スマートフォンはデュアルコアでもっと速くなる――Samsung電子のAndroid戦略に迫る開発陣に聞く「GALAXY S II」(2/2 ページ)

» 2011年07月29日 16時07分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
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 同社独自のユーザーインタフェース(UI)である「Touch WIZ」についても、ウィジェットのサイズが変更できるライブパネルや、モーションセンサーを生かしたユーザー体験(UX)の提供、そしてホーム画面を切り替える際の3Dエフェクトなど、新しい要素を追加した。もちろん、新要素が追加されるだけでなく、ユーザーの声を反映したインタフェースの見直しも図られている。

 同社でUI/UX開発を担当しているウォン・ジュンホ氏とリ・スクキョン氏は、「ユーザーからの声(VOC:Voice Of the Consumer)は、新製品開発でも最も重要視する要素」と口をそろえる。例えばGALAXY S IIは、電源ボタンの位置がGALAXY Sと左右が逆になり、またUSB端子の位置が端末の上面から底面に移っている。これについてウォン氏は「端末を見ないで操作するときに、どこにボタンがあると便利なのか。GALAXY SユーザーのVOCを元に、BUI(Blind User Interface)の開発を専門に行う部署がレイアウトを再検討した結果です」と明かす。また「無線LANなどの通知アイコンを見やすくするため、ピクトエリアの背景部分を濃い色にしました」(リ氏)と、さらに細かいところもVOCを反映して改善している。

photophoto 背面パネルと一体型のGALAXY S II用レザーカバー。VOCからのアイデアをもとに、Samsung電子のオフィシャルパートナー企業である「Anymode」が製品化した

 VOCは使い勝手意外にも、端末にプリインストールするアプリを決める基準になったり、ケースやアクセサリーなど、オプション品を開発する際のアイデアのもとになったりと、あらゆる面でSamsung電子の端末作りに影響を与えている。さらにSNSへの取り組みを専門に進めるチームがあり、メーカーアプリの「Social hub」もそこで開発された。スマートフォンを使うユーザーの中でも、SNSを頻繁に使う層は限られているので、VOCをもとに彼らのニーズにマッチする取り組みをしなくてはいけないという。

 ウォン氏は、「UI/UXの新しい発想については、VOCをもとに課題を出して改善策を練っています。デザイン拠点が世界各地にありますから、皆でグローバルモデルに搭載する共通のUI/UXを開発しています」と明かす。メンバー同士は自転車や時計などの展示会に訪れたり、共同のデザインワークショップを開催するなどして、発想のアイデアを育ている。

 「こうした活動が1年後2年後のデザインにどう盛り込めるのか。“実績”までのロードマップを引いて、取り組んでいます。GALAXY S IIは、ハードカバーの本など日頃持って触れるものに質感を近づけたいと考えました。そのために、どうすれば軽く薄くなるのか、また光に当たったときにスリムでスマートに見えるような形状を検討しました」(ウォン氏)

スマートフォンUIはどう進化する?

 このように開発されたGALAXY S IIは、まずヨーロッパ市場向けに仕上げ、その後、韓国、日本、中国、米国向けの各キャリアむけにローカライズを行った。バン氏は、「それぞのローカライズの深さはケースバイケース。OSまで手を入れることもあれば、アプリを追加するだけのこともある。どの地域にもそれぞれの難しさがある」と説明する。

 日本のドコモ向けでは、ワンセグへの対応が目立つ。ローカルな規格だけにさぞかし苦労したのかと思いきや、意外にすんなり搭載できたという。これまでにも同社はワンセグ搭載モデルをソフトバンクモバイルに供給しており、社内に十分なノウハウを持っているためだ。また、韓国にはワンセグに似たモバイル放送である地上波DMBがあることや、グループにデジタル家電部門があることも素地になっているようだ。

photo 韓国国内で販売されているGALAXY S II。現地のモバイル端末向け放送である地上波DMBに対応している

 なおドコモの発表会場のデモ機では日本語のSwype入力が行えたが、実は開発段階のもので製品版には搭載されていない。バン氏は「準備段階で何も約束できないが、既存ユーザーにも提供できるよう努力している」と、アップデートで対応する可能性を示唆した。

 タッチパネル操作が主流のスマートフォンは、フィーチャーフォンと比べてUIのバリエーションがまだまだ少ない。ウォン氏とリ氏はスマートフォンのUIについて、「ディスプレイサイズを大きくして操作性を向上させたり、モーションセンサーを使って直感的な操作を実現することは可能だが、もっと使いやすくするためにどういった形状にするべきなのか。まだまだ試行錯誤している段階で、今後どのように進化していくのかまったく分からない」と、その進化が止まらないと予測する。

 「電車の中ではスマートフォンを両手で使うのが難しい。でも、これから新しいUI/UXが出てくることで、使い勝手はどんどん変わっていくでしょう。それと、アクセサリーを使ってカスタマイズすることで、個々のユーザーに合った新しい使い方が登場する可能もあります」(リ氏)

 スマートフォンのデザインという点で気になるのが、米Appleとの訴訟に関してだ。Samsung電子では法務部からのコメントがすべてで、開発メンバーがコメントできる立場にはないとしている。しかし関係者からは、「あくまで個人的な感想だが、エンドユーザーが認識する機能のメタファーは普遍的なもの。“テレビ”や“車”をアイコン化すれば似たものになる。今回の問題に限らず、スマートフォンではこういう問題が多くなると思う」という声も聞かれた。

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