米Microsoftが5月24日(現地時間)、スマートフォン向けOS「Windows Phone 7」の次期メジャーアップデート「Mango」の詳細を明らかにした。500以上の新機能を搭載し、2011年秋以降にリリースする。既存のWindows Phone 7ユーザーには、無償のアップデートとして提供される予定だ。
Windows Phone “Mango”は、これまでにも「Mobile World Congress 2011」や「MIX11」「TechEd」「Microsoft Developer Forum 2011」といったイベントやカンファレンスでその機能の一端が紹介されてきたが、ようやくその全容が発表された格好だ。バージョン番号は、これまでWindows Phone 7.5になるのではないか、といった観測もあったが、製品名の正式なアナウンスはされていない。
Windows Phone 7を採用する端末は、Samsung電子、LG Electronics、HTC、Dellなどがリリースしているが、今後はNokiaやAcer、ZTE、そして富士通からも端末が登場することが合わせて発表された。Windows Phone 7搭載端末の開発メーカーに富士通が加わったことで、日本国内でも端末が登場する可能性は高まったといえる。日本語にも正式対応する。このほか、ブラジルポルトガル語、中国語(簡体)、中国語(繁体)、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、フィンランド語、ギリシャ語、ハンガリー語、韓国語、ノルウェー語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、スウェーデン語もサポートする。
Windows Phone 7は、日本国内では(輸入されたものを除いて)搭載端末が販売されていないうえ、昨今のAndroid搭載スマートフォンの急速な普及の影響もあり、あまり話題に上る機会がないが、これまでのWindows Mobileとはまったく異なるコンセプトで新規にデザインされたスマートフォン向けOSだ。ユーザーインタフェース(UI)もMicrosoftのSilverlightの技術を利用しグラフィカルなパーツが軽快に動作する。AppleのiOSとも、GoogleのAndroidとも異なる世界観を構成できるポテンシャルを持つ。
Windows Phone 7搭載端末のハードウェアスペックがMicrosoftによってある程度規定されているのもポイントで、iOSほどの垂直統合ではないものの、Androidのような端末のフラグメンテーション(断片化/スペックの細分化)も起こりにくい。独自のWindows Phone向けアプリケーションマーケットのWindows Marketplaceには、現在1万7000タイトルを超えるアプリが登録されている。その数はiOSやAndroidには及ばないものの、着実に増えつつある。
こうした状況下でのMangoのリリースは、Microsoftにとっても大きな意味を持つ。これまで英語版を中心にリリースされてきたWindows Phone 7が、複数の言語に対応し、新たに現地のWindows Marketplaceとともにグローバル展開を始める。
Windows Phone Mangoの新機能は、大きく3つの柱に分類される。コミュニケーション、アプリケーション、そしてブラウザだ。1つ1つ細かく見ていこう。
コミュニケーション面では、「人」を中心に情報をまとめる機能強化を行った。
これまで通話やメール、インスタントメッセンジャーやSNSなどの情報は、個々のアプリケーションに分断されていて、利用したいサービスに合わせてアプリを切り替える必要があるケースがほとんどだ。Mangoではその点を改め、スタート画面(ホーム画面)の「Live Tile」(ライブタイル)に新たに「Threads」(スレッド)という機能を用意した。Threadsを利用すると、特定の人とのテキストメッセージやFacebookチャット、Windows Live Mesengerの会話を簡単に切り替えて表示できる。
また連絡先を複数まとめてグループ化し、そのグループをLive Tile上に配置できるようになった。これで、特定の人たちに向けて簡単にメールやインスタントメッセージなどを送信可能になる。すでに実装されているFacebookとの連携に加え、TwitterやLinkedInとの連携も備える。Facebookのチェックイン機能もFacebookアプリを起動せず利用可能だ。写真のタグ付けや投稿に便利な顔認識ソフトウェアも備えた。
メールは、複数の電子メールアカウントを1つの受信トレイで閲覧可能になる。GmailやWindows Live Hotmailなどに分散していた新着メールも簡単に確認できる。音声認識エンジンと読み上げ機能も搭載し、音声入力でのメッセージ送信や、着信メッセージの音声読み上げにも対応した。
アプリケーション面では、検索結果とアプリの連携、Live Tileの機能強化、そしてマルチタスク対応が大きなトピック。
「App Connect」(アップコネクト)と呼ぶ新機能では、検索結果にアプリの情報を表示するのがポイント。アプリの起動が必要な場面ではアプリの情報を表示することで、シームレスに連携する。結果として表示されるアプリは、端末にダウンロードされているものだけでなく、Marketplaceにあるアプリも含まれ、アプリのダウンロード促進にもつながる仕組みとなっている。
スタート画面のLive Tileには、アプリの情報が反映可能になっており、更新情報などが通知可能だ。利用中のアプリを簡単に切り替えられるマルチタスクもサポートした。
ブラウザの強化については、すでに何度も報じられているが、Internet Explorer 9(IE9)ベースのWebブラウザを搭載したことが注目される。新しいWebブラウザはHTML5をサポートするほか、一部機能はハードウェアによるアクセラレーションが利用できる。
検索機能も強化され、Google ローカルのようにBing検索から近くのレストランや店舗などの情報が得られるようになる。Bing VisionやBing Audioにも対応。このほかWindows Live SkyDriveとの連携なども実装される。
同日開発ツールのアップデートも発表され、最新版の「Windows Phone Developer Tools 7.1」がすでに開発者向けサイト「APP HUB」から無料でダウンロード可能になっている。
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