Professional Mobile »知る
RSS

ニュース

新型デバイスが切り開くメディアとコンテンツ産業の未来(前編) (1/2)

電子ブック・リーダーやタブレット型端末などの新たなデバイスが、メディア/コンテンツ産業を劇的に変えようとしている。昨今、深刻な構造不況に直面しているこの産業は、その打開策の一環として、新型デバイスに強い関心を示している。この新しいデバイスの現状や将来性を解説し、メディア/コンテンツ産業の次世代像を占ってみたい。

 新聞や雑誌、書籍などの印刷メディア産業は今、15世紀のグーテンベルク革命以来の大変革期に突入しつつある。当時の活版印刷技術は書物の大量生産を可能とし、それまで聖職者など一部特権階級に独占されていた情報アクセスや学習の手段を一般大衆に開放した。これによって合理性に立脚した近代社会が誕生し、その後の自然科学の発達や産業革命を促したと考えられている。

 このように15世紀のメディア革命が「読者数の飛躍的拡大」という量的なものであったのに対し、現在の電子デバイスが引き起こそうとしているのは質的な革命である。そこでは活字、音楽、動画、ゲームなど、従来は異なる領域に区分されてきたコンテンツが絶妙のバランスで融合し、モバイルインターネットに乗ってユーザーの端末(デバイス)に送り届けられる。つまり本格的なマルチメディア化と、よりスピーディで合理的な流通手段への移行が、今回のポイントである。

 こうしたメディア革命の具体像を思い描くために、まずは新型デバイスの現状と将来性を見て行こう。今年1月に米ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)には、特に電子ブックリーダーが数多く出品された。それが実際にどのような仕様で、どんな動き方をするのかを、動画を交えて見て行こう。

これからのメディアはどんなハードウエアになるのか

 最初にご覧いただくのは、英Plastic Logicが開発した3G対応の電子ブックリーダー「Que(キュー)」である。同社は英ケンブリッジ大学の研究プロジェクトから生まれたベンチャー企業だ。その技術が高い評価を得て2億ドル以上の投資をベンチャーキャピタルから受けるなど、以前からKindleへの対抗馬として期待されている。


 映像から一目瞭然なのは、Queが非常に薄く、カバンに入れて持ち運び易いこと。またユーザーインタフェース(UI)面では、静電方式のタッチパネルを搭載していることだ。現在、世界的に最も普及している電子ブックリーダーはAmazonのKindleだが、これは端末の下部に配置された多数のボタンを押して操作する。しかしすでに市場に出回っているソニーの「Reader Daily Edition」、さらに2010年のCESに出品された電子ブックリーダーの大半は、Queと同じくタッチパネル方式を採用しており、この点でKindleは早くも時代遅れになりつつある。

 Queのさらなる特徴は、情報の入力機能が比較的充実していることだ。現在のKindleが活字コンテンツの表示に主眼を置いた出力端末であるのに対し、Queの場合、タッチパネルを用いて指で図形を描いたり、ソフトウェアキーボードから注記などを書き込むことができる。ただし製品としての作り込み具合は、まだ不十分と言わざるを得ない。前出の映像を見れば分かるとおり、タッチパネル上にソフトウエアキーボードを表示させると、いきなり中央にどかんと出現し、画面全体を覆い隠してしまう。これでは記事に注記を書き込むなど、本来の目的を阻害してしまう。

 Queはもともと、米国の全国紙USA Todayなどを発行するGannettらと共同開発され、その過程で新聞社を始め出版産業の意向が、製品の仕様に盛り込まれた。しかし記事の表示方法には工夫を凝らす一方で、読者側からの入力インタフェースには稚拙さを覗かせるなど、今後重要性を増して行く「メディアと読者(ユーザー)とのインタラクション」という新たな領域では課題を残している。

 そのほかにも未熟な点としては、ボディのデザインが挙げられる。薄くしたのはいいが、極端に角ばった垢抜けない外観で、とても売りに出す製品には見えない。Queは当初、今年4月に発売される予定だったが、Plastic Logicは3月になって「発売時期を2010年夏まで延期する」と発表した。延期の理由は上記のような作り込みの不十分さに加え、製造コスト(ひいては小売価格)の高さである。Queの発売価格は当初800ドルを予定していたが、4月3日に米国で発売されたiPadが、499〜829ドルと事前の予想より低い価格を提示してきた。iPadは電子ブックのみならず、音楽からビデオまで多彩なコンテンツや用途に対応した汎用端末である。それが上位機種でも800ドル余りで発売されるのに、電子ブック専用端末であるキューが同じく800ドルでは太刀打ちできないと判断したのだろう。

汎用端末 vs. 専用端末

 現在、デバイスメーカーが強い関心を示しているのが、今後KindleやQueのような電子ブックリーダー、あるいはそれに代表される専用端末が主流になるのか、それともiPadのような汎用端末が主流になるのか、という点である。例えばAppleのスティーブ・ジョブズ氏は汎用端末の信奉者で、Kindleのような専用端末はいずれ廃れると見ている。しかし出版業界では、電子ブックリーダーの仕様をシンプルな機能に絞り込んで、その分価格を安く抑えれば、それなりの市場を確保できるとの見方が強い。

 実際、2007年11月に発売された初代Kindleは399ドルもしたが、その後段階的に値下げされ、現在の「Kindle 2」は259ドルである。これに対抗すべく、ソニーは今年4月、最下位機種の「Reader Pocket Edition」を169ドルと極めて安い価格に設定した。米Forrester Researchは、今後、台湾を始めアジアのデバイスメーカーが電子ブックリーダーに本格参入することで、その小売価格は2011年までに100ドルを切ると予想している。

 一方で、電子ブック市場を先頭に立って切開いて来たAmazonは2010年2月、Kindle向けにAppleのApp Storeのようなアプリ売買市場を創設する計画を発表。これに先立ち、同社は先進のマルチタッチ技術を開発する企業Touchcoを買収している。これらの動きは、今後Kindleを単なる電子ブックリーダーからiPadのような汎用メディア端末へと進化させる意図を感じさせる。つまりAmazon自身が、メディア端末の方向性についてはいくつかの選択肢を検討しているのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Special

FEATURES


仕事に役立つAndroidアプリはここでチェック!「仕事アプリナビ」
日々の仕事をサポートするAndroidアプリをカテゴリー別に紹介するサイト「仕事アプリナビ」がオープン。


特集:“位置情報連携”で進化する、モバイルサービスの今とこれから
ケータイへの搭載が本格化し始めたGPS機能が、モバイルサービスを新たなフェーズへと向かわせている。ユーザーが肌身離さず持っているケータイに位置情報が連携することでどんな新サービスが生まれ、それが人々の生活をどう変えていくのか。

Special

スマートフォン

「Android」「Windows Mobile」「iPhone」の
最新記事をピックアップ

news123.jpg
米Vonage、無料通話アプリの「Vonage Mobile」をリリース
米Vonageが、ユーザー間の通話とメッセージ送受信を無料で提供するスマートフォンアプリ「Vonage Mobile」をリリースした。固定回線や携帯電話への国際通話も安価で利用できる。

契約者数

現在の携帯契約数(1月末)
NTTドコモ 5971万0200
(2in1:30万8000)
au 3447万9000
ソフトバンク 2806万1900
(DN:2万4700)
イー・アクセス 380万0000
(12月末)
携帯累計 1億2605万1100
(イー・アクセス含む)
ウィルコムPHS 435万9200
携帯・PHS累計 1億3041万0300
(イー・アクセス含む)
UQコミュニケーションズ 188万3900

Web閲覧端末数/MNP利用状況

Web閲覧端末数
iモード/spモード 5168万0400
EZweb/ISNET 2816万8100
Yahoo!ケータイ 2152万9000
EMnet 非公開
累計 1億0137万7500
MNP利用状況(差し引き 1月末)
NTTドコモ −9万9300
au 5万3300
ソフトバンクモバイル 4万6000
イー・アクセス 非公開

Pick Up! ホワイトペーパー

  • ビデオ会議はパーソナル・タブレットと相互接続の時代へ
     従来のビデオ会議は、会議と名のつく通り会議室同士だけのために存在していました。 近年、ビデオのマーケットはビジュアルコミュニケーションという大きな括りとなり、パーソナル型やスマートフォン、タブレット端末でも活用されるようになりつつあります。 シスコシ...
  • スマートフォンのセキュリティ対策は本当に必要なのか
     スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの急速な普及に呼応するように、スマートデバイスを標的にしたマルウェアが多数発見されるようになった。だがこうしたマルウェアは脅威ではないと考えるセキュリティ専門家は少なくない。 ユーザー企業は、スマート...
  • “使いやすさ”が大幅に向上! 多様なIT資産を一元管理できる最新クライアント運用管理ツール
     ハードウェア/ソフトウェアのIT資産管理(Mac OSやLinux OSにも対応)、操作ログ管理、セキュリティポリシーの運用、クライアントのリモートメンテナンスなどを支援し、USBデバイスやネットワーク機器なども一元管理できる「SKYSEA Client View」。 同製品に搭載する各...
  • 技術者が見せる。Google Appsでの開発・実装例
     これまでにGBSに寄せられたグループウェア選択の際のお客様の注目点、ご要望から浮かびあがる2つのポイント「ワークフロー」「データ連携」。 Googles Apps(TM)は、これらにどのように応え、改善を実現したのか? 外部サービスの利用を最小限に絞り、Google Apps機能...
  • スマートフォン/タブレットの業務利用の新提案。簡単な設定で外出先から社内データベース照会が可能に。
     スマートフォンの業務活用方法としては、メールやグループウェアなどが一般的だが、販売・生産・経理などの社内の各システムの既存データベースを自由に社外から活用できる仕組みは多くはない。 Business4Mobileは、ツールの簡単な設定だけで、iPhone、iPad、Androidな...
  • イグアスが提供する災害・障害対策&スマートフォンソリューション
     「災害対策、『きちんと』ご対応済みですか?」◇IBMiの二重化によりダウンタイムを最小限に抑えるHAソリューション◇IBMiの遠隔へのバックアップを低コストで実現する災害対策ソリューション◇Windowsの二重化でダウンタイムを最小限に抑えるHAソリューション  「昨今...
  • クラウド時代におけるエンドユーザ目線によるWebサイトのパフォーマンス管理の必要性
    今日、顧客やビジネスパートナーとのやり取りをWebベースのアプリケーションインフラに実装している企業は増加している。これまで以上にインフラの階層やコンポーネントが増えるだけでなく、クラウドやCDNなど、データセンター外部のインフラとの連携も考慮すべき対象とな...
  • 自社に最適なグループウェアの選定ポイント
    市場には数多くのグループウェアが存在する。スケジュール管理やWebメール、ワークフローなどさまざまな機能が搭載され、現在ではASP形式で提供されたり、携帯電話/iPhoneなどのスマートフォンからもアクセス可能になるなど、その提供形態や利用シーンも多岐にわたる。企...
  • 安否確認、スマートフォン対応、変化し続けるユーザーニーズを解決する情報基盤とは?
     TechTargetジャパンの読者調査によると、企業における情報共有ツール利用の条件として、「エンドユーザーが使いやすい」「運用コストが安い」などが多く挙がった。前者の解決には、豊富が機能なのことはもちろんのこと、それらがユーザーにとって分かりやすい画面構成で...
  • 今すぐできる認証強化
     オンラインサービスの提供や、事業継続およびビジネス推進を目的としたリモートアクセスの提供が増加するなか、不正アクセスによる情報や金銭詐取が相次いで発生しており、認証強化が重要な課題となっている。 しかし、常に課題になるのは、セキュリティ強化と利便性の...