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» 2012年10月03日 15時16分 UPDATE

CEATEC JAPAN 2012:LTE端末でもバッテリーが持ちます――KDDIが推進する「スマートネットワーク」

LTE端末はバッテリーが持たない――そんなイメージが定着しているかもしれないが、KDDIはLTE端末にバッテリーの負担がかからないよう工夫している。同社が目指すのは、4G/3G/WiMAX/Wi-Fiを意識せず快適に通信できる「スマートネットワーク」だ。

[田中聡,ITmedia]
photo KDDIブース

 KDDIは、4G LTE/3G/WiMAX/Wi-Fiネットワークに関連する技術やサービスをCEATEC JAPAN 2012のブースで紹介している。直近では「iPhone 5」のLTE通信に注目が集まっていることもあり、4G LTEの新技術を大きくアピール。ブースでは3G対応とLTE対応のAndroid端末で5.5Mバイトほどのファイルを同時にダウンロードするデモも実施しており、LTEの高速通信を体感できる。LTE対応のAndroid端末はディスプレイ以外は隠されており、撮影も禁止されていたが、今冬に登場するであろうLTE対応Android端末への期待が高まった。

LTE電波を無駄に探さないよう基地局をチューニング

 LTEは通信速度が向上する一方で、端末への負荷が大きく、3Gと比べてバッテリーが減りやすいと言われている。そこでKDDIは、LTE端末を利用しても極力バッテリーが減らないよう工夫している。LTE圏外になって3Gに切り替わると、端末がLTE電波を探しに行くが、3Gエリアでは3Gだけを見てLTE電波を無駄に探さないようにしている。例えば「3GからLTEエリアに入ると、この上にLTEが重なっているのでサーチするよう、基地局から端末に通知をするが、郊外などまったくLTEの入らない場所では、そうした通知をしていない」(説明員)という。

 LTEと3Gが頻繁に切り替わるエリアでは、特に待受時間が減りやすいといわれているが、そうした環境でも「LTEの電波を何度も探して失敗するといったことがないように、調整してチューニングしている」という。これは端末側ではなく基地局側のチューニングで実現している。現時点ではiPhone 5のみに使われている2.1GHz帯だけでなく、800MHz帯と1.5GHz帯のLTE基地局にも同じ仕組みを採用しているため、今後登場するLTE対応Android端末も同じメリットを得られる。この技術は無線技術の標準化団体 3GPPと3GPP2の仕様に基づくが、ソフトバンクのiPhone 5(LTEネットワーク)には採用されていない。

 さらに、KDDIのLTE網では、実際に通信をしている間だけ電波を発して、通信をしていないときは電波を発しない(基地局との無駄な接続をなくす)よう工夫している(アンテナの受信能力は維持される)。車のアイドリングストップのようなもので、無駄な電力消費を抑えられる。3Gでも同様の機能はあるが、LTEの方が効率化されているという。こうしたネットワークの工夫により、iPhone 5の待受時間はAppleの公称値である「225時間」よりも長い「260時間」(KDDI調べ)を実現したという。また、LTEの電波が弱い場所では事前に3Gへの接続を準備し、LTE圏外になるとスムーズに3Gへ切り替える技術も導入している。

“事前準備”を済ませてCSフォールバックを高速に

 現在、LTE網で着信をすると、3Gの回線交換に切り替える「CSフォールバック」という技術が使われている。auの4G LTEではこれを高速化する「eCSFB(enhanced Circuit Switched Fallback)」を採用しており、他のLTEでは8秒かかるところを4秒で切り替わるとしている。これはどのような仕組みで実現しているのだろうか。「通常は着信を受けてから、回線交換につなぐよう基地局から端末側に指示を出して、回線交換のネットワークに接続するが、eCSFBではLTEネットワークを通じて、あらかじめ3Gの交換機とLTEのコアネットワークがつながっている。3Gネットワークに仮想的なセッションを確立している状態」(説明員)だという。つまりネットワーク側で事前に準備しておくことで、着信時に素早く回線交換のネットワークに接続できるわけだ。

 4G LTEでは「SON」も導入されている。SONは「Self Organizing Network」のことで、基地局の運用を自動化できるというもの。「例えば新しい基地局を設置する際に、隣にある既存の基地局からハンドオーバーさせる際に、その情報を手作業でするところを、SONの導入で自動化できる。災害時に1つの基地局が倒れてしまった際に、周りの局が互いに連携しやすくなる副次的な効果もある」と説明員はメリットを話す。また、1つの地点における通信のログを記録する(学習する)ことで基地局のパラメーターを自動調整し、これまではつながらなかった場所で徐々につながるようになる――というメリットもある。

photophoto 高速、省電力、つながりやすさを特長とする「4G LTE」。2012年度末に実人口カバー率96%を目指す(写真=左)。データ通信中心に、WiMAXも引き続き展開していく(写真=右)

Wi-Fi利用時のバッテリー持ちも向上

photo 「au Wi-Fi SPOT」と「Wi-Fi HOME SPOT」の主な特徴。いずれも5GHz帯での通信をサポートする

 マルチネットワークを展開する上で、Wi-Fiも重要な役割を果たす。KDDIは公衆無線LANサービスとして「au Wi-Fi SPOT」を展開しており、スポット数は20万に達している。au Wi-Fi SPOTのバックボーンは「圧倒的にWiMAXが多い」(説明員)が、WiMAXでは処理しきれないトラフィックが発生するような場所では固定網も活用していくという。au Wi-Fi SPOTは2.4GHz帯よりも混雑していない5GHz帯での通信をサポートしているので、より快適な通信が期待できる(利用者が2.4GHz帯/5GHz帯を選ぶことはできない)。設置場所は屋内が大半だが、商店街など屋外での設置も検討しているという。ただし屋外ではアクセスポイントの防水性能をどう実現するかが課題だと説明員は話していた。

 スマートフォンのWi-Fi機能も向上させ、2012年夏モデルからはWi-Fiをオンにした際のバッテリー持ちを改善したほか、3GとWi-Fi切り替え時の待ち時間を短縮した。既存モデルも一部はアップデートで対応している。バッテリー持ちについてはWi-Fiの電波が弱い場所ではあえて接続させないことに加え、周囲のWi-Fi電波を探す間隔を長くすることで、電力を使う回数を減らしているという。「Wi-Fiをオフにする理由を作りたくない。オンにしても影響がないレベルには来ていると思う」(説明員)。なお、このWi-Fi機能向上はiPhone 4SやiPhone 5には現時点では対応していない。Appleとの調整が必要のため、簡単には搭載できないようだ。

 KDDIは現在、au Wi-Fi SPOTへワンタッチで接続できるウィジェットを提供しているが、この接続ツールの拡張も予定しているという。例えば、ドコモのXperia GX/SXに採用されている「エリア連動Wi-Fi」のような機能の実装だ。登録された場所の近くで自動でWi-Fiがオンになるというものだが、その場所を特定するのにGPSを使ったり通信が発生したりするので、メリットとデメリットの総合的な検討が必要だと説明員は話していた。

photophoto au Wi-Fi SPOTで設置されているアクセスポイント(写真=左)。宅内用のWi-Fiルーター「Wi-Fi HOME SPOT」

 KDDIが目指すのは、4G LTE/3G/WiMAX/Wi-Fiのネットワークを意識することなくシームレスに通信ができる“スマートネットワーク”だ。消費電力を抑えたり、各ネットワークへ素早く切り替えたりする工夫はその一環でもある。単なる「高速通信」「マルチネットワーク」から一歩進み、ユーザーの利便性に配慮したネットワーク展開といえるだろう。

photophoto さらに快適な通信を目指すための取り組み。上のCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスは、コンテンツプロバイダーが提供するサーバよりも近距離にある“エッジサーバ”にコンテンツを格納し、世界中に配置することで、通信を高速化するもの。下は、携帯電話のネットワーク品質を把握するための仕組み。2012年度中に「エリア品質情報送信機能」をスマートフォンに採用し、対策が必要なエリアを迅速に把握する(写真=左)。各地域の細かい区分ごとにトラフィック量をリアルタイムでグラフ表示するツールも導入しており、トラフィック対策に役立てている(写真=右)

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