スマホで簡単にカード決済できる「PayPal Here」、7月に本格導入“顔パス”で決済も

» 2012年05月09日 19時26分 公開
[田中聡,ITmedia]

 ソフトバンクが5月9日、米PayPal(以下、ペイパル)と提携し、日本で電子決済サービスを推進する合弁会社「PayPal Japan」を設立することを発表した。ペイパルとソフトバンクは10億円ずつ出資し、合弁会社への出資合計額は約20億円となる。

 合弁会社設立に伴い、iPhoneやAndroid端末などのスマートフォンを利用した決済ソリューション「PayPal Here」を日本で導入することも発表した。PayPal Hereでは、スマートフォンに挿入したカードリーダーを使ってクレジットカードやデビットカードの決済ができるほか、アプリ(無料)を利用して現金やPayPalによる決済も可能。これまでコストなどの問題からクレジットカードの導入が難しかった中小店舗にとっても、スマートフォンを使ったクレジット決済が容易になる。PayPal Hereはすでに米国、カナダ、香港、オーストラリアで導入されており、日本は5番目の導入地域となる。

photophoto 合弁会社設立の狙いやPayPal Hereについて説明する孫社長(写真=左)。左からPayPal Japan CEOの喜多埜裕明氏、イーベイ 社長 兼 CEOのジョン・ドナホー氏、ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏、ペイパル 代表のデイヴィット・マーカス氏(写真=右)

スマホアプリ+カードリーダーで決済できる「PayPal Here」

 クレジットカードを用いたオンライン決済サービス「PayPal」は、購入先のショッピングサイトなどに、カード番号や住所などの個人情報を知らせずに決済ができるのが大きな特徴。過去12カ月に1度利用されたアクティブアカウントは世界で1.1億以上にのぼり、日本を含めて190の国と地域・25の通貨に対応している。「ペイパルのアカウントを持っていれば、サイトごとにクレジットカードを登録せずに1回で支払いができる。ペイパルを利用することで利便性が飛躍的に向上する」とソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏は説明する。現在、PayPalを導入している日本のオンラインショッピングサイトは限られるが、PayPal Japanの設立によってPayPal導入サイトが増加することも期待される。孫氏は「オンラインとオフライン決済のナンバーワンのポジションを築き、全決済のスタンダードを目指す」と意気込む。日本におけるPayPalのオンライン決済拡充は今後の展望といえるが、PayPal Japanがまず取り組むのが、リアル店舗での新しい“オフライン決済”サービス「PayPal Here」の導入だ。

photophotophoto 世界でのペイパルのアクティブアカウントは1.1億にのぼる(写真=左)。日本の多くのオンライン決済ではサービスごとにクレジットカードを登録する必要がある(写真=中)が、PayPalに一本化できればその手間が省ける。なお、このスライドはあくまで未来像をイメージしたもので、具体的な導入は未定(写真=右)

 「日本のオフラインでのカード決済利用率は12%」と孫氏が話すように、カード決済という点で日本は後進国だ。これは、クレジットカード決済システムの導入コストが10万円前後と高い、購入代金の回収期間に15〜30日を要する、クレジットカードの決済手数料が5〜8%と高いなどの障壁により、クレジットカードの導入店舗が少ないことが大きな理由だ。PayPal Hereは、この問題を解決すべく、導入コストはカードリーダー代の1200円前後(想定小売価格)、決済手数料は1件あたり5%とし、即時入金する。カードリーダーはソフトバンクショップで購入できるほか、ソフトバンクの法人営業を経て店舗に販売する場合もある。カードリーダーやアプリを利用するには店舗側もスマートフォンを導入していることが前提となるので、ソフトバンクはスマートフォンの法人営業も並行して展開する。「店舗開拓はソフトバンクが責任をもって行う。カードリーダーの導入店舗を100万〜200万に増やし、ほとんどの店で(PayPal Hereを)使えるようにしたい。店長さんや店員さんに(カードリーダーやアプリの)使い方も説明する」(孫氏)

photophotophoto 日本でのクレジットカード利用率は韓国、米国、英国に比べると少ない(写真=左)。日本でクレジットカード決済システムを導入している店舗は約4分の1ほど(写真=中)。クレジットカード導入の障壁(写真=右)
photophoto PayPal Hereは中小店舗でも導入しやすい(写真=左)。ソフトバンクの法人営業でPayPal Here導入店舗を拡充する(写真=右)

PayPal Hereの利用方法

 PayPal Hereはどのような流れで使用するのか。まずアプリは店舗とユーザーで異なる。店舗向けアプリには店舗情報や商品情報をあらかじめ登録しておく必要がある。店舗では店員が決済時にアプリを利用し、PayPalや現金で支払う場合はアプリ上でそのまま決済できるほか、(後述する)お店にチェックインしたユーザーの決済も行える。クレジットカードで決済する場合は、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿入したリーダーでカードを読み取って決済する。さらに、アプリを使うことでPOS(販売時点情報管理)を同時に導入できるというメリットもある。

 ユーザー向けアプリでは、現在地近くにあるPayPal Here導入店舗を検索して“チェックイン”できる。チェックインをすると店舗側のアプリにユーザーの顔写真や名前が通知され、ユーザーは自分の名前やPayPalで支払う旨と、希望の商品を伝えるだけで決済が完了する。もちろん、現金やクレジットカードを出す必要もない。購入後にはレシートがメールで届く。さらによく通うお気に入りの店を登録しておけば自動チェックインもでき、常に“顔パス”で買い物ができるわけだ。「スマートフォンがポケットに入っていれば、店の人が確認するだけで、お客さんをまるでVIPのように扱ってくれる」(孫氏)。チェックインした店舗での決済はPayPalで行うので、ユーザーはあらかじめPayPalアカウントを登録しておく必要がある。アプリとカードリーダーはソフトバンク端末に限らず、iPhoneとAndroidどちらにも対応している。

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photophotophoto PayPal Hereアプリで店舗にチェックインして決済するまでの流れ。決済後はレシートがメールで届く
photophotophoto 店舗側で店舗情報、商品名、価格などをアプリに登録する
photophotophoto 販売する商品や個数、決済方法などを選んで決済する。チェックインしたユーザーがいると、「PayPal」欄に(チェックインした)ユーザー数が表示される(写真=左、中)。チェックイン中のユーザーを店舗側で即座に確認できる(写真=右)
photophotophoto 最後に「支払いを完了」を選ぶ(写真=左)。こちらはユーザー向けのアプリ。近所のPayPal Here対応店舗が一覧表示される(写真=中)。チェックイン画面(写真=右)
photophoto PayPal Hereのカードリーダーでクレジットカードを読み取る

 リアル店舗での決済サービスという点で、PayPal Hereは「おサイフケータイ」とも競合する。ただ、孫氏はおサイフケータイよりもPayPal Hereの方が未来は明るいと考える。「おサイフケータイは使う金額が少なく、端末にチャージをするのに手間がかかる、新しい機種に乗り替えた際に残金を移しにくいなどの問題がある。あまり使われていないというのが実態ではないか。PayPal Hereではクレジットカードで何万円でも何十万円でも使える。もちろん100円200円でも気軽に使え、支払いの幅が一気に広がる」と話した。

 「これからはユーザーがインターネットで情報収集をしてから来店して購入するという、オンラインからオフラインを示す『O2O(オーツーオー:Online to Offline)』が業界の新しいキーワードになる」と孫氏。現在は20%程度のO2Oによる決済を、将来的には50%まで引き上げたいとした。PayPal Hereは5月10日から一部の店舗で試験導入を開始し、7月から本格導入を進める。

photophotophoto ネットで情報を収集してから店舗で購入するという「O2O」が今後重要になる(写真=左)。米国ではO2Oによる決済が5割を占める(写真=中)が、日本では2割に過ぎない(写真=右)
photophoto ソフトバンクグループのO2Oパフォーマンスを生かし、日本でのO2Oを拡充していく

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