インタビュー
» 2011年07月15日 21時08分 UPDATE

開発陣に聞く「G'zOne IS11CA」:伝統を守りながら、スマートフォンとして新しいステージに――「G'zOne IS11CA」 (1/2)

KDDIから発売された「G'zOne IS11CA」は、カシオケータイの人気ブランド「G'zOne」シリーズ初のスマートフォン。G'zOneのコンセプトを継承しながら、スマートフォン化に向けてどのように昇華させたのか。開発陣に話を聞いた。

[青山祐介,ITmedia]

 auの2011年夏モデルの1つとしてラインアップされるカシオ計算機の「G'zOne IS11CA」。これまで、防水・防塵性能に加えて耐衝撃性能を持った“タフネスケータイ”として確固たる地位を獲得した「G'zOne」ブランドが、ついにスマートフォンとして登場した。これまで10年かけて培ってきたG'zOneブランドを引っさげてのデビューとなったが、どんなポイントにこだわって開発してきたのか。ベースモデルの「CASIO G'zOne COMMANDO」(以下、COMMANDO)との違いも踏まえ、デザインとソフト面を中心に話を聞いた。

photophoto 「G'zOne IS11CA」。ボディカラーはレッド、カーキ、ブラックの3色
photo 歴代のG'zOneシリーズ

グローバルのG'zOneが日本に上陸した

photophoto NECカシオ KDDI事業部 営業グループ主任 高木健介氏(写真=左)とNECカシオ KDDI事業部 商品企画グループ 佐合祐一氏(写真=右)

 「昨年の秋冬モデルとして『G'zOne TYPE-X』を出した直後にも、G'zOneのスマートフォン化を期待する声がありました。auのスマートフォンへのシフトも急速に進みつつあり、こうした市場動向を踏まえてなるべく早いタイミングで出したいという思いから、開発を急ぎ、この夏商戦に出すことになりました」。こう語るのは、NECカシオモバイルコミュニケーションズ KDDI事業部 営業グループ主任の高木健介氏。G'zOneの誕生以来11年にわたってマーケティングを担当してきた“ミスターG'zOne”でもある。高木氏によると、カシオブランドとしての初めてのAndroidスマートフォンがG'zOneシリーズの一台として登場することが、かなりインパクトを持って受け入れられているという。

 また、同じく同社KDDI事業部 商品企画グループの佐合祐一氏は次のように話す。「G'zOne TYPE-X以前のフィーチャーフォン(従来のケータイ)では、耐衝撃というタフ性能は、それを具現化したカッコいいデザインの味付けという意味合いの方が強かったのは事実です。確かに他のケータイも含めて、机の上から落としたくらいではそう壊れるものではありません。それがスマートフォンとなると、机の上から落としただけでも壊れるのでは、と不安を持ちながら、コンピューターのように気を付けて取り扱っているように見受けられます。そんな状況に対して、耐衝撃という性能がようやく機能ニーズとして具現化できたのではないでしょうか。本当に機能の1つとして求められるタフ性能を実現した今だからこそ、大きな反響をいただいているのだと思います」

 今回デビューするIS11CAは、2011年4月末に米Verizon Wireless向け端末として発売されたCOMMANDOがベースとなっていることも、G'zOneファンの心をわしづかみにしている。5月に行われたKDDIの新製品発表会でも、このCOMMANDOを一緒に並べ、IS11CAが同じデザインテイストや世界観を持って生まれていることがアピールされていた。それは、IS11CAが日本独自のモデルというよりも、グローバルモデルの1つとして位置付けられているからだという。高木氏は「これまでフィーチャーフォンで培ったイメージがある程度市場に浸透してきているので、今後スマートフォンに関してはグローバルに展開して行きたいと考えています。だからこそ、IS11CAはグローバルで展開しているG'zOneというブランドの1つが、日本に再上陸したというイメージを打ち出しているのです」と話す。

photophoto 北米で発売された「CASIO G'zOne COMMANDO」(左側)とIS11CA(右側)

COMMANDOと全く違う構造を採用

photo 北米で発売されたG'zOneシリーズはV字型の多面構造となっている

 こうしたグローバルブランドとしてのG'zOneを意識したIS11CAの開発は、G'zOne TYPE-Xの開発と並行して進められた。今回のIS11CAだけでなく、歴代のG'zOneシリーズのデザインを手がけてきたカシオ計算機デザインセンタープロダクトデザイン部第四デザイン室リーダーの杉岡忍氏は、デザインのポイントについて次のように語る。

 「社内に“G系”と呼ばれるG'zOneのデザインチームがあるのですが、そこでまず考えたのは、大きな画面をどうやって保護するかということでした。まず設計が入る前にデザインチーム主体で、こういうスタイリングなら構造的に行けるのではないかと、設計チームに提案することから始めました」

 この提案が、日本とは異なる進化を遂げてきた北米のG'zOneに共通する、先端がV字型の多面構造を持ったデザインだ。「G'zOne BOULDER」や「G'zOne ROCK」のような折りたたみタイプの先端をV字型にしたデザインは、北米でG'zOneのアイコンとしてとらえられており、COMMANDOの設計段階でもこのV字型のシルエットは、米Verizon側から「カシオといえばこのデザイン」と求められたほどだったという。この多面構造を持ったデザインを設計チームで検証した結果、長方形ではなく多面構造で衝撃を受ける場所を分散する方法が、非常に有効だと立証できたのだという。

 その結果、COMMANDOには、正面から見ると上下対称の六角形のシルエットと、さらに周囲をバンパーがぐるっと1周するデザインが与えられることとなった。一方、IS11CAでは画面下のスピーカー部のフォルムこそV字型の多面構造を採用しているが、画面上側は長方形に近い形状となっている。また、COMMANDOのようなバンパーが縁取るようにはなっていない。このデザイン処理について杉岡氏は「COMMANDOを量産化に結び付ける過程で、さらに耐衝撃構造をもっとタフにできないか、と新しい構造を探っていった結果生まれたのがIS11CAでした。バンパーの付け方が全く違っていて、上部のケースをバンパーが守るのではなく、ケースそのものを面で当てることで衝撃を受けるという、構造自体がCOMMANDOと全く違う作り方を考えました」と話した。

photo 一見すると分からないが、Googleロゴのある部分全体がバンパーとなっている

 確かにIS11CAの上部には、見た目上のバンパーはない。しかし、裏面側のケース上端部をエラストマー樹脂として、このケース自体がバンパーの役割を果たす構造となっている。

 「COMMANDOの方が見た目に守られている感があっていいという方もいると思います。ただ、進化感やディテールへのこだわりはG'zOneシリーズの持ち味であって、前の機種よりもっといいものにしていくというスタンスなので、実はCOMMANDOよりIS11CAの方が耐衝撃性能は優れています。また、COMMANDとIS11CAでは握った感覚が全然違います。裏面側の面の立ち上がりの角度なんかは、とても手になじむようにするなど、より使う人の立場に立ったデザインに落とし込めたと思っています」(杉岡氏)

初スマホのデザインは賭けに近いチャレンジ

 グローバルモデルとしての位置付けと、日本で使われるスマートフォンとしての2つの顔を持ったIS11CA。しかし、G'zOne初のスマートフォンという、何もかもが初めてという点では、開発チームにも不安があったという。そんな開発当初の様子を杉岡氏は次のように語る。

photophoto カシオ計算機デザインセンタープロダクトデザイン部第四デザイン室リーダー 杉岡忍氏(写真=左)とNECカシオモバイルコミュニケーションズ 商品開発本部 第二構造設計グループ主任 永峯健司氏(写真=右)

 「デザインそのものよりも、今まで『サブディスプレイが付いた折りたたみタイプ=G'zOne、タフなもの』というイメージに惹かれていたユーザーに、スマートフォンを求める人がいるのか、タフをスマートフォンで出したら、かえって引かれないか、というのがデザイン以前の問題として危惧していました。ただ、世の中的にもスマートフォンの波が来ているので、あるタイミングで新しいG'zOneの世界を作り変える必要があるとは思っていました。G'zOne TYPE-Xで原点回帰として究極の折りたたみタイプを作りましたから、スマートフォンという新しいステージを迎えて、G'zOneシリーズを最初に出すときと同じ気持ちでみんな取り組みました。これが果たして受け入れられるかと、デザイナーとしては賭けに近いチャレンジでした」(杉岡氏)

 IS11CAではデザインのみならず、内部構造も耐衝撃性能に貢献している。機構設計を担当したNECカシオモバイルコミュニケーションズ 商品開発本部 第二構造設計グループ主任の永峯健司氏は次のように語る。「バータイプのスマートフォンは、ヒンジなどのギミックがあるフィーチャーフォンに比べて耐衝撃の面では構造的に有利なのは確かです。しかし、スマートフォンはある程度の大きさと重さがある分、基本に忠実にしつつも衝撃を確実に抑えていくような構造を取っていかないといけません。そのため、内部と外部を分けた二重構造にして、さらに落下したときにディスプレイが直接当たらないように周囲の厚さを確保するなど、基本的なことですが、今まで培ってきたノウハウをすべて盛り込みました」

 構造的には液晶ディスプレイをマグネシウムのフレームで囲い、その外側に強固な樹脂のケースを付けることで、ひねりなどに対して全体の剛性を保つような構造となっている。さらにディスプレイ表面は米Corningのゴリラガラスで覆って保護。こうした構造は設計の段階で落下などのシミュレーションや、試作品を使った実験を繰り返し行い、バンパーの突起量などをコンマ1ミリ単位で調整した。マグネシウムのフレームを使った二重構造という点ではCOMMANDOと同じ作りだが、IS11CAを開発するにあたって「やり直しに近い形で設計をしている」(永峯氏)という。

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