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» 2013年05月11日 14時55分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(4月30日〜5月10日):ソフトバンク夏モデルと“最強のネットワーク”の中味/au LTEエリア化の今後 (1/3)

連休の狭間を挟んだ今回は、4月30日にKDDIとソフトバンクが決算会見を開催し、5月7日にはソフトバンクモバイルが夏商戦向けの機種他サービスを発表した。今回はソフトバンクの新機種やau決算会見で挙がったトピックを解説したい。

[石野純也,ITmedia]

 ゴールデンウィークの“狭間”を含んでいたものの、4月30日から5月10日にかけての2週間は、ケータイ業界の話題に事欠かなかった。4月30日には、KDDIとソフトバンクが決算会見を開催。ゴールデンウィーク明け初日となる5月7日には、ソフトバンクモバイルが夏商戦向けの新端末や新サービスを発表した。今回は、ソフトバンクの新端末やKDDIの決算会見で挙がった各種トピックを取り上げ、それぞれのニュースを読み解いていきたい。

ソフトバンクが夏商戦向けのスマホ6機種を発表、ハイエンド機にはフルセグを搭載

 ソフトバンクモバイルが発表した夏モデルは、スマートフォンが計6機種。「みまもりケータイ3 202Z」や「Pocket WiFi 203Z」を加えて、総勢8機種のラインアップとなる。ここでは、スマートフォンに絞って、ラインアップの全体をおさらいしていこう。

photophoto 会見にはソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、孫正義氏が登壇。普段通り、端末の詳細な解説も1人で行った(写真=左)。ソフトバンクの夏モデル。当日発表されたスマートフォンは全5機種で、ここに「シンプルスマホ」を加えた6機種のラインアップとなる(写真=右)

 夏モデルの“ツートップ”に位置づけられるハイエンドモデルが、シャープ製の「AQUOS PHONE Xx 206SH」と、富士通モバイルコミュニケーションズ製の「ARROWS A 202F」だ。どちらの端末も、5インチ、フルHDのディスプレイを搭載。この高い解像度を生かす機能として、「フルセグ」に対応している。携帯電話端末を中心に採用されるワンセグは、地上波全13セグメントのうち、1セグメントだけを使っている。その分、電波を受信しやすくなるが、映像は240×320ピクセルと非常に小さい。ディスプレイの解像度がそれほど高くなかったころは十分だったが、1080×1920ピクセルのフルHDディスプレイで表示するとさすがに粗が目立つ。

 端末を発表したソフトバンクの代表取締役兼CEO、孫正義氏が「フルセグを活用することでギザギザが気にならない」と述べていたのには、このような理屈がある。トレンドのフルHDディスプレイにフィットしているだけに、孫氏が「時代はワンセグではなく、フルセグが当たり前になる」というように、今後、スマートフォンの標準的な機能になっていきそうだ。

photophoto ハイエンドモデルはシャープの「AQUOS PHONE Xx」と、富士通の「ARROWS A」の2機種。どちらもフルセグに対応している

 一方で、12セグメント分の電波を受信しなければならないフルセグは、ワンセグより移動に弱く、電波を完璧に受信しにくい欠点もある。そのため、どちらの端末もフルセグとワンセグを自動で切り替える機能に対応。AQUOS PHONE Xxには、電波の受信環境が弱くなりがちな屋内でもテレビがきちんと映るよう、宅内アンテナに接続するためのケーブルも同梱される。フルセグに関する2機種の主な違いは、AQUOS PHONE Xxが録画に対応、ARROWS Aが非対応といったところだ。

photophoto 「AQUOS PHONE Xx」は録画に対応する。Micro USB端子にアンテナを取り付けられるため、宅内用アンテナで録画して外出先で見るといった使い方もできそうだ。対する「ARROWS A」も視聴のみだが、フルセグを受信可能

 AQUOS PHONE Xxは、ソフトバンク向けのシャープ製端末として、初のフルHD対応となる。春モデルでも同じペットネームの端末が発売されたが、発売時期が近いだけに両者は機能で差別化も図られている。春モデルは省電力性能に定評のあるIGZO液晶を採用しているが、新機種はフルHDになった代わりに液晶は「S-CG Silicon」となる。カメラも、光学手ブレ補正は非対応になったが、1310万画素でレンズのF値が1.9と、暗い場所でも明るい写真が撮れる工夫を盛り込んでいる。

photo 「AQUOS PHONE Xx」は、フルセグだけでなく、カメラにもこだわった。レンズがF値1.9と明るいのも特徴だ

 対するARROWS Aは、富士通端末におなじみの指紋センサーを搭載。センシング技術で使い勝手を高める「ヒューマンセントリックエンジン」を内蔵しており、端末を持っている間はディスプレイの点灯状態を維持する「持ってる間ON」や、端末を机などに置くとすぐにディスプレイが消灯する「水平時すぐにスリープ」といった機能を利用できる。

photo 「ARROWS A」の背面には、同シリーズでおなじみのスイッチ式指紋センサーを搭載する

 ハイエンドに比べて機能は少ないが、その分、持ちやすさに影響するサイズや重さなどを抑えたミッドレンジモデルが、シャープ製の「AQUOS PHONE ss 205SH」と、京セラ製「DIGNO R 202K」だ。AQUOS PHONE ssは、幅約60ミリのコンパクトな端末で、ディスプレイは4インチとなる。「PANTONE 5 107SH」に搭載された放射線測定機能にも対応し、測定時間は2倍速くなった。一方でPANTONE 5とは異なり、この機能はあくまで控えめに搭載されている。PANTONE 5では専用キーにデフォルトで放射線測定機能が割り当てられていたが、AQUOS PHONE ssでは同様のキーがあるものの、あくまで自分でアプリを割り当てるという位置づけになっている。

photophoto コンパクトな「AQUOS PHONE ss」は、2倍高速になった放射線測定機能も搭載。ただし「PANTONE 5」とは異なり、クイック起動キーには標準で割り当てられなくなった

 DIGNO Rは、重さ約94グラムで世界最軽量をうたうスマートフォン。軽い上に幅60ミリとコンパクトだが、防水・防塵に対応しており、充電端子などにキャップがないのも特徴だ。また、ディスプレイ全体が通話時のレシーバーになる「スマートソニックレシーバー」を搭載する。“端末の重さ”がどこまで売りになつながるかは未知数だが、iPhoneでも5発表時には4Sと比べた軽さが強調されていた。大型化し、重さが増すスマートフォンの中で、軽さをアピールしていたのも新鮮だった。会場では風船にぶら下げ、DIGNO Rの軽さをアピールしていたが、こうした手法で軽さを訴えていけば、ユーザーに評価される可能性もありそうだ。このほか、ディズニー・モバイルの新端末として、このDIGNO Rがベースとなる「DM015K」も用意される。

photophoto 世界最軽量をうたう「DIGNO R」。会場では、風船で浮かせるデモが行われていた

 「1000人以上に生の声をお聞きした」(孫氏)と徹底的にシニア世代を調査して生まれたのが、「シンプルスマホ 204SH」だ。ドコモが販売中の「らくらくスマートフォン」はシニア世代を中心にスマッシュヒットしているが、ここと同じ層をターゲットにした1台。らくらくスマートフォンと同様、Androidに大きく手を加えた専用のUIを搭載する。月500Mバイトまで2980円の専用プラン「パケットし放題 for シンプルスマホ」も提供する。

 らくらくスマートフォンとの大きな違いは、通話やメール用のボタンを搭載しているところにある。着信時などにはここが光り、どのボタンを押せばいいのか一目瞭然。近い機能はフィーチャーフォンにも搭載されていたが、その良さをスマートフォンに受け継いだ格好だ。一般的なAndroid端末にはこうしたキーがなく、OSにも大幅に手を入れることになるため、「Googleとはかなり交渉を重ねた」(ソフトバンク関係者)という苦労の末に生まれた1台だ。

photo シニア世代を徹底的に調査して生まれた「シンプルスマホ」。通話やメールの専用キーも搭載される

 ディズニーモバイルを除くとハイエンド2機種、ミッドレンジ2機種、シニア向け1機種と、ラインアップは厳選されているが、ソフトバンクは端末を絞り込み、サービスや特定のセグメントに向けた端末で差別化をしていく方針だ。その狙いを、孫氏は次のように語っている。

 「スマートフォンの特徴として、ソフトはオペレーティングシステムがOTAでどんどん進化していく。したがって、その進化の半分であるソフトの部分は、自らどんどん更新していくことができる。(中略)機種は絞って、新しいサービスだとか、シニア向けだとか、従来取りこぼしていた部分、新しく幅を広げる部分に、我々の特徴を出していきたい」

 ソフトバンクで最も売れている端末はiPhoneのため、Androidで無理にバラエティを出すと、その分それぞれの販売数が減ってしまうという事情もありそうだ。端末はシャープが3機種とやや偏りがあるが、これは「ソフトバンクではiPhoneの次にシャープのシェアが高いため」(ソフトバンク関係者)。フィーチャーフォンから乗り換える際に、同じメーカーを指定するケースも多く、そうしたニーズに応えた結果のラインアップとも言える。

photo 報道陣からの取材に応える孫正義氏。特にSprintとのシナジー効果については熱を込めて語った

 一方で、孫氏の発言からは、これだけでラインアップに満足しているわけではないこともうかがえた。囲み取材でSprintを買収することのシナジー効果を問われた孫氏は、Sprintとの交渉が昨年10月に始まったことに触れ、「だいたい端末を用意するのに18カ月ぐらいかかる。当然国際ブランドメーカーはまだ少なくて、(今回は)日本のメーカーを中心に準備してきた。Sprintとのディールが成立すれば、国際メーカーも続々とやってくる」と述べている。SprintはCDMAとLTEを展開するキャリアだが、最近ではCDMAとUMTS(W-CDMA)に両対応したチップも多く、シナジー効果が生まれる可能性はありそうだ。

 実際、海外ブランドの端末が発売されそうな気配もある。LGエレクトロニクスは、9日、日本にTD-LTE(AXGPと完全互換)対応のスマートフォンの投入計画があることを韓国で発表した。同通信方式でサービスを展開しているのはソフトバンクだけなので、計画が実現すれば、ドコモやKDDIと同様、Optimusブランドの端末が同社からも発売される可能性がある。LGエレクトロニクスによると、投入計画には北米も含まれているという。TD-LTEは、Sprintが子会社化を予定するClearwireも導入する。Android端末のブランド力という点では他社に見劣りするソフトバンクだが、Sprintの買収が成立すれば、挽回もありえない話ではない。

 また、孫氏は「国内メーカーがSprintに出荷するビジネスチャンスも生まれる」とも語っている。Sprintのラインアップの一角には、すでに京セラが食い込んでいるが、そのほかのメーカーに門戸が開かれれば、国内勢の課題だった海外展開の弾みになりそうだ。

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