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» 2011年02月21日 14時20分 公開

Mobile World Congress 2011:Googleに「負けたくない」――モバイルクラウド戦略を語ったNTTドコモの山田社長

バルセロナで開催されたMobile World Congress 2011の基調講演に登壇したNTTドコモの山田隆持社長は、キャリアの“ダムパイプ化”を回避し、ネットワーク内クラウドによって成長を続ける決意を語った。

[末岡洋子,ITmedia]

 NTTドコモの代表取締役社長、山田隆持氏は2月17日、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2011」にて基調講演を行い、M2Mを中心に新しい時代のドコモの成長戦略を明かした。ソフトバンク 代表取締役社長兼CEOの孫正義氏はキャリアの“ダムパイプ化”(dumb pipe化/土管化)を問題視したが、山田氏もダムタイプ化を回避する決意を語った。

Photo NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏

 山田氏の基調講演は、ソフトバンクの孫氏と同じ日に行われた。孫氏は「憂鬱な現実」を打開するという観点で、音声からデータへのARPUのシフトやシェア拡大による成長についての話をしたが、山田氏が登壇したのは家電がテーマのセッションということもあり、新規事業による新しい成長について、ドコモの戦略を明かした。

 山田氏はまず、日本の無線通信の現状について、「3Gが世界で最も普及しており、比率は100%に近い。モバイルブロードバンドの普及がさまざまな新しいサービス創造につながっている」と紹介。将来の成長は「データARPU増加がもたらす」と山田氏、3Gの普及によりデータARPUが急激に増加しており、日本全体では、データARPUは今年3月に音声ARPUを上回るとの予測も示した。

Photo ドコモの音声ARPUは減少しているが、データARPUが増加中。2011年3月に、音声ARPUを上回ると予想する

 新しい成長に向けてNTTドコモは、1)スマートフォン、2)LTE、3)コンバージドサービス、の3つに取り組んでいることを紹介した。このうち、1)と2)はデータARPUを増加させるための取り組みで、3)は新規に拡大する事業となる。

 スマートフォンについて山田氏は、日本でもスマートフォンの売り上げが急増しており、NTTドコモも積極的にユーザーの受け入れを推進しているとした。2011年度の販売目標は600万台。この目標を達成するため、製品ラインアップを拡充するほか、iモードのメールアドレスがスマートフォンでも使える「spモード」などサービスにも力を入れている。

Photo 2011年度のスマートフォン販売目標は600万台

 LTEへの取り組みでは、2010年12月24日に開始したばかりの「Xi」を紹介した。「データ利用の増加でトラフィックが急増している。この成長に応じる必要がある」と山田氏。現在Xiはデータ通信サービスのみだが、「年内にモバイルWi-Fiルーターやその他の種類の端末を提供する」と述べた。

 スピーチの中核となるコンバージドサービスでは、2012年に1000億円の売り上げを目標とすることを明かした。

 ここで同社が取り組んでいるのが、通信モジュールを組み込んだ機器同士が通信するM2Mだ。日本のM2M市場は急成長しており、2010年で560万件の回線契約があるという。ここでドコモは40%以上のシェアを持つ、と山田氏は胸を張る。

PhotoPhoto 今後2桁成長が予想されている日本のM2M市場。さまざまな機器に通信モジュールが搭載される

 「近い将来、モバイル端末と生活のツールとが融合したコンバージェンスの時代が到来する。そして、情報端末、産業機器、自動車などに無線機能が加わると、さまざまな新サービスを開発・提供できる」(山田氏)

 こうしたM2M事業の例として、大日本印刷とジョイントベンチャーを立ち上げ、1月にサービスを開始した電子書籍事業「2Dfacto」、デジタルフォトフレームサービス「お便りフォトサービス」、日産自動車の電気自動車「リーフ」への自社通信モジュールの供給、タバコ自販機の年齢認証「taspo」などを紹介した。現在、1000社以上がドコモの無線モジュール採用しているという。

 2Dfactoでは、サービス開始時に約2万冊の電子書籍コンテンツをそろえたが、第2四半期には一気に10万冊に増やすこと、お便りフォトサービスでは今後、写真以外のものに対応するといった計画も語った。同社の通信モジュールを組み込んだ飲料の自動販売機は14万台、たばこ自販機は42万台という。

PhotoPhoto 自動車分野でのドコモの取り組み。日産リーフは会期中、MWCの主催団体GSMAから自動車・輸送部門ベストモバイルイノベーション賞に選ばれている。通信モジュールの提供、オペレータ事業、M2Mサービス事業、端末ベンダーとして、多角的にM2Mに取り組む

 将来の計画については、データ通信サービス利用者の受け入れを拡大すると同時に、モジュールの機能を強化し、端末側とサービス側の開発にも関わっていくという。

 最後に、「これまで10年間、ドコモは無線通信の可能性を追求してきた」と山田氏。「これからの10年は、無線通信を土台とした包括的サービスプロバイダを目指す」と抱負を語った。

 スピーチ後のパネルディスカッションでは、M2Mにより再び通信が“量”の時代に突入するという考えを示した。モバイル通信に対応する家電製品が急増するというのだ。例えば自動車では、電気自動車によりカーナビへの通信モジュール搭載が一気に進むだろうと見る。「電気自動車では、電池の残量と給電スポットまでの距離をきちんと教えてくれるナビゲーションシステムが必要になる」からだ。

 また、議論が“これからのオペレーターのあり方”に及ぶと、「一番重要なことは、自社のネットワークがダムパイプ化しないこと」と語った。「スマートフォン時代には、下手をすると通信だけを提供する状態になってしまう。しかしその状態はなんとしても避けたい」と山田氏。そのために「“ネットワーククラウド”として、ネットワーク内にクラウドを持ち込んでいく」とドコモの戦略を語った。

 この“ネットワーククラウド”の例として、山田氏は通話を自動翻訳するサービスの提供(MWCではブースで展示していた)を予定していると明かした。これに対し、モデレータが「Googleがクラウドで提供する通話翻訳サービスとどうやって対抗するのか?」と聞くと、山田氏は、「ネットワーク内(のクラウド)とネットワーク外(のクラウド)の競争だ」と述べる。そして、「我々はネットワーク内を熟知している。この中にクラウドを持ち、いかにしてネットワークと親和性を持たせるか。この競争には負けたくない」と意気込んだ。

Photo パネルディスカッションにて。山田氏(右から2番目)は、米Qualcommのポール・ジェイコブス氏(左から3番目)、フィンランドNokiaのスティーブン・エロップ氏(左から2番目)、カナダResearch In Motionのジム・バルシリー氏(左)、と各CEOが家電製品についてスピーチを行った後、ステージに立った

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