「ソーシャルディスカバリー」をもたらすSNS×スマホの可能性Facebook×KDDI(2/2 ページ)

» 2012年04月03日 12時30分 公開
[園部修,ITmedia]
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Facebookとスマホ、学生はどう使っている?

 こうした取り組みを通して、就職活動にスマートフォンとFacebookを使うようになった学生はどのように各種サービスを使っているのだろうか。森岡氏は大きく2点あると話す。

 1つは、企業のFacebookページで一方通行ではないコミュニケーションを取ること。企業側は普段の仕事の様子を見せたり、学生からの質問に答えるといった形で情報提供をするので、企業に興味を持った学生がコメントをしたり、「いいね!」を押したりする。そしてそこに人事部からのリアクションがある。世界中に支社があるような企業では、日本にある人事部とだけ話していても、支社の状況というのは知り得ないが、支社の人が現地からFacebookページに情報を出したりすることで、仕事に関するリアルな情報を学生は得られる。リアルタイムかつ双方向名やり取りが発生するため、学生からも好評だという。

 Facebook上に開設された企業ページは、Facebook側が当初想定していたものよりはるかに面白いコンテンツが増えているという。例えば地方の小さな菓子メーカーは、今までセミナーを開設しても100人くらいしか学生が集まらなかったが、Facebookページを開設し、さまざまな情報発信をした結果、500人くらいの参加者がセミナーに集まったそうだ。

 「人が集まらなかったところに、しっかりと人が集まり始めた、という現象も起きています」(森岡氏)

 2つ目は、Facebookのつながりをベースにした、就職活動仲間との密なコミュニケーションだ。実名で利用しているからこそ、情報の信頼性も高く、人間関係も築けると森岡氏。同じ業界を志望する仲間と情報交換をする、といった横のつながりは、閲覧者を制限できるグループ機能なども活用して広がっている。限られた仲間と本気で本音でしゃべり、仲間だけで情報を共有することもできる。オープンな場とクローズドな場をうまく使い分けているという。

 また昨今は、個人情報保護の観点から、一部の大学の就職課ではOBやOGを調べて訪問する、という行為が難しくなっているという。Facebookでなら、実名を登録し、会社名も公開しているOBやOGを探して、会ってみるといった活用ができる。実名制のSNSだからこそ、人脈探しにも有効というわけだ。

 「今までの就職活動だと、自分がどの企業に応募したか、といった情報は誰にも伝わりませんでしたし、自分がどういう業界や企業に興味を持ているか、といったこともしっかりと話さないと分からない部分がありました。でもFacebookでは、自分の『いいね!』がいろいろな人に見えますし、他の人の『いいね!』を見ることもできます。そこから新しい発見もあるわけです。それをソーシャルディスカバリーと呼んでいますが、こうしたことが起きているのが最近の就職活動の特徴だと思います。これはFacebookがあったからこそだと思っています」(森岡氏)

 「就活イベントなどで学生さんの話を聞いていると、エントリーシートにいち早く入力したり、説明会の予約をしたりするのにスマートフォンを活用したい、という声は以前からありましたが、最近はSNSを利用した情報交換や情報収集をしたい、という相談も多いです。やはり常に手元に情報があって、企業ともアクセスでき、友達や企業と交流できる、という点は学生さんに響いているようです。またそういった用途にはケータイよりもスマートフォンの方が使いやすい面もあって、イベント会場ではスマートフォンの購入相談もよく受けますね」(中嶋氏)

実名制だからこその利便性を実感した学生が着実に増加

 Facebookとスマートフォンを活用した就職活動は、話を聞くだけでも、その利便性の高さは想像に難くない。実際に活用している学生にしてみれば、一度使い始めたら手放せないツールになっていることだろう。両社の学生を対象にした啓蒙活動は、着実に芽吹いてきている。

 Facebookの森岡氏は、学生が増えた実感ははっきりとはないもののの「手応えはすごく感じている」と話す。FacebookとKDDIとの取り組みは、2011年から展開しているが、「お正月を過ぎてからの地方の伸びが高い」と森岡氏。

 「もともとユーザーは東京や大阪など、大都市圏が多いんです。やはり地方はきっかけが少ないのでしょうね。周りに使っている人がいなければ、SNSはなくても困らないものです。ですが、例えば東京の大学などに通っている人たちが、年末年始に帰省したときに、同窓会などで『Facebookでつながろうよ』と言ってくれたのではないかと思います。また、就活イベントなどでFacebookを知っていただいた学生さんもいたと思います。やはりSNSは必要とされるシーンが大切なのですね」(森岡氏)

 森岡氏は、日本でのFacebookユーザーの加速度的な増加は、かなり近いタイミングでやってくるとみている。

 実名制ならではの利点は、学生だけでなく、多くの人にメリットがあると森岡氏は言う。一般的なコミュニティサイトと違い、実名制のためコミュニティが荒れにくいという特徴があるほか、総理官邸や外務省のような政府機関・省庁なども使っており、信頼性は高いと自負する。

 「Facebookの『個人を特定できること』というのはすごく大事な特徴だと思っています。特定されることが前提になると、当然責任を持った発言をするようになります。例えば学生が企業とやり取りをするシーンを考えると、採用担当者が自分のページを見る可能性が高いわけですから、自分もちゃんと行動しようと思うわけです。実社会とより便利につながっていくわけですから、その点は就職活動との相性もいいと思います」(森岡氏)

SNS×スマホの相乗効果で裾野を広げる

 Facebookでは、こうした活動を通して、ソーシャルな体験によって、今までしたかったけどできなかったことができるようになってきたことを、多くの人に知ってもらいたいと考えている。

 「ある人のソーシャルなディスカバリー(発見)が周囲の人たちに伝わることで、周囲の人がそれに気付く。自分だけでは答えが見付けられなかった“知りたかったこと”が、友達を介して気付けたりする。それによって自分の可能性がもっと広がる。そんな世界をぜひ体験してもらいたいんです」(森岡氏)

 KDDIとしても、SNSの利用が広がると、それをより便利に使えるスマートフォンの普及が加速するため、大きなメリットを感じていると中嶋氏は言う。ソーシャルアプリなどを使い慣れてくると、コンテンツの利用やアプリの利用も進み、将来的にKDDIの他のコンテンツ利用にもつながる。

 「ソーシャルでつながって、情報を発信してもらうことで、KDDIのサービスを使っている人が、周りの人たちに『これを使っていますよ』ということを発信してくれ、波及効果が現れる――。そんな未来を想像しています。スマートフォンユーザーの裾野が広がっていくことは大きなメリットがありますので、これからも学生さんをターゲットにした活動は続けていきたいです。ガク割のときのauのように、いつか『学生のau』と言われるようにしていきたいです」(中嶋氏)

 新たなユーザー層の開拓へ向けたFacebookとKDDIの提携は、さまざまな成果をもたらしながら着実に歩を進めている。多くの人にとって、どちらも生活の一部になりつつあるSNSとスマートフォン。これからの進化と深化には、さらなる注意を払っていく必要がありそうだ。

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