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新型デバイスが切り開くメディアとコンテンツ産業の未来(前編) (2/2)

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 こうした傾向は業界全体に見受けられる。例えば米enTourageが開発した「eDGe(エッジ)」というモバイル端末はデュアルスクリーン(2枚のディスプレイを蝶番でつないだ構造)で、左側が電子ペーパー、右側が液晶パネルになっている。これは電子ブックリーダーに、PC的な汎用性を追加するための工夫と見てよい。


 上の映像から分かるのは、eDGeの特徴が、左右の異なるディスプレイが巧妙に連携しているという点にあること。現時点で実用化されている電子ペーパー(その大半は米E-Ink製で、eDGeもそれを搭載している)では、カラー表示やビデオ再生は不可能である。そこでeDGeでは、左側の電子書籍でカラー図表やビデオを参照すると、それが右側の液晶ディスプレイ上で表示・再生する仕掛けにしている。

 eDGeの液晶ディスプレイ側は、GoogleのモバイルOS「Android」が制御している。一方、eDGeという端末全体はLinuxで制御されている。つまり基本ソフトも2重構造になっている。Androidが搭載されている液晶パネル側は一種のタブレットPCとしても機能し、ここにさまざまなアプリケーションをダウンロードすることもできる。しかし現時点では、Googleが管理するAndroidマーケットのアプリは動かすことができない。

 eDGeの通信機能は現在のところ無線LAN(Wi-Fi)に限定されている。これを使ってモバイルインターネットにアクセスし、電子書籍や各種アプリケーションをダウンロードする。しかし今後、携帯キャリアが提供する3Gネットワークにも対応する予定だ。

 eDGeの重量は約1400グラムと、iPadの約2倍もある。またその動作速度は遅く、実際にこれを使ってみた専門家からは酷評されている。電子ペーパーと液晶パネルを強引に一体化した点とも併せ、あらゆる意味で、これは過渡的な製品である。しかし従来の電子ブックリーダーにカラー表示や動画再生機能を追加することは、1つの方向性として指摘できる。

電子ペーパー vs. 液晶パネル

 それを「電子ブックリーダーのマルチメディア化」、あるいは「リッチコンテンツ化」とでも表現するなら、その鍵を握るのはディスプレイである。これまでの電子ブックリーダーに共通している点は、いずれもそのディスプレイにE-Ink製の電子ペーパーを採用していることだ(E-Inkは2009年、台湾のPrime View International(PVI)に買収されることが決まった)。これが良しにつけ悪しきにつけ、この種の端末の仕様や性能を規定している。

 E-Ink製の電子ペーパーは「電気泳動方式(electrophoretic)」を採用している。この方式では、直径40ミクロンほどのマイクロカプセルに納められた白と黒の帯電粒子を、電圧変化で移動させることによって画像を表示する。その長所は従来の紙と同じく、反射光方式で目に優しいため、長時間の読書にも耐えること。また消費電力が比較的少ないため、例えばKindleでは約4日間、電源をオンにしておくことができる。逆にその短所は、電圧変化に対する粒子の反応速度が遅いため、少なくとも現時点ではカラー化やビデオ再生ができないことだ。

 一方、従来のPCや最近のiPadに搭載されている液晶パネルは、電子ペーパーの長所と短所をひっくり返した形になる。つまりバックライト方式なので、目に疲労がたまり易く、長時間の集中した読書には向かないが、カラー化やビデオ再生は容易だ。また消費電力は比較的多く、大抵の場合は1日使い続ければ、バッテリーを充電する必要に迫られる。

 ただし以上の比較項目のうち、電子ペーパー(反射光方式)が液晶パネル(バックライトの透過光方式)よりも目に優しいことは、必ずしも科学的に証明されたわけではない。とは言え、透過光(直射光)よりも反射光の方が目を刺激しないことは、昔から部屋の間接照明などで経験的に我々は知っている。実際、この点に注目して、液晶ディスプレイを反射光方式に切り替えて電子ブックリーダーに搭載する試みもある。例えばPixel Qiの開発したデュアルモードの液晶ディスプレイがそれだ。


 上のビデオに登場したのは、Pixel Qiの液晶パネルを搭載したNetbookの試作機である(デモの途中で、Kindleのディスプレイと比較していた)。ビデオでご覧のとおり、それはワンタッチで通常のバックライト方式から反射光方式に切り替わる。通常のネットブックと同じく、さまざまなアプリケーションを動かす場合にはバックライト方式にして使う。そこから反射光方式に切り替えると、一種の電子ブック・リーダーとして長時間の読書にも耐え得るという触れ込みだ。

 Pixel Qiのディスプレイはもともと液晶パネルなので、反射光方式に切り替えてもカラー表示やビデオ再生が可能だ。しかし実際に筆者が間近に見た印象では、画面全体が薄緑色がかっていて、せっかくの色がよく見えない。折衷方式の限界かもしれない。このディスプレイを搭載したモバイル端末は、今年の後半からNetbookを中心に世界各国で商品化される見通しだ。

電子ペーパーでもカラー化やビデオ再生は可能

 ピクセルキューとは逆に、元々、反射光方式の電子ペーパーを、カラー表示やビデオ再生が可能にする技術開発も進んでいる。米Liquavista社の開発した電子ペーパーがそれである。そのデモを以下に示すが、ビデオ再生のところは日本製のアニメをサンプルに使っていたので、著作権のクレームを避けるため、ここでは残念ながら割愛する。


 この電子ペーパーは「電気湿潤方式(Electrowetting)」を採用している。それは透明な電極の上に着色油と水のレイヤーを重層した構造になっており、電圧変化によって水が油を押しのけることによって画像を表示する。同方式の長所は、画像更新に要する時間が短い(つまり画面表示の反応が速い)ために、動画再生が可能なことだ。また電気泳動方式と同じく、消費電力は液晶パネルよりもずっと小さい。

 ただ上のデモビデオから見てとれるように、現時点のLiquavistaの電子ペーパーでは表示されるイメージが若干暗く、コントラスト(明暗差)にも欠ける。しかし原理的に、電気湿潤方式の電子ペーパーは液晶パネルに勝るとも劣らない、輝度とコントラストを実現できると言われる。

 さらにE-Inkを買収するPVIも、2010年にはカラー化、2011年にはビデオ再生を可能にすると表明している。このように、電子ペーパーあるいは液晶パネルのいずれを採用しても、これからの新型デバイス上ではマルチメディア化、リッチメディア化は必須、かつ十分可能である。この前提の上に、出版業界は今後どんなコンテンツ(ソフトウェア)を提供しようとしているのか。次回、具体的にそれを見て行こう。

後編へ続く)

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