にある初代機のUSBポートでは、大きなUSBメモリを物理的に挿せないケースがあった(写真=右)右側面の一番後ろには、外部ディスプレイ接続用のMini DisplayPortが用意されている。現在はVESAにより正式規格化したコネクタだが、今のところアップル以外で使っている製品は数えるほどだ(つい最近リリースされたRadeon HD 6870のカードがMini DisplayPortを採用していた)。したがって、サードパーティ製のディスプレイと接続する場合、かなりの確率でアダプタが必要になる。現時点でアップルが販売しているのは、アナログRGBとDVIが2種(シングルリンクおよびデュアルリンク)の計3種類のみ。DisplayPort(通常サイズ)やHDMIに出力する場合は、サードパーティ製のアダプタやコンバーターを購入する必要がある(国内での入手性はあまりよくない)。
また、最新のiMacでは、Mini DisplayPortがオーディオ出力をサポートすることが明記されていたが、今のところMacBook AirのMini DisplayPortがオーディオをサポートしているという確認は取れていない。筆者の手元にあるDisplayPort対応ディスプレイは、そもそもディスプレイ側がオーディオをサポートしていないので、実機で確認することはできなかった。ちなみに内蔵スピーカーは、今回初めてステレオ化されている。
初代機と第4世代機で、外観を見て分かるもう1つの大きな違いは、ヒンジ部の下にある通風口だ。初代機にはヒンジ間の幅に近い長さで目立つスリットが設けられており、少し負荷をかけるとCPUの冷却ファンがけっこう盛大に回転する。そして、液晶ディスプレイを閉じても、内部の温度が一定以下に下がるまで、ファンが回り続ける。
第4世代機の場合、そもそもスリットがヒンジの内側の目立たない部分に移動している。キーノートで披露された内部写真からファンレスでないことは分かっているのだが、CPUがある後部右側が熱くならないし、明らかにファンの回転頻度は下がった。熱くならないというのは、それだけバッテリー消費の点で有利であるということを意味する。
今回アップルは、この13インチモデルのバッテリー駆動時間について、ワイヤレス環境で最大7時間としている。実際使ってみて、内蔵無線LANでWebブラウザを使いながら、バックグラウンドでメールチェックをする、といった使い方であれば、確かに7時間程度はバッテリーが持つのではないかという感触がある。実測したわけではないものの、WiMAXの外付けUSBアダプタだと5時間程度、無線をオフにしてテキストエディタでテキスト入力をするくらいの使い方なら10時間程度は持ちそうな感じだ。初代機の倍とまではいかないが、5割増しくらいは期待できるのではないかと思っている。
この公称最大7時間というバッテリー駆動時間に加えて、アップルはスリープによる待機30日ともうたっている。要するにスリープ状態での消費電力が小さいということだ。例えば、半日程度ACアダプタを外しておいて、再びACアダプタを接続しても充電されないことがあった。スリープ状態の一層の省電力化は、C6ステートを導入したPenryn(開発コード名)の特徴の1つであり、45ナノメートルの製造プロセスと合わせ、省電力化に貢献しているのだろう。ちなみに、正式に計時したわけではないが、初代機で最も不満だったバッテリー充電時間(この項目はアップルの仕様表にない)に関しても、大きく改善されているようだ。
さて性能面だが、これは筆者が最も期待していなかった部分だ。何せCPUクロックだけをみれば、初代の1.8GHzと今回の1.86GHzでほぼ同等、MeromとPenrynの差(マイクロアーキテクチャの差)はあるにしても、それほど劇的なものではない。
ただし、簡単なベンチマークテストを行ってみたところ、意外と性能が向上しているようだ。ここで試したGeekbenchというのは、基本的にCPUとメモリのベンチマークテストであり、マイクロアーキテクチャが同じなら、CPUのクロックに見合った数字が出る傾向が強い。そのテストで2割〜4割前後のスコアの向上が見られた。FSBクロックの引き上げ、メモリのDDR3化とクロックの引き上げ、L2キャッシュの増量などが、地道に効果を発揮しているのだろう。また、CINEBENCHのCPUスコアでは5割近く性能が向上しているが、データセットの大きいこのテストでは、L2キャッシュを増量した効果が強く表れているのかもしれない。
一方、大きな改善が期待できそうなグラフィックスだが、ここでは適切なベンチマークテストを見つけることができなかった(CINEBENCH R11.5の結果は、OpenGLが12.58fpsだったが、初代機ではエラーになってしまった)。ただ、これまではコマ落ちしていたフルHDの動画が、第4世代機では問題なく再生できたから、動画再生支援機能の向上は期待できるだろう。そのほかのグラフィックス性能にしても、第4世代機のチップセット内蔵グラフィックス(NVIDIA GeForce 320M)とIntel 965チップセット内蔵(GMA X3100)では世代からして異なる。同世代で比較してもNVIDIAの内蔵グラフィックスのほうが上であることが多いから、少なくとも初代機と比較して遅いということはないハズだ。
というわけで新しいMacBook Airにはおおむね満足しているが、トラブルがまったくないわけではない。筆者が遭遇している最大のトラブルは、トラックパッドのカーソルが利かなくなる、というものだ。最初はシステムがフリーズしているのかと思ったが、キーボードやパッドのボタン、USBポートを利用するマウスは機能を維持していることが分かった。唯一、パッドでカーソルを動かすことだけができなくなる。ただ、このトラブルも移行して1〜2日は頻発したが、3日目あたりからかなり落ち着いた印象だ。ドライバキャッシュが更新されたからなのか、早速リリースされたソフトウェアアップデートのおかげなのか、症状が改善した理由は分からない(ただしソフトウェアアップデート適用後もカーソルフリーズが完全になくなったわけではない)。
筆者は、この新しいMacBook Airの環境を、初代機から引き継ぐ形(TimeCapsule上のバックアップから環境を移行)で構築した。これが影響しているのかもしれないし、環境移行時に中途半端にUSB−イーサネットアダプタを挿していたことが影響したのかもしれない。できればこのまま使い続けたいと思っているが、もうしばらく様子を見たいと思っている。もしダメなら、今回からUSBメモリになったリカバリディスクからシステムを復元することになるが、できれば避けたいものである。
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