日本におけるワイヤレス充電パッドは2012年に350万台、2014年には700万台に増加するという観測もある。日本は特に増加率が高いとされているが、欧米での普及も期待される。欧米ではiPhoneの影響が大きく、iPhoneのバッテリー内蔵カバーを充電できるQi製品が増えているという。「iPhoneアクセサリー市場は非常に大きい」と佐野氏も話す。一方、HTC、Samsung電子、LGエレクトロニクス、Huaweiなど日本にスマートフォンを供給している端末メーカーもWPCに名を連ねているが、現時点でQi対応スマートフォン(携帯電話)は開発していない。佐野氏は「国によって充電に対する考え方が違う。例えばアメリカは車社会なので、車の中で充電する人が多い。日本のようにワイヤレス充電パッドを同梱することは考えにくいのでは。(スマートフォンへの対応は)これからの課題だと思う」とした。
また、海外ではQualcommとSamsung電子らが、無接点充電の標準化団体「A4WP(Alliance for Wireless Power)」を設立することを発表している。商用化はまだ先ではあるが、同団体の無接点充電技術はモバイル機器を対象としておりWPCと競合する。佐野氏は「無接点充電が普及するという意味で、いろいろな規格が出てくるのは決してネガティブなことではない。WPCにはさまざまな業態の企業が参入しており、今も増えている。他の規格が出てきたからといって急に(情勢が)変わることはないと思っている」との見解を示した。
Qi対応製品だけでなく、無接点充電を体験できるインフラの拡大も目指す。NTTドコモは2013年3月まで、おくだけ充電を体験できるよう、ANA国内線/国際線ラウンジ、ナチュラルローソン、NISSAN、プロント、てもみん、三越などに充電パッドを試験導入している。パナソニックも2013年3月まで、タリーズコーヒー、WIRED CAFE、ファミリーマート、スリーエフ、ジャンボカラオケなどに充電パッドを試験導入している。導入場所と台数は5月時点で約90カ所に900台で、9月末には約500カ所に3000台の設置を目指す。またパナソニックがワイヤレス充電パッドを導入している店舗には、Qiに対応しない携帯電話を使っている人でも、無接点充電を体験できるアタッチメントを設置している。アタッチメント自体がQiに対応しており、ユーザーはケーブルからケータイやスマートフォンを充電できる。
実際に店舗で無接点充電を体験したユーザーからは、アンケートで「店選びのきっかけになる」という好意的な反応を示した人が半数以上いたようだ。さらに62%の利用者が「また利用したい」と回答したという。店舗側も「充電器があると滞在時間が長引いて回転率が悪くなる」と懸念するよりも、「リピーターを増やすこと」を重視して歓迎するところが多いという。
個人向け製品という枠を超え、インフラとしても広がりつつある無接点充電。携帯電話に搭載する上での技術的なハードルはほぼクリアしたとみてよいだろう。高出力規格の商用化や海外メーカー製端末への採用を含め、さらなる拡充を期待したい。
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