板状のeBook端末「Reader」をなめるように触ってみた厚さ10ミリ前後の極薄ボディ(2/3 ページ)

» 2010年11月25日 15時00分 公開
[田中宏昌(撮影:矢野渉),ITmedia]

ライバル機との比較

 続いて、5型と6型モデルをはじめ、ほかのeBookリーダーとサイズを比較してみよう。

 5型のPocket Editionは104.6(幅)×145.4(奥行き)×9.2(厚さ)ミリ、6型のTouch Editionは119.1(幅)×169.6(奥行き)×10.3(厚さ)ミリとなっており、厚さは1ミリほどしか変わらないが、底面積は6型のほうが広い。タッチペンの長さや太さはほぼ共通だが、突起の形状が異なっている。本体の重量は実測値で5型が約150グラム、6型が208グラムで、後者はメモリカードのダミーカバーを除くと約202グラムとなった。ほぼ50グラムの差がある計算だが、手に持って比べるとTouch Editionのほうがずっしりと感じた。

手前が5型のPocket Edition、奥が6型のTouch Edition(写真=左)。厚さはどちらも10ミリ前後とスリムだ(写真=右)

 iPhone 4やiPadと並べて見ると、本機のユニークなサイズが目立つ。3.5型の液晶ディスプレイを備えたiPhone 4のサイズは、58.6(幅)×115.2(奥行き×9.3(厚さ)ミリ、重量が約137グラムとコンパクトで画面解像度も640×960ドットと高いが、文字を読むには字が小さく、拡大すると一覧できる情報量が減るというジレンマを抱える。一方の9.7型の液晶ディスプレイを搭載したiPadはサイズが189.7(幅)×242.8(奥行き)×13.4(厚さ)ミリ、重量が約680グラム(Wi-Fiモデルの場合、Wi-Fi+3Gは約730グラム)と巨大だが、広視野角のIPSカラー液晶と768×1024ドットの画面解像度により、雑誌やグラビアなどの見栄えはよく、一覧性も高い。そのぶん携帯性は劣るので、常時持ち運ぶのが前提ならば、5〜6型ディスプレイを採用したReaderのほうが携帯性と文字の見やすさという点でバランスが取れたサイズといえるだろう。

一番手前がiPhone 4で一番奥にiPadを並べたところ(写真=左)。スリムだが、やはりiPadの大きさが際立つ(写真=右)

 参考までに前世代のKindle 2とも比べてみたが、600×800ドット表示の6型ディスプレイとTouch Editionとディスプレイサイズは同等ながら、ハードウェアのキーボードを搭載することで本体サイズは134.6(幅)×203.2(奥行き)×7.9(厚さ)ミリと大きく、重量も約290グラムと重い。ただ、最新のKindle 3ではキーボード部分の小型化によって、サイズが123(幅)×190(奥行き)×8.5(厚さ)ミリとコンパクトになり、重量もWi-Fiモデルで約241グラム、Wi-Fi+3Gモデルでも約247グラムと軽くなった。

 Readerと同じE InkのPearlを採用するKindle 3だが、内蔵メモリは4Gバイト(ユーザー領域が約3Gバイト)とReaderの2倍あり、Wi-FiあるいはWi-Fi+3Gと標準で通信機能を内蔵し、PCを介さずにeBookコンテンツを入手できる利便性(Whispernet)はポイントが高い(ただし、日本語コンテンツは少ないが)。また、価格もKindle 3のWi-Fiモデルが139ドル(約1万2000円)、Wi-Fi+3Gモデルが189ドル(約1万6000円)であることを考えると、Kindleには送料が加わることを考えてもPocket Editionで予想実売価格2万円、Touch Editionの同2万5000円という価格差は悩ましいところだ。

奥にKindle 2 International版を置いてみた(写真=左)。最新のKindle 3では厚みがやや増したが、奥行きは約190ミリまで小さくなっている(写真=右)

長時間駆動と文字の見やすさはE Inkならでは

 従来のVizplexから、コントラスト比が50%向上したPearlを採用したReaderだが、実際の見た目はどうなのだろうか。グレースケール16階調に変わりはないが、屋外での視認性は従来以上に高く、視野角も非常に広い。画像を表示させると顕著だが、トーンがなめらかになり、鮮明度がアップした印象だ。また、ディスプレイは従来の抵抗膜式から両モデルで光学式タッチスクリーンを採用したことにより、表示がクリアになって視認性が増している。

 E Inkの仕様上(マイクロカプセル内にある白と黒の粒子を電流加圧で移動させる)、ページ送り時/画面切り替え時に画面全体が明滅するのは好みが分かれるところだが、文字の見やすさはE Inkならではのメリットで、長時間利用しても目が疲れにくいのは好ましい。また、画面明滅時などを除いて電力をあまり消費しない省電力設計なので、1回の充電で約1万ページの連続ページ送り/約2週間の利用(省電力モードがオン、テキストベースのXDMFファイルを1分で約3ページ、1日約75分読書した場合)が可能というバッテリー駆動時間の長さも魅力である。

 細かく見ていくと、電源スイッチをスライドさせると本機はスリープモードに移行し、スタンバイ画面が表示される。もう1度電源スイッチをスライドさせるとスリープモードが解除され、約10分間操作がないと自動的にスリープモードに移行し、さらに2日間操作がない場合はシャットダウンする。画面に表示されるバッテリーのメモリは4つあり、スライドショー時は省電力機能が効かないようになっている。

 一方、タッチ操作はなかなか軽快に扱えるが、iPadやiPhoneのような動作の滑らかさを期待すると肩すかしをくらう印象だ。現段階では試作機であることを差し引く必要があるものの、今どきのスマートフォンやiPadとは異なるシステムあることを覚えておきたい。

 とはいうものの、別掲載の動画記事を見てもらえれば分かるが、eBookリーダーとしては十分なスピードを確保している。歴代のKindleにはないタッチ操作で直感的に扱えるのも大きなアドバンテージである。

 eBookのページ送りは本体左下にあるページ送りボタンのほか、画面をタップするかスワイプすることでページ送り/戻しが行える。ただ、ハードウェアのボタンが左下にある関係で、右利きの人は問題ないものの、左利きの人(本体を右手で持つ場合)はページ送りのボタンに届かない可能性がある(特に6型モデルは)。中央のホームボタンを押すとホーム画面が表示され、その隣にあるサイズボタンで文字サイズの切り替えやズーム、ページモードの切り替えが可能だ。一番右にあるオプションボタンで各種設定やリセットなどを行う。

スリープモードの画面。E Inkではこの状態でも消費電力をグッと抑えることが可能だ
こちらはホーム画面で、ホームボタンを押すことでこの画面に戻ることができる
ホーム画面や写真などは横位置で表示することも可能だ

eBookを読んでいるところ。文字サイズはワンタッチで6段階に切り替えられる。フォントはモリサワの「新ゴ」と「イワタ明朝」を採用する
5型のPocket EditionでeBookを読んでみた。こちらは片手持ちでも違和感なく使える
6型のTouch Editionも片手で扱えるが、手の小さい人や長時間使う場合は両手持ちが基本になるだろう

ジーニアス英和辞書(第四版)と、英英辞典のNew Oxford American Dictionaryがプリインストールされている
Touch EditionでMP3ファイルを再生しているところ。ジャケットも表示される
手書きメモやテキストメモを作成できる。マーカーを付けたり、細かい文字はタッチペンを使った方が便利だ

DRM付きコンテンツの転送に「eBook Transfer for Reader」を採用

PCとの接続時は「充電中」の文字が表示され、本体の操作を一切受け付けなくなる

 詳細は別記事で述べるが、国内で販売されるReaderシリーズは、米国のDaily Editionのように通信機能を内蔵していないので、データのやりとりはUSB接続でPC経由が必須になる。Touch Editionはメモリーカードスロットがあるので、DRMなしコンテンツならばメモリカード経由でコンテンツの表示/再生に対応する。

 本体で読み取り可能なファイル形式は、著作権保護機能付きeBookがXMDF(.zbf、.nmh)、著作権保護機能がない場合はXMDF(.zdf)、EPUB(OPS Version 2.0)、PDF(PDF1.6対応)、TEXTファイルを利用できる(いずれもZIPファイルは非対応)。写真データはJPEG、GIF、PNG、BMPで、アニメーションGIFは最初のフレームのみ表示される。

 DRM付きコンテンツは、付属の転送ソフトウェア「eBook Transfer for Reader」を利用してReaderにデータを移すことになる。現時点で本ソフトはWindows版しか用意されず、Macには非対応だ。加えて、対応OSはWindows 7 Starter、Home Premium、Professional、Ultimate(64ビット/32ビット両対応)、Vista Home Basic、Home Premium、Business、Ultimate(64ビット/32ビット両対応、すべてSP2以降)、XP Home Edition、Professional(32ビット版のみ、SP3以降)、XP Media Center Edition 2004/2005(SP3以降)と幅広いが、自作PC、標準インストールOSからほかのOSへのアップグレード環境、マルチブート環境やマルチディスプレイ環境はサポートされない点に注意したい。

 なお、Readerの充電はPCとの接続のほか、別売のACアダプタ(3675円)でも行える。PC接続時は約3時間かかる満充電も、ACアダプタを使えば約2時間に短くなるほか、充電中も本体の操作が可能だ(PC接続時は本体操作ができなくなる)。

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