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» 2012年06月04日 09時30分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:ゲーム、電子書籍からスポーツまで――アプリで広がるiOSの世界 (1/2)

Appleが、自社で開発する製品と並んで大切にしているのが「エコシステム」と呼ばれる「アプリとアクセサリの世界」。パートナー企業がビジネスをしやすい環境を整えることで、製品の魅力をさらに高めるアプリやアクセサリが登場するという好循環を生んでいる。

[神尾寿,ITmedia]

 周知のことであるが、iPhone/iPadの魅力は優れたデザインを持つハードウェアの部分“だけ”ではない。iOSという優れたOSプラットフォームに集う革新的かつ多様なアプリやアクセサリの数々。これが「エコシステム(経済的な生態系)」として折り重ねられ、iPhone/iPadの大きな魅力となっている。Androidスマートフォンやタブレットとの違いは、まさにそこにある。

 Appleはこの「アプリとアクセサリの世界」をとても大切にしていて、園芸師が庭の草木を慈しむようにいつも腐心をしている。iOS向けにアプリやアクセサリを作りやすい環境を整えて、iOS上でのビジネスがしやすいようにパートナー企業のケアをしているのだ。そして時として、iOSに魅力的なアプリ/アクセサリの花が咲くと、その魅力を世界に伝えて回るエバンジェリストにもなる。筆者が会ったiOS製品担当者が、まさにそのメンバーだ。

 そこで今回は、AppleのiOS製品担当者からの最新アプリやサービスの紹介をもとに、広がるiOSエコシステムの世界と、そこにある強さについて見ていきたい。

ユーザーと開発者の両方に魅力的なiOSプラットフォーム

 魅力的なアプリは、iPhone/iPad向けばかり。そう感じたことはないだろうか。最近ではドコモやauらキャリアの後押しもあり、Androidスマートフォンやタブレット向けのアプリも増えてきているが、革新的なアプリや魅力的なアプリは「まずはiOS(iPhone/iPad向け)から」となることが多い。

 なぜ、このような事態が起こるのか。その理由は、今回iOS担当者が明かしたiOSプラットフォームの数字の数々が物語っている。

 まず、iOS搭載端末の出荷台数は3億6500万台に達したという。この数だけ見てもすごいが、ポイントは「iOSプラットフォームには単一性があること。それに対してAndroidは分断している」(iOS製品担当者)ことだろう。

 Appleでは以前からiOSプラットフォームの互換性維持に腐心しており、少なくとも2世代は主要なハードウェア仕様を変えないという方針を貫いてきた。またラインアップも極限まで絞り込み、“アプリ制作の負担を極限まで減らす”努力をしてきたのだ。他方でAndroidは、メーカー数が多いだけでなく、ハードウェア仕様もバラバラ。同一メーカーでも、モデルや世代が違うとハードウェア仕様が変わり、「その度にアプリを調整したり、作り直さなければならない」(アプリ開発者)という問題があった。OSプラットフォームを維持するGoogleも調整役としての役割を果たしておらず、ハードウェア仕様の分断問題は解消するどころか深刻さを増している。Androidスマートフォン/タブレットの世界はプラットフォームの整備が十全ではなく、アプリ開発に余計な手間とコストがかかってしまうのだ。そこがAppleが苦心して単一性を維持し、3億6500万台の規模を“1つのビジネスの場”として整備するiOSとの違いになっている。

 この「アプリが作りやすい環境」が追い風になり、iOSプラットフォームには良質なアプリが数多くそろっている。その数は合計で約60万本で、iPad向けに最適化されたアプリはそのうちおよそ20万本に達しているという。さらにアプリの販売も好調であり、実際にユーザーがダウンロードした数は累計250億本に上る。また今回のインタビューでは明確な答えはなかったが、筆者が複数のアプリ開発者に聞くところによると、「有料アプリの購入者は明らかにiOS向けの方が(Android向けよりも)多い」(アプリ開発者)という。

 このほか、Appleはアプリ開発者の支援も重視している。

 「開発ツールがシンプルで使いやすいことにもこだわっています。これはアプリ開発者のみなさまに、(デザインやアプリの提供機能など)より本質的な部分でのクリエイティビティに注力していただくためです。またハードウェアの仕様が乱立していないので、アプリの品質維持でも余計なコストがかかりません」(iOS製品担当者)

 このようにAppleはアプリ開発者の負担軽減を最優先で考えており、それが“革新的で魅力あるアプリは、まずはiOSに集まる”という構図につながっているのだ。そして、良質なアプリが多数集まれば、「アプリにきちんとお金を払う」良質なユーザーもまたiPhone/iPad上で育つ。さらに付け加えると、Appleのアプリストアである「App Store」では、Androidのアプリストア「Google Play」のように“公式ストアでマルウェアが流通する”といった不祥事が起こりにくい。これらの要因によって、iOSプラットフォームは好循環をしているのだ。

専用ゲーム機市場に肉薄するiOSプラットフォーム

 ここからはiOS製品担当者が紹介した数々のアプリの中から、筆者が特に注目と感じたものを紹介していきたい。

 まずはゲームだ。iPhone/iPadは昨今、ゲーム産業からは“専用ゲーム機ビジネスを脅かす存在”として見られているが、いくつか紹介されたゲームアプリを見るに、それが誇張ではないと唸らされた。

 その筆頭とも言えるのが、「Sky Gamblers: Air Supremacy」である。これはすでにiOS向けに提供済みのフライトシューティングゲームであり、Retinaディスプレイにも対応した美しい空中戦シーンが特長である。iPhone/iPadはもともと高いグラフィック性能を持っているが、Sky Gamblersを試すと、その実力が専用機のポータブルゲーム機はおろか、据え置き型のゲーム機にも匹敵することが分かるだろう。

 しかし、今回のSky Gamblersで注目なのは、そこではない。実は今夏にリリースされる新バージョンのSky Gamblersでは、iOSのAirPlay機能を用いて、大画面テレビと手元のiPhone/iPadで「2画面プレイ」を実現。さらに新設されるParty Playモードを使うと、複数のiOS端末でマルチプレーヤープレイができるのだ。しかも、この際にAirPlayで接続された大画面テレビ側は、参加プレーヤー数に応じて画面分割される。これだけ複雑な機器間連携をさらりとこなしてしまうのは「iOS側でマルチプレーヤーモードや大画面テレビ出力の基本機能が用意されるため」(iOS製品担当者)である。iPhone/iPadは“単体のゲーム端末”として見ても高い能力を持つが、充実した機器間連携によって専用ゲーム機にない潜在力を持つ。それがSky Gamblersから垣間見られた。

PhotoPhoto Sky Gamblers: Air Supremacy。今夏のバージョンアップでは、AirPlay対応とマルチプレーヤーモードに対応する。美しいグラフィックによる空中戦が魅力のゲームだ

 iOSが魅力的なゲームプラットフォームとして育ちつつあることのもう1つの証左が、「Infinity Blade Dungeon」である。こちらはInfinity Bladeというブランドで世界的な大ヒットとなったシリーズの第3作である。前作までは主人公が敵と1対1で対峙するものだったが、3作目となるInfinity Blade Dungeonではダンジョンの中を自由自在に移動しながら敵と戦うスタイルになっている。

 Infinity Blade Dungeonはそのグラフィックスの美しさ、ゲームとしてのおもしろさはさることながら、“iOS向けゲーム”として第3作まで作られたことが注目だろう。つまり、世界中でそれだけ多くのファンを獲得し、持続的なビジネスになっているということだ。ゲームプラットフォームの成熟度は、そこでどれだけ「シリーズ物の大作」が作られるかにかかっているが、その点でもiOSは十分に魅力的なプラットフォームになっていることが分かる。なお、Infinity Blade Dungeonは夏の終わり頃に、日本を含む全世界でリリースされる予定だという。

PhotoPhoto 「Infinity Blade Dungeon」は人気シリーズの3作目。iOS向けとしてシリーズタイトルも育ってきたところに、ゲームプラットフォームとしての成長がうかがえる

 他方で、スマートフォンの普及で急拡大するカジュアルゲーム分野でも、iOSの存在感は強い。ここでは「LostWinds2:Winter of the Melodias」というゲームが紹介された。こちらは横スクロール式のアクションゲーム。いわゆるカジュアルゲームではあるが、背景のグラフィックスなどはかなり描き込まれており、クオリティは高い。子ども向けだけでなく、大人がちょっとした隙間時間に遊んでも楽しめそうだ。

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