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» 2015年02月27日 22時34分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(2月16日〜27日):フリービットモバイルと楽天モバイルが目指す“価格競争の向こう側”

2月の中旬から下旬にかけては、MVNOの発表が相次いだ。中でも注目したいのが、フリービットモバイルとCCCグループの資本提携と、さらにサービスを拡充させる楽天モバイル。価格競争を超えた次の一手を読み解いていきたい。

[石野純也,ITmedia]

 フリービットモバイルとCCCグループの資本提携、楽天モバイルの新サービス発表、NifMoのIP電話定額プランの導入予告、mineoのプリペイドパッケージ導入など、MVNO関連のニュースが相次いでいる。「低価格」で注目を集めたMVNOだが、データ通信料は2Gバイト=900円台が相場になり、価格競争は行き着くところまで来つつある。差別化には、次の一手が必要だ。

 こうした状況の中、注目したいのがフリービットモバイルとCCCが立ち上げるトーンモバイル。フリービットモバイルのノウハウを生かしつつ、TSUTAYAやT-SITE、Tポイントを運営するカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)の顧客基盤を生かせるのが、同社の強みになりそうだ。これに対して、楽天モバイルも1000万契約の目標に向け、販路や楽天市場との連携を強化していく。

 これら2社の動きからは、既存のサービスとモバイルを連携させたMVNOが台頭しつつある様子が垣間見える。今回は、トーンモバイルと楽天モバイルの2社が、次にどのような手を打ってくるのかをそれぞれ見ていきたい。

フリービットモバイルがトーンモバイルに、サービスも全面的に刷新

 フリービットは、CCCグループと資本提携を行った。3月1日に別会社として分離するフリービットモバイルが第三者割当増資を行い、CCCが51%の株式を持つ合弁会社となる。合わせて、3月1日は社名をトーンモバイルに変更。CCC傘下の企業として、合同でサービスを行っていく。やや複雑なスキームだが、これまでフリービットが単独で運営していたMVNOのモバイル事業を切り離し、CCCやCCCモバイルと連携して事業を行っていく形になる。その仕組みについては、以下の写真内の図を参照してほしい。

photophoto CCCグループとの提携内容を解説する、フリービットの石田会長(写真=左)。フリービットモバイルを本体から切り離し、CCCが51%の第三者割当増資を引き受け、「トーンモバイル」に名称を変更する(写真=右)

 フリービットモバイルは、回線だけでなく、独自端末の「PandA」や、独自ショップの「ATELIER (アトリエ)」を一貫して手がけており、垂直統合型のビジネスモデルを志向している。100万契約を目標に掲げ、フランチャイズも含めた300店舗の展開を計画するなど、MVNOの中ではユニークな存在だった。徐々に事業を拡大してきたフリービットモバイルだが、「目標にしている100万契約や、その先を目指すには足りないものがあることが分かってきた」(フリービット 代表取締役会長 石田宏樹氏)という。それが、「ブランディング、マーケティング、販売方法」(同)だ。

photophoto 独自の端末やショップを手がけてきたフリービットモバイル。MVNOの中では異色の存在だ
photo フリービットとCCCの、お互いに足りないところを補完しあう関係になっているという

 これに対してCCCは、代表取締役社長兼CEO 増田宗昭氏が「創業以来、企画会社をするというのが理念」と述べているように、TSUTAYAやT-SITE、Tポイントなど、さまざまなサービスを手がけている。増田氏によるとTSUTAYAは全国で1447店、Tポイントはアクティブユーザーだけで5242万人と、巨大な顧客基盤を持つ。つまり、石田氏が述べていたブランディングやマーケティング、販売方法には一日の長があるとういわけだ。

photo CCCのモバイルに対する意気込みを語る、増田社長兼CEO
photophoto 5000万を超えるTポイント会員を抱えるCCC

 一方で、同社は2015年11月にCCCモバイルを設立していたが、まだMVNOのサービスを開始していなかった。2015年中のサービス開始を目標に据えていたものの、動きの激しいMVNO業界の中ではこのスピードの遅さは致命傷になりかねない。その点、フリービットモバイルはMVNOのノウハウを十分持ち合わせている。同社はフリービットモバイルのほかに、以前からMVNEも展開しており、ほかのMVNOの支援も本業。石田氏が「分かりやすい形で提携できる」と述べているのは、そのためだ。フリービットモバイルを切り離したフリービット本体にとってもメリットがあり、「MVNEとしての成長が期待できる」(同)という。

 販路やマーケティングに加えて、端末や回線もフリービットモバイル時代より大幅に強化される。現状、フリービットモバイルのサービスは3Gで行われているが、石田氏はLTEへの対応も示唆している。さらに、「(中古携帯端末販売店の)イオシスさんのノウハウも使わせていただく」(同)といい、独自端末の開発にも意欲的だ。ユーザー層に広がりが出れば、PandA1機種だけだった同社のラインアップにも選択肢が生まれるかもしれない。

 ただし、現時点ではトーンモバイルが発足すること以上の具体案は、決まっていないという。「現時点では戦略的にいろいろなところを詰めている」(石田氏)段階で、決定、公表されているのは、二子玉川にオープンするCCCの家電量販店でトーンモバイルが取り扱われることのみ。CCCとの提携というと、TSUTAYAでの販売や、Tポイントとの連携などは十分考えられそうだが、こうした点もすべて「検討中」(同)で、具体的なサービスはまだ見えていない。

photo CCCは、二子玉川に新しいコンセプトの家電量販店をオープンさせる。トーンモバイルもショップも、ここに作られる予定

 とはいえ、CCCの顧客基盤を生かせれば、フリービットモバイル単独で事業を行っていたときよりも、普及のスピードに弾みをつけられることは確実。サービス次第の面はあるが、MVNO市場に現れた新たな台風の目になりえる1社だ。

楽天スーパーポイントとの連携も開始、本格化する楽天モバイルの事業展開

 既存事業の顧客基盤をMVNOに生かす、もう1社の楽天もサービスを本格化させている。同社は、10月にMVNO事業に本格参入を果たし、1000万台の販売目標に掲げた。その背景には、「モバイル事業を大きな4本目の柱にしようとしている」(楽天 副社長執行役員 平井康文氏)という、楽天の戦略がある。

photophoto 楽天の平井副社長。1月にシスコシステムズから転職してきたばかりだが、楽天の取締役に内定している(写真=左)。本格参入と同時に、1000万台の販売目標を掲げた(写真=右)

 とはいえ、1000万台の販売は膨大な数字だ。既存の事業者でいえば業界4位のワイモバイルが同規模の契約者数を抱えているが、これもウィルコムとイー・アクセスの合併によって実現したもの。店舗数もMVNOとは文字通りケタ違いだ。平井氏も「まだ1合目に来たところ」と述べており、楽天モバイルは、今後1000万販売に向け、さまざまな施策を行っていく。

 その1つがリアルな店舗の拡充。楽天モバイルは東京・渋谷にある楽天カフェで契約業務を開始し、「SIMと端末をお渡しすることも開始している」(平井氏)。これによって、本人確認の厳しい音声通話対応SIMを即日渡すことが可能になり、MNPの取り込みも増えているという。また、「タッチポイントを増やすことでお客様の利便性が高まり、ダイレクトなフィードバックをいただける」(同)ことも、出店のメリットといえる。

photo 1月には楽天カフェで、MNPの即時受渡しを実現した

 こうした店舗を増やしていくのが直近の取り組みだ。楽天モバイルの契約ができる店舗を、まず二子玉川と仙台に出店。楽天モバイルショップは、早期に10店舗まで拡大させるという。さらに、「家電量販店との連携も、十分可能性はある」(平井氏)とのことで、販売体制を大幅に強化する方針を掲げる。

photophoto 二子玉川と仙台に、ショップをオープンさせる。くしくも、二子玉川でトーンモバイルと楽天モバイルが激突する形になった。早期に10店舗まで拡大予定

 端末のラインアップも拡大していく。2月24日に開催された記者会見では、新たに富士通製のSIMロックフリースマートフォン「ARROWS M01」を発表。すでに発売済みの「ZenFone 5」「Ascend Mate 7」「AQUOS SH-M01」と合わせて、4機種のラインアップになった。ARROWS M01は、簡単メニューを搭載した初心者向けの機種。この層は「実は楽天市場の主要なお客様」(平井氏)であり、既存事業との親和性も高いという。

 「トランザクションの43%がモバイルデバイス。ご年配の方々が、スマートフォンを活用することで、より楽天市場や楽天のあらゆるサービスにリーチしていただけるという期待をしている」

photophoto 4機種のラインアップを取りそろえた。このほかにも、SIMカードのみを契約して、SIMロックフリー端末やドコモ端末を利用することもできる(写真=左)。ボタンの大きなメニューを搭載し、初心者やシニア層を狙う「ARROWS M01」。富士通製のSIMロックフリー端末だ(写真=右)

 さらに、平井氏が「他社にない大きなアドバンテージになる」と考えているのが、約1億に迫る会員を抱える「楽天経済圏」との連携だ。具体的には、楽天スーパーポイントとの連携が、4月に開始される。楽天モバイルの利用料に対してポイントが付与されることに加え、「夏ごろをめどに、月額使用料や通話料のお支払いにもご利用いただけるようになる」(平井氏)。ポイントと連携させれば、楽天のほかのサービスとの相乗効果を生み出せる。楽天を頻繁に利用するユーザーにとっての魅力も高く、契約者獲得が加速しそうだ。

photo 1000万販売に向け、「楽天経済圏」を活用していく
photophoto 4月1日から、楽天スーパーポイントがたまるようになる。ポイントの利用も可能になる予定
photo このほか、データSIMも発表された。既存の「楽天ブロードバンドLTE」は休止させ、ブランドを1本化する予定だ

 ただ、1000万販売のハードルはやはり高い。平井氏が「以上はここ3、4カ月の施策」と述べているように、楽天モバイルでは、このほかにもさまざまなサービス展開を計画している。先に述べたように、ここまでの施策はまだ楽天モバイルにとっての1合目に過ぎず、登山に例えると、「まず装備を作って、駐機場所に行ったということ」(平井氏)。成長の確信を得たという楽天が、次にどのような手を繰り出してくるのかにも、引き続き注目していきたい。

 MM総研が発表した調査結果によると、2014年9月末時点で、MVNOのシェアは、NTTコミュニケーションズ、IIJmio、日本通信、ビッグローブの4社で過半数を占めている。この4社は、ISPやMVNOが専業で、価格やMVNOのノウハウを武器に新たなユーザーを開拓してきた。一方で、“後発”にはなるのが、既存会員の顧客基盤を生かし追い上げを図るトーンモバイルや楽天モバイル。今のMVNO市場からは、このような構図が見て取れる。価格や通信品質での競争に、新たな軸を加えられるのか。トーンモバイルや楽天モバイルは、その試金石といえるのかもしれない。

photo MM総研が発表した、MVNOの事業者シェア。2014年9月末時点で、NTTコミュニケーションズ、IIJ、日本通信、ビッグローブの順となる

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