インタビュー
» 2010年12月28日 20時22分 UPDATE

開発陣に聞く「IS03」:「そんなことできるわけない」、それでも“ケータイらしさ”を貫いて完成した「IS03」 (1/2)

「ソフトとハードの両方で技術者とここまでぶつかり合ったのは久々」というほど、IS03は隅々までこだわり抜いて開発された。「使いにくそう」というスマートフォンの障壁をなくすために注力したポイントとは。シャープに聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 シャープがau向けに開発したAndroidスマートフォン「IS03」は、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、EZメール、LISMO、au one ナビウォークなど、これまでauで慣れ親しんできた機能やサービスを使えるのが大きな特徴。こうした徹底した日本人向けのカスタマイズが功を奏し、発売前の「購入宣言」キャンペーンでは約h30万人が登録、発売後も順調な売れ行きを記録している。KDDIの田中社長が発売記念イベントで「感無量だ」と話していたように、KDDIとシャープ“渾身のモデル”といえる。

 そんなIS03には、どのようなこだわりが込められているのだろうか。シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部の高橋洋之氏と中田尋経氏に話を聞いた。

photophoto 「IS03」。ボディカラーはブラック、ホワイト、オレンジの3色

スマートフォンはまだ市民権を得ていない

photo シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部 係長 中田尋経氏

 2010年には多数のスマートフォンが発売されたが、「スマートフォンはまだ市民権を得るに至っていない」と中田氏は話す。「赤外線通信ができない、おサイフケータイが入っていないなど、従来のスマートフォンでは今ケータイで普通に使っている機能がありません。だからといって、2台持つのはちょっと……と思う人や、名前は聞いたことはあるけど、スマートフォンで何ができるのかが分からないという人は多いでしょう。そうした壁を取り払えば、スマートフォンは使いやすい潜在性を秘めているので、そこに注力しました」(中田氏)

 IS03でシャープが掲げたのが「スマートとネクスト」というコンセプトだ。「(従来の)ケータイにもアプリを追加できますが、スマートフォンに比べると機能が限定されていて、基本的にプリセットされている機能を使い続ける必要があります。そうしたケータイの安心感を継承させながら、使いやすさをもっと訴求できないか。シャープならではのスマートフォンを提供していこうと考えました」と中田氏は話す。

 シャープはau向けAndroidの初号機として、QWERTYキーボードを備えた「IS01」を開発したが、コンセプトはIS03とは異なる。「IS01はAndroidの初号機なので、先進性を求めるアーリーアダプターをターゲットにし、キーボードの使いやすさやディスプレイの大きさなどにこだわりました」(中田氏)。一方、IS03ではスマートフォンの“障壁”をなくし、より幅広いユーザーに使ってもらうことを目指し、20〜30代前半のユーザーをターゲットに据えた。

使いやすさの限界を考えて「幅63ミリ」に

 男性のみならず、Twitterやブログなどで頻繁にコミュニケーションをする女性も潜在的なターゲットと考え、手の小さな女性が持っても違和感のないサイズを目指した。特にこだわったのが「幅」だ。IS03の幅は63ミリで、これはいくつかのサンプルを取った結果、「63ミリ」は女性が使いやすいと感じる限界だと判断したという。「箱のような形状だと持ったときに手が疲れるので、手に当たったときの柔らかさをいくつか検討し、手になじむラウンドフォルムにしました」(中田氏)

 一方で、50ミリ程度の幅が多いケータイと比べると、63ミリは太い。この点について中田氏は「これ(63ミリ)以上細くなると、画面が小さくなってしまい、ブラウザなどで細かい字を読むのも難しくなります。カメラで撮影した写真をきれいに見てもらうためにも、高精細な液晶が欲しい。ある程度の大きさと視認性を実現するにはこれくらいの幅は必要と考え、バランスを取りました」と説明する。

 ボディサイズの苦労も多かった。「赤外線通信、960万画素CCDカメラ、ワンセグ、おサイフケータイなど現行ケータイの機能を入れることは最初から決まっていましたが、すべてを盛り込むと、当初はサイズ的に入り切りませんでした。技術からは『そんなことできるわけない』と言われたこともあり、毎日ケンカに近いやり取りをしていました」と中田氏は苦労を振り返る。

photophoto 手に収まりやすいボディ幅を目指した(写真=左)。メモリ液晶に4つのセンサーキーを搭載している(写真=右)
photo オレンジのフレームがアクセントになっている

 スポーティな雰囲気を演出するために、周囲のフレームを目立たせたが、このフレームの厚さにも頭を悩ませた。「フレームに面積を取りすぎてカバー側面が薄くなると、爪を入れてカバーを外しにくくなります。サイドキーもある程度の大きさが必要です」と、ほかの要素との兼ね合いを考えながら、フレームを含む厚さ、約12.6ミリが決定した。

 さらに「オレンジはauのスマートフォンだと主張したい」(中田氏)との考えから、(本体カラーの)オレンジのカメラ周りはオレンジのラインで囲った。「IS01は特殊な端末でしたが、IS03ではauの特色と登場感を打ち出したかったので、auのテーマカラーでもあるオレンジを採用しました」と中田氏はカラーのこだわりを話す。ホワイトは女性が爽やかに使えるよう、カメラ周りにブルーのラインを採用。ブラックにはマットな塗装を施し、落ち着いたカラーに仕上げた。ホワイトとオレンジには裏面にパールの粒子を入れているのも特徴の1つだ。

photophotophoto 本体色によってカメラ周りの色も異なる。左からオレンジ、ホワイト、ブラック

小型化にも貢献したコンビネーション液晶

 同時期に発売された他キャリア向けのシャープ製端末「LYNX 3D SH-03C」と「GALAPAGOS 003SH」は、ワイドVGA(480×800ピクセル)液晶を備えるが、IS03はより高解像度のダブルVGA(640×960ピクセル)液晶を搭載する。さらに、キーのノイズを減らすよう、表面には物理キーではなく、メモリ液晶の中にセンサーキーを装備した。ダブルVGA液晶の中にセンサーキーを置くことも検討したそうだが、解像度が犠牲になってしまうため、メモリ液晶を採用した。

 時刻やバッテリー残量などの情報を常時表示できるメモリ液晶は、サイズの小型化にも貢献する。「液晶パネルを2枚載せると筐体が大きくなってしまいます。全体のサイズを縮小しつつ、コンビネーション液晶として、1枚のガラスの中にモバイルASV液晶とメモリ液晶を搭載できました。メモリ液晶はコントラストがはっきりしているので、暗いところでも文字は読みやすいです。真っ暗闇ではさすがに難しいですが、外を歩けるくらいの明るさなら文字は読めます」(中田氏)

 メールの本文やEZニュースEXのテロップなどもメモリ液晶に表示できたらさらに便利に使えそうだが、「メールの本文を見せるとなると、CPUを動かさないといけない。であれば、メインディスプレイで見た方が早いと考えました」と中田氏は説明する。

photophoto メインディスプレイ消灯時には、メモリ液晶にバッテリー残量や時刻、(歩数計の)歩数と消費カロリーが表示される

 コンビネーション液晶はIS03ならではの魅力だが、一方でSH-03Cと003SHが訴求する3D液晶は搭載していない。シャープの3D液晶には、左右の目に異なる映像を見せるための「視差バリア」という層を設けているが、そのために厚さが増してしまう。中田氏が「少しでも多くの人に安心して使ってもらえるよう、スマートフォンの完成形を目指しました」と話すように、今回はスマートフォンとしての使いやすさを第一に考えた。

IS03が「AQUOS SHOT」でない理由

photo 押しやすいシャッターキーを右側面に装備

 カメラは、スマートフォンの中では比較的スペックの高い960万画素CCDを搭載し、モジュールは8Mクラスと同サイズを実現している。「最高のスマートフォンを提供する上で、CCDカメラは落とせません」と中田氏もこだわりを見せる。ケータイでは12Mや14Mなど1000万画素オーバーのカメラも珍しくないが、12Mサイズだとボディの一部が膨らんでしまうため、搭載は見送った。

 押しやすい半月型のシャッターキーを側面に搭載したのも、こだわったポイントだ。このシャッターキーではカメラの起動、撮影、そして半押しでピント合わせもできる。IS03の開発当初はシャッターキーは載せる予定はなく、担当者の中でも意見が分かれていたという。「iPhoneにもシャッターキーはないという意見もあれば、横で撮るのにシャッターキーがないのはおかいしという意見も挙がりました」と中田氏は話す。最終的には利便性を考え、押しやすい形状のシャッターキーを採用した。

 カメラのスペックや操作性を考えると、IS03にはシャープのケータイカメラブランド「AQUOS SHOT」を冠していてもおかしくなさそうだが、高橋氏は「AQUOS SHOTの名前は、その時点での最高峰のカメラを備えたモデルに冠しているので、今付けるなら10M以上は欲しいです」と説明する。スマートフォンだからAQUOS SHOTは付けないというわけではないようだ。

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