“第3のOS”の一角を占める「Firefox OS」を開発するMozilla Japanは、5月29日から31日にかけて開催された「ワイヤレスジャパン 2013」に同OSを搭載した端末を出展した。展示されていたのは、開発者向け端末として発売中の「Keon」「Peak」など。中国・TCLがALCATELブランドで展開する「One Touch Fire」や、中国・ZTEの「ZTE Open」も紹介されていた。
Firefox OSは、エンジンに「Gecko」を採用し、すべてのアプリがHTML5で作られるオープンなOSだ。今年2月に開催されたMobile World Congressでは、このプロジェクトに参画するキャリアやメーカーが発表され、話題を集めた。海外ではスペインに本拠地を置くTelefonicaがローエンドのスマートフォンを開発するプラットフォームとして注目しているほか、日本ではKDDIが端末の投入を予定している。また日本では、ソニーモバイルもTelefonicaと技術検討を進めている。
ワイヤレスジャパンに展示されていたFirefox OSには、「毎日新聞」や「食べログ」といった、日本向けのアプリやコンテンツがインストールされていた。Firefox OSでは、HTML5のコンテンツをパッケージとしてインストールできるが、Webへのショートカットも同じようにアプリとして扱われる。会場の説明員によると、セキュリティの関係で、インストールしたアプリでのみ、カメラなど一部のAPIが利用できるようになる仕組みだという。
Mozilla Japanのブースには、オムロンの開発したWnnベースの日本語入力ソフトも展示されていた。ただし、これは「アプリとしてユーザーが後からインストールすることはできない」(同)。連文節変換を行ったり、辞書データを参照したりする際に、HTML5だけではパワー不足になるというのがその理由だという。残念ながらデモの時点では、フリック入力などにも対応していない。
このように、Firefox OSの日本展開を見こして、アプリや入力環境などが徐々に整いつつあることがうかがえた。一方で、現時点ではまだ端末はローエンドが中心だ。これは、Telefonicaや中国メーカーが、新興国を主要市場と考えているため。展示されていた端末のスペックも低く、最新のAndroidやiPhoneと比べ、パフォーマンスには難がある。もちろん、KDDIが今のFirefox OS搭載端末をそのまま日本で展開するわけではなく、市場のニーズに合わせたカスタマイズを行っていくことは表明している。また、Firefox OS自体もローエンドだけをターゲットにしているわけではない。
一方で、ハイエンド端末を開発するには、まだまだOS自体のブラッシュアップも必要だ。例えばMobile World Congressで取材した時点では、Firefox OSはまだLTEやNFCをサポートしていなかった。日本市場に導入するなら、これらは必須だ。同じHTML5を売りにしたOSでも、機能面はドコモやSamsung電子が推す「Tizen」が先行している。また、HTML5のアプリが動くというのは、あくまで開発者にとってのメリットでしかない。HTML5でしか実現できないアプリの魅力をユーザーにきちんと説明してくことが、Firefox OSを導入するキャリアやメーカーには求められそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.