LTE時代で通信事業者が生き残るために必要なものとは?――Ericssonが説明Mobile Asia Expo 2014

» 2014年06月23日 12時19分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 LTEが次世代と言われていたのは少し前のこと。LTEネットワーク上で音声を使うVoLTEサービスの開始が日本でももう間もなくとなり、浸透をうかがわせる。高速通信を可能にするLTE、高機能を優れた操作性で行えるスマートフォン、それにウェアラブルなどモノのインターネット(IoT)がどのようなトレンドを作るのか? 通信機器メーカーのEricssonが6月13日、中国上海で開催された「Mobile Asia Expo 2014」で開いたセミナーで説明した。

北東アジアのLTE人口カバー率は2019年に95%へ

photo Ericssonの北東アジア担当戦略トップのクリスチャン・ヘデリン(Christian Hedelin)氏

 Ericssonの北東アジア担当戦略トップを務めるクリスチャン・ヘデリン(Christian Hedelin)氏は、LTEの普及は「類をみないスピード」と言う。中でも日本、韓国、中国などで構成される北東アジアでのLTEの普及は目ざましいものがあるようだ。

 2011年、世界に先駆けて商用サービスをローンチした韓国では、ローンチから約3年で全加入者に占めるLTE加入者の比率は3分の2に達しているという。日本のLTE普及率も、15%強だった2013年から倍増して2019年に35%以上を見込む予想だ。これは、高いところでせいぜい10%(イタリア)にとどまっている欧州と比べると成功事例だという。北東アジア市場では、TD-LTEで2014年に商用LTEサービスのローンチが本格化する中国の勢いが、さらに加速することも期待される。Ericssonの調査では、北東アジア(日本、韓国、中国)地区のLTE人口カバー率が、2019年には95%に達するという。

photo LTEの普及率。アジアがリードしていることが分かる。

 太いパイプ(LTE)を得ることでトラフィックも増加するのは明白で、「データトラフィックは2019年末に2013年の10倍になる」とヘデリン氏は言う。もちろん、スマートフォンやタブレットなどの普及も大きく関係している。中でもスマートフォンは2013年、北東アジア市場だけで3億台以上が出荷された。中国では150ドルを切るスマートフォンが多数登場しており、2014年内にスマートフォンユーザーが10億人に達すると予想されるという。

 スマートフォンでは台数が増えるだけではなく、利用そのものも増えている。典型的な例が動画だ。LTEとスマートフォンの両方で世界でトップレベルの普及率を誇る韓国では、モバイル端末でメディアを消費する時間がテレビを上回ったという。端末側は4KやウルトラHDなど解像度が進んでおり、動画トラフィックは今後も増加が予想される。「データトラフィックのボリュームは2019年、2013年の13倍になる」(ヘデリン氏)とのことだが、この予想は「かなり控えめな数字」とも言う。例えば、4K端末で4時間の動画を視聴した場合のデータ量は18Gバイトにも達するという。そうなると、トラフィックは5年で13倍では収まり切らないからだ。

photo 動画のトラフィックは5年で13倍と予想する

 アプリではOTT(Over the Top:通信事業者の回線上で提供されるサービス。特に音声やメッセージなど代替となりうるものを指す)が及ぼす影響を危惧する声の中で“ダムパイプ(土管)”化という言葉をよく耳にする。だがOTTを制限するよりも、変化を受け入れて生き残る方法を探るという方向に業界全体が流れている。「OTTアプリがもたらすバリューは無視できない」とヘデリン氏は述べた。

「トラフィックの増加」と「新しいビジネスモデル」が課題

 これら加入者の行動が増加するのに加えて、M2M(マシン間通信)やモノのインターネット(IoT)の動きもある。特にMobile Asia Expoの会場では、Fitbitなどウェアラブル端末が注目を集めていた。Ericssonは6年前から「ネットに接続するとメリットがあるものは、すべて接続される」として“ネットワーク社会(Network Society)”に向かうことを予言してきた。

 ここで重要なのは、「接続するためのコストや手間をゼロに近づけることだ」とヘデリン氏は言う。これによって多くのユーザーが接続でき、収益が期待できるからだ。ヘデリン氏は、現在のようにハードウェアではなくソフトウェアでSIMの機能を実現するソフトSIMの開発に期待を寄せた。

 通信事業者は、予想できないトラフィックの増加、スマホやIoTがもたらす新しいビジネスモデルの2つの課題に直面することになる。ネットワーク側のソリューションとしてはまず、大型のマクロ基地局によるカバーエリアの拡大、屋内をカバーする方法として期待されるスモールセルがある。

 ヘデリン氏は、コアネットワーク(基幹回線網)で進みつつある、プログラム可能なネットワークの動きにも触れた。SDN(Software Defined Network:ソフトウェア定義ネットワーク)やネットワーク機能の仮想化(NFV:Network Functions Virtualization)により、柔軟に設定を変更したり新機能を迅速に展開したりできるようにする動きだ。ITで起こっている仮想化、クラウドの流れが携帯業界で応用された形となる。

photo Ericssonの屋内用スモールセル「Radio Dot」。ソフトバンクが導入を決定した(写真は2月のMobile World Congressのもの)

 ビジネスモデルはどうか? ヘデリン氏は、加入者1人あたりの売り上げを示すARPUのトレンドに触れる。契約件数(加入者)は増加傾向にあり、ARPUは下がっても、全体として見ると、売り上げは増えているという。課題は「どうやってデータを売り上げに変えるかだ」とヘデリン氏。現在、世界の通信事業者が取っている対策として、以下の4つを挙げた。

  1. スマートフォンへの移行促進
  2. ファミリープランなど料金プランの改革
  3. OTTアプリを取り込んだ魅力的なデータ通信パッケージ
  4. 企業向けのM2M

 例えば日本でもおなじみのファミリープラン。米国のVerizon Wirelessは、ファミリープランによってアカウント単位での売り上げを約25%増やすことができたという。3のデータ通信パッケージについては、Facebookと組んだフィリピンやインドネシアの通信事業者が、データの売り上げを増加させていることが報告されている。

Kindleの「スポンサードメディア」も重要に

 ヘデリン氏が通信事業者の新しいビジネスモデルとして紹介したのが「スポンサードメディア」だ。Amazonが「Kindle」で開始したビジネスモデルで、通信事業者と提携してユーザーが電子書籍などコンテンツ配信に要する通信費用をAmazonが請け負うというものだ。コンテンツやアプリを提供する側が通信事業者と回線を契約し、サービスレベルについての合意(QoS)をするモデルは「今後通信事業者にとって重要なビジネスモデルになるだろう」とヘデリン氏は予想した。

 ヘデリン氏は「パーソナライズ」の重要性も強調した。一律的にネットワークを提供するのではなく、加入者の期待や状況に合わせたネットワークを提供するというものだ。「ユーザー体験が大切といわれるが、重要なのはパーソナライズされたユーザー体験だ」と同氏は述べる。ユーザー体験では下りの通信速度だけに目が行きがちだが、「サービスの差別化と個別のサービス提供にフォーカスすることで、ユーザー満足度や収益を高められる」と提案した。ここでは無線通信技術よりもネットワークの運用や顧客管理(OSS/BSSといわれる)が重要となり、Ericssonはこの分野を強化しているという。

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