2008年の当初こそ、Netbook/ミニノートPCの投入で他社に遅れを取ったデルだが、その後は矢継ぎ早に新モデルを発売して、「Inspiron Mini」ブランドの地位を確立した。ラインアップは12.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載した「Inspiron Mini 12」、HDMI端子を搭載し多彩なジェスチャー操作に対応するタッチパッドを備えた「Inspiron Mini 10」、そしてエントリーモデルの「Inspiron Mini 9」という構成だった。2009年6月に登場したばかりの最新Netbook「Inspiron Mini 10v」は、Inspiron Mini 9を置き換える廉価モデルで、OSにUbuntuを採用したモデルで3万円台、Windows XPでも4万円台半ばという低価格が目を引く。
Inspiron Mini 9の後継モデルとはいえ、製品名からも分かるように、本機のベースはInspiron Mini 10だ。重量が約1.035キロで、サイズが232(幅)×172(奥行き)×27.2〜31.7(高さ)ミリという小型ボディを追求したあまり、キーピッチが主要キーで15.6ミリ(日本語キーボードの場合)と狭く、ファンクションキーを省くなど不規則な配列が目立ったMini 9ではなく、主要キーで17.5ミリのキーピッチを確保したMini 10を引き継ぐため、入力環境は大きく改善された。本機のボディサイズは261(幅)×182.5(奥行き)×26.8〜28.3(厚さ)ミリと、底面積はMini 10と同じで厚みが若干増している。重量は約1.13キロと、Mini 10よりわずかに軽くなった。
デル、Ubuntu搭載で4万円を切るエントリーミニPC「Inspiron Mini 10v」
デルが放つファンレスノートPC第3弾「Inspiron Mini 10」を360度チェックした(前編)
デルが放つファンレスノートPC第3弾「Inspiron Mini 10」を360度チェックした(後編)
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液晶ディスプレイは1024×576ドット表示に対応した10.1型ワイドで、8.9型ワイドで1024×600ドット表示だったMini 9と比べると画面サイズは大きくなったが、アスペクト比が16:9になり、解像度は縦方向が狭くなった格好だ。ただし、これは店頭モデルに限った話で、デルの直販サイトで扱うモデルについては、リリース直後から画面解像度が1024×600ドットに変更されており、1024×576ドットは選べない。この点についてデルから公式なアナウンスはなく、ユーザーには何とも分かりにくい状態だ。量販店で購入時に付与されるポイントも魅力だが、画面解像度を優先する場合は同社の直販で買うしかない点は覚えておきたい。
一方、Mini 10との比較では、アクリルパネルをはめ込んだ「Edge-To-Edgeスクリーン」の採用は見送られ、外部ディスプレイ出力がHDMIからアナログRGBに切り替えられたほか、CyberLink製のマルチメディアランチャ「Dell Media Experience」などのソフトウェア省かれている。内部スペックも、Atom Z系のCPUとIntel System Controller Hub US15Wチップセットを組み合わせたMini 10に対し、Atom Z系のCPUとIntel 945GSE Expressチップセットを搭載したMini 9を継承する。いわば、Mini 10とMini 9のいいとこ取りをしたモデルがMini 10vといえるだろう。ただし、本機ではMini 10で選択できた1366×768ドットの解像度が選べず、前述のソフトウェアが省略されるといった廉価モデルゆえの割り切りがなされている。
それでは、本機の細かい部分を見ていこう。
Inspiron Miniシリーズでおなじみとなる天板のカラーバリエーションは、オブシディアン・ブラック、パール・ホワイト、チェリー・レッド(PRODUCT RED)、プリティ・ピンク、ジェイド・グリーン、アイス・ブルー、パッション・パープルの計7色で、オブシディアン・ブラック以外を選択すると2100円の追加費用が発生する。光沢感あふれる天板は廉価モデルとは思えない質感を獲得しているが、カラー(特にオブシディアン・ブラック)によっては指紋や手の脂が目立つのは従来モデルと同様だ。
10.1型ワイドで1024×576ドット表示の液晶ディスプレイは光沢タイプで、低反射処理は施されているものの、画面への映り込みは目立つほうだ。視野角は上下方向こそ狭く、左右方向はやや暗くなる点を除けば、内容は十分確認できるので実用上の不満はない。画面の明るさは16段階に切り替えられ、最高輝度時はややまぶしく感じられるほどだ。ちなみに液晶ディスプレイは120度ほど開くので、ヒザの上で利用しても色が反転することはなかった。
キーボードは上位のInspiron Mini 10と同様、直販のみ日本語配列と英字配列を選べる(店頭モデルは日本語キーボード固定)。前者は主要キーで17.5ミリのキーピッチを維持(「¥」キーと「BackSpace」キーのみ15ミリピッチ)しており、スペースバーも76ミリあるので、Netbookの中では扱いやすい部類に入る。キーストロークも実測値で2ミリほどあり、キーを強く押してもカチャカチャという不快な音を発しない。ただ、Inspiron 15やInspiron Mini 10と同様、ファンクションキーの初期設定が輝度調整や音量調整に割り当てられているので、通常のファンクションキーとして使う場合はBIOSセットアップで「Function Key Behavior」を切り替える必要がある点は注意したい。
タッチパッドは、78(横)ミリ×37(縦)ミリとMini 10と同じサイズだが、ドライバはElantech DevicesのSmart-Padからシナプティクス製に変更され、多彩なジェスチャー操作が行えなくなった。もともと面積があまり広くないタッチパッドなのでジェスチャーができない点に不満はないが、クリックボタンがタッチパッドに一体化され、クリック感があるのがタッチパッドの左下と右下周辺だけというのは、慣れるまで戸惑う。クリックボタンに相当する部分が狭いのも気になるところだ。
細かいところでは、左側面にあるメモリカードスロットにメモリーカードを挿入すると、SDメモリーカードで約14ミリ、メモリースティックPRO Duoで約6ミリ出っ張ってしまう。また、PCの状態を表示するインジケータランプは電源用の1つで、ストレージのアクセスランプがなく不便なのは従来モデル同様だ。
次のページでは、Mini 10vのスペックとパフォーマンスをチェックしよう。
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